- 双極症の診断を受けており、もっと詳しく疾患について知りたい
- 自分は双極症なのではないかと疑っている
- 身内や知り合いに双極症の方がいて、知識を深めたい
上記のようなお悩みを持つ方に読んでいただきたい記事です。
精神疾患の一つである双極症(双極性障害)。もっと理解を深めたいと思っても、専門的な説明が多く全体像をつかむことに苦労されている方も多いかもしれないと感じました。
そこで、本記事では臨床心理士の資格を持った筆者が双極症の概要・原因・治療について、一般読者にとってのわかりやすさを重視してまとめてみたので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
※一般的には「双極性障害」や「躁うつ病」と呼ばれることも多いですが、最新の国際マニュアルに記載されている「双極症」という言葉を本記事では使用しています。WHOによる最新の国際疾病分類であるICD-11では、「障害」という言葉が誤解を招く可能性があるとの考えから、新たに「双極症」という日本語訳が使われる予定です。
※この記事はあくまで理解を助けるために執筆したものです。実際の診断や治療は医師によってのみ行われるべきであり、医療機関の受診が前提となります。
出典:MSDマニュアル
双極症とは

双極症は、異常なほどに快活な気分と、とても辛い憂うつな気分を繰り返す精神疾患です。
10代〜30代で発症することが多いのも特徴と言われています。
この疾患について理解するためには、「躁状態」「うつ状態」「軽躁状態」という言葉について正しく把握することが重要です。
「DSM-5-TR」という精神疾患のマニュアルの内容をもとに、各状態についてわかりやすく解説していきますね。
躁(そう)状態
躁(そう)状態の特徴は、「高揚した気分」「開放的な気分」「易怒的な気分」などが1週間以上持続した状態を示します。
また、以下のような状態になっていることが多いと言われています。
- 過剰なほどに自信に満ち溢れているように見える
- ほとんど睡眠をとっていなくても元気にしている
- 普段よりも多弁になっている
- 次から次へと新しいアイデアが浮かび、止まらなくなっている
- 思考の回転速度が自分でも制御できないほどに速まっている
- 周囲の音や目に入ったものが気になり1つのことに集中できない
- 自分で決めた目標を達成するために、異常なほど活動的になる
- 精神的な高ぶりが原因で、大声を出したり暴れたりする
- ギャンブルや過度なショッピングなど、リスクある行動に夢中になる
- 普段よりもずっと派手な服装を好むようになる
一般的な「良い気分」との違いについて表にしてみました。
| 一般的な「良い気分」 | 躁状態 | |
| 自己コントロールの程度 | コントロールできる | コントロールできない |
| 周囲の反応 | 微笑ましいと感じる | 違和感、心配になる |
例えば、一般的な「良い気分」のときには「今日は気分が良いし贅沢しちゃおうかな」と思っても、「いや、待てよ。来週は出費が激しいんだった・・」と一歩立ち止まる冷静な判断ができます。
しかし、躁状態の場合は冷静な判断が難しく、周囲から見て「異常に頑張りすぎていないかな・・?」「なんかおかしいぞ・・」と心配に映ってしまうのです。
抑うつ状態
「うつ病」のときと同様、以下のような状態が一定期間続きます。
- 1日中、暗く憂うつな気分になる
- 1日中、全てまたはほぼ全ての活動に対して興味や喜びを感じなくなる
- 自分の体重の5%を超える体重の増加や減少、異常な食欲の増加や減少
- 不眠や過眠
- 精神的な高ぶりが原因で、大声を出したり暴れたりする。思考力や意欲の低下により動けなくなる
- 疲労感が強くなり、意欲がなくなる
- 自分には価値がないと思ったり、過剰で的を得ていない罪悪感を抱いたりする
- 思考力や集中力が減り、決断ができなくなる
- 自殺企図や具体的な計画
躁状態、うつ状態ともに数週間から3〜6ヶ月間続くと言われていますが、一般的にうつ状態のほうが長期化することが多いと考えられています。
軽躁(けいそう)状態
軽躁状態は、躁状態ほど極端な気分の高揚や行動を示すわけではないものの、平常時とは明らかに異なる気分や行動が現れる状態です。
また、さきほど躁状態の項目で挙げた異変が3つ以上認められるとも言われています。
- 気分が明るくなる
- 気力が顕著に増大する
- 睡眠欲求が減少する
- 精神運動活動が加速する
上記のような状態です。
また、人によっては創造性が増したり自信がみなぎってきたり普段以上に社交的になったりすることもあります。
一方、注意が散漫になる、怒りやすくなるといった形で軽躁が現れることもあります。
双極症の特徴

双極症の特徴を以下に記載しました。
- 躁状態や軽躁状態、うつ状態などの症状がある時期とない時期が交互に訪れる
- 各症状は3〜6ヶ月間ほど続く
- 躁状態や軽躁状態からうつ状態に切り替わるまでの期間は人によってさまざま
- 各症状が生涯に数回ほどの方もいれば、年4回以上の高頻度で見られる方もいる(急速交代型)
- 人によって症状の出方は異なるが、個人の中ではある程度の「パターン」がある
- 自殺を試みたり、実際に自殺をするリスクが高い
躁状態や軽装状態、うつ状態が見られる特徴は共通していますが、「どのように症状が出るか」には個人差があることがわかりますね。
また、双極症を発症している場合、そうでない場合と比べて約15倍自殺のリスクが高い精神疾患であるとされています。
医療機関の継続的な受診はもちろん、疾患への理解、そしてセルフケアと周囲のサポートが非常に重要であることがわかりますね。
双極症Ⅰ型とⅡ型の違い

双極症には、「双極症Ⅰ型」「双極症Ⅱ型」の2種類があることをご存知でしょうか?
この2つの違いについて、詳しく解説していきます。
双極症Ⅰ型
躁状態とうつ状態が見られる場合、双極症Ⅰ型と診断されます。
また、躁状態のみの場合も双極症Ⅰ型に分類されます。
- 躁状態+うつ状態=双極症Ⅰ型
- 躁状態のみ=双極症Ⅰ型
躁状態は1週間以上続き、生活を脅かすような行き過ぎた行動をとってしまうこともあるため、ときに入院が必要となることも。うつ状態のときには気分が塞ぎ込み、うつ病と同様の苦しみを伴う状態となります。
双極症Ⅱ型
軽躁状態とうつ状態が見られる場合、双極症Ⅱ型と診断されます。
- 軽躁状態+うつ状態=双極症Ⅱ型
Ⅰ型との大きな違いは、「躁状態」ほど目立った行動は起こさないものの、平常時と比べると気分が高揚し行動にも異変が見られる「軽躁状態」が現れることです。
※うつ状態が長く重いため双極性障害と診断されにくい傾向にあります(うつ病と診断されることも多い)。
双極症の原因

結論、双極症の原因は明確には解明されていません。
しかし、現時点で有力視されている原因が「遺伝」「神経伝達物質の異常」「ストレス」の3つです。
それぞれについて、詳しく解説していきますね。
遺伝
親族に双極症をお持ちの方がいる場合、通常の5〜10倍の確率で同じく双極性にかかる可能性があると言われています。
また、一卵性双生児の場合はどちらか一方が双極症にかかった場合、もう一人も双極症にかかる確率が約80%であると考えられています。
上記から、双極症は遺伝的な要因がとても大きい疾患であるとされているのです。
神経伝達物質の異常
双極症は、精神疾患の中でも「脳の機能異常」としての側面が強い疾患です。
- ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の調節異常
- 視床室傍核神経細胞の減少
- 双極症の遺伝学的リスクと関連する遺伝子の出現
現時点では、上記のような機能障害が脳内で起きていると考えられています。
つまり、脳内神経のバランスが崩れやすい状態になっているということですね。
ストレス
人間関係などのストレスが、双極症発症の「引き金」になることがあると言われています。
注意すべきなのは、ストレスのみで双極症が発症するわけではないということですね。
- 遺伝的・脳科学的な要因×ストレス→発症リスク高
上記のようなイメージです。
遺伝的、脳科学的な要因とストレスが合わさることで、より発症のリスクが高まるわけですね。
また、不規則な生活習慣や睡眠不足も発症の引き金になることがあると言われています。
双極症の治療

結論、双極症の治療には薬物療法が必要不可欠です。
双極症は先天的な要素が強いことからカウンセリング単体で対処できる疾患ではなく、とにかく受診が必要ということですね。
ここでは、必ず必要である薬物療法と、その他の補助的な対処法について解説します。
薬物療法
発症してまもなくの急性期や寛解を目指す継続期、再発を防ぐ予防期など、段階や症状を見ながら医師が専門的な知見をもとに投薬を判断します。
必ず医師(精神科医)による診察・投薬が必要です。
以下には、双極症に用いられる代表的な薬を記載しました。
- 気分安定薬
リチウム(リーマス)、バルプロ酸、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)などの薬があります。
- 非定型抗精神病薬
オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル)、アリピプラゾール(エビリファイ)、リスペリドン(リスパダール)、ルラシドン(ラツーダ)などの薬があります。
医師は現在の症状や体質、血中濃度などを総合的に考慮して処方しているため、定期的な通院により症状について医師に現状を説明すること、指示された服用回数や量をきちんと守ることが何より大切です。
双極症への理解を深める
自分自身や周囲のご家族などができることとして、双極症への理解を深めることがあります。
また、「心理教育」としてそのような講座を行なっている医療機関もあるようです。
双極症の特徴について理解を深めることで、より早く症状の変化に気づき、早期の対処ができるようになるわけですね。
- ご自身や家族が早く変化に気づく→すぐに受診する
上記の流れを維持することがとても大切です。
また、躁やうつが強まっているときには症状として行動面のリスクが高くなるため、通院にご家族やパートナーが付き添う(送り迎えだけでもOK)と安心です。
日記をつける
双極症を患っている方自身ができることとして、「日記をつけること」をおすすめします。
自分専用のノートやスマホのメモなどに、以下のような情報を毎日書き込むと良いでしょう。
- 今日の気分(%で記載するのがおすすめです)
→例えばうつのときには%が下がりますし、躁のときには上がるでしょう。これにより、自分の気分変動を客観的に眺めることができるようになります。
- 睡眠時間
→睡眠不足は症状悪化の引き金になります。記録しておくことで、危険サインを見極めることができますね。また、躁のときにはほとんど寝ていなくても元気であることもあると言われています。「元気だけど、睡眠時間が少ないな・・躁の波がきているかも」と冷静に自分を見つめられますね。
- 活動内容や活動量
→活動内容を記録しておくことで、うつのときの行動特徴や躁のときの行動特徴を把握することができます。「気分が落ち込んでずっと布団から出られないからうつの波かも」「散財傾向が出てきているから躁(または軽躁)かも」と客観的に把握できますね。
心理学では、自分の症状や状態について客観的に見つめることを「セルフモニタリング」と呼びます。このセルフモニタリングの力を高めていくことで、早期に症状の悪化に気づき、医師に相談することができるようになるのです。
おすすめは、アプリで記録すること。
紙に毎日書くのは大変ですからね(もちろん、自分専用の手帳などを作るほうが合っていると感じる方はそれでOKです!)。
おすすめのアプリを以下に記載します。
→双極症に特化したアプリ。気分などを毎日記録し、視覚化しながらセルフモニタリングの力を高めていけます。
→心の健康全般に対応している、メンタルケアアプリの決定版。あらゆる精神疾患への効果が認められている認知行動療法を基に作られており、睡眠や気分、思考を記録できるだけでなく、AIによる分析・サポート機能が搭載されています。
※どちらも試してみて、合う合わないを確かめるのも良いかもですね。
ぜひ、記録することでセルフケアの力を養ってみてください。医師との情報共有もよりスムーズになるかと思います。
まとめ:双極症は定期的な通院と周囲のサポート、セルフモニタリングが大切

記事を読んでいただきありがとうございました。
うつ状態と躁状態を繰り返す双極症は、付き合っていくことが非常に難しい精神疾患とされています。
だからこそ、定期的な通院や疾患に関する理解がとても大切です。
この記事を読み、ご本人や周囲の方々が双極症と上手に付き合っていく一助となれば嬉しいです。
