こんにちは!臨床心理士の西井です。僕は、心理士として日々働く中、「人間関係についての悩み」というのは、日常生活の中で本当に大きなウェイトを占めていることを実感しています。また、あらゆる心の問題や精神疾患と、人間関係の悩みは、切っても切り離せない関係にあります。アドラー心理学(個人心理学)を打ち立てたアルフレッド・アドラーは、「全ての悩みは人間関係の悩みである」と断言しているくらいです。ということで、今回の記事では、よりよいコミュニケーションについて、心理学の理論や考えをもとに解説していきたいと思います!ストレスというのは、対処法を知るだけでも安心感を抱くことができ、自然に減っていくものです。この記事を読んで、少しでもコミュニケーションへの不安を解消してもらえたら嬉しいです。
前提:コミュニケーションは相対的なものである

まず、「コミュニケーションは相対的なものである」ということをお伝えしたいと思います。これはどういうことかというと、世の中に「絶対的に正しいコミュニケーション」というものが存在するわけではなく、「誰との関係なのか」、「どんな状況なのか」によって、「正しいコミュニケーション」は変わる、ということです。
例えば、僕たちは幼稚園の頃から、「嘘をついてはいけない」というコミュニケーションのルールを大人から教えられてきましたよね。しかし、相手を傷つけない為につく嘘は、本当にダメでしょうか? 状況によって、その成否は変わるのです。
では、コミュニケーションにおいて大切なことは何かというと、「相手と自分を尊重する」ということです。今回は、相手と自分を尊重するために役に立つであろう心理学の理論・考え方を紹介していきたいと思います。
1. 自己開示

自己開示とは、自分自身のことを、相手にオープンにさらけ出すことを言います。
「誰も自分を信頼してくれない」
「人は自分のことを分かってくれていない」
そんなふうに感じてしまうことが、僕も何回もありました。しかし、人間関係は、互いにレンガを積み上げていき、共同作業で1つの大きな家を建てることと似ているのです。まずは自分から、自分の心のレンガを差し出すことにより、相手もレンガを置いてくれるようになります。
犬や猫などの動物は、人間が怖がっているのを察知すると、「敵」だとみなして威嚇するようになるという話を聞いたことがあります。これは、人間関係でも同様に言えることなんですよね。
まずは、自分から相手に心を開き、自分のことを話してみましょう。心理学には、「返報性の原理」という法則があります。これは、相手からされたことを、「自分もお返ししたくなる」という法則です。自分から、相手を信頼してみましょう。すると、相手も自分を信頼してくれます。言葉の内容も大事ですが、「自分をオープンにする」という「心の姿勢」が大切なのです。
「You are welcome 」というのは「どういたしまして」という意味ですが、もっと直訳して、「あなたは(私にとって)ウェルカムですよ」という意味合いに変換してみましょう。
「You are welcome」という言葉を頭の中に置きながら、相手と接してみることをおすすめします。
1-1. 自己開示にも段階はある

先ほど、自分の心を開くことによって、相手も心を開いてくれることをお伝えしました。しかし、いきなり初対面の人に、
「私の人生について聞いてくれませんか?」
なんて話しかけたら、確実にびっくりされますよね!?「怪しい」ですよね?
レンガの家を建てる時も、まずは作業の見通しを立て、レンガを置く場所を決めて、土台を作って・・と言ったように、段階的に作業を進めていくはずです。人間関係においても同じであり、まずは挨拶程度の会話から始め、徐々に自分自身の内面などについて開示していくようにしましょう。
ワーク 〜自分でやってみよう〜
「ホモフィリーの法則」というのをご存知でしょうか?これは、自分と共通点のある相手に好意を持つ、という法則のことです。「類は友を呼ぶ」ということですね。ただし、どちらかが自己開示をしなければ、共通点を見つけることはできません。
ここでは、誰かとペアになっていただき、あるワークを行っていただきたいと思います。
まず、一方は、自分が好きなことについて話をしてみてください。
そして聞いている側は、相手の話を聞いて、自分と共通しているところを探し、それを相手に伝えてみてください。「趣味が一緒で嬉しいです!」など、感想もセットで伝えると尚Goodですね!
相手の話の内容を聞いて、共通点がないと感じても、なんとか共通点を絞り出してみましょう。例えば、
「車が好きです」
という趣味を聞き、自分は別に車が好きじゃなかったとしても、
「どこかに出かけるのって、心がスッキリしますよね~!」と切り出すことができます。(「車」は共通していなくても、出かけるのが好きなことは共通していますね。)更に、「私は車は乗らないのですが、車を運転する時って、やっぱり楽しいものですか?」と質問し、更に会話を発展させることもできますね。
共通点を、「見つける」というよりは、「作り出す」イメージが近いかもしれません。
このワークを行うことにより、よりコミュニケーションが楽しくなり、相手との信頼関係も築きやすくなるかもしれませんよ♪
2. 相手に不満がある時のコミュニケーション

ここからは、相手に不満がある時のコミュニケーションについて解説していきます。相手に何かしらの不満がある時、あなたはどのように対応していますか?「言葉ではっきり伝える」という方もいれば、「黙ってしまう」という方もいるでしょう。まずは、対処法を話す前段階として、「2つの攻撃性」についてお話ししたいと思います。
3-1. 積極的攻撃性

積極的攻撃性とは、相手を怒鳴ったり、罵倒したりするといった方法で、自分の不満を相手に伝えることです。人間なので、時に「積極的攻撃性」を出してしまうこともあるとは思いますが、基本的には、そこから相手と建設的に信頼関係を構築することは難しいと言われています。相手も、「売り言葉に買い言葉」と言った形で怒ってしまうかもしれませんし、逆に萎縮し、心の距離が更に離れてしまうかもしれません。
3-2. 消極的攻撃性

こちらは、黙りこくってしまったり、何も言わずにその場を離れてしまったり、直接的に自分の感情を表明するわけではないものの、態度で自分の不満を間接的に伝えるものです。心の部屋の中に閉じこもり、そこから相手への不満をぶつぶつと呟いているイメージですね。これもまた、建設的なコミュニケーションにはつながりません。「察してほしい」という思いもあるのかもしれませんが、言葉にしないと分からないこともたくさんあるのです。相手は、不満を態度に出しながらも、表明することはないあなたに苛立ちを覚えているかもしれません。
3-3. アサーティブコミュニケーション

「積極的攻撃性」や、「消極的攻撃性」は、ついやってしまうものなんですよね。これをする人は性格が良くない、ということではなく、「一般的に、誰もがよくやってしまうコミュニケーションの落とし穴」と考えていただければと思います。「花粉症の時に、目が痒くても掻かないほうがいい」と知っていても、つい掻いてしまいますよね・・これと一緒です。
そこで、「花粉症の治療薬」のような役目を果たしてくれるのが「アサーティブ・コミュニケーション」です。これは、「相手も自分も大事にしたコミュニケーション」のことで、アサーティブコミュニケーションを学ぶことで、「相手のことを尊重しながら、自分の思いも伝える」ということができるようになります。
3-4. アサーティブコミュニケーションの4ステップ

「相手を尊重しながら、自分の思いも伝える」それができたら万々歳ですが、それが難しいんですよね・・。
でも、大丈夫です!今からご紹介する具体的なステップを実践すれば、きっと「アサーティブな自分」になれるはずです!
Step1. 相手の言葉の中に真実を見つけ、そのポイントに同意する

まず、相手に「同意」を示します。これをしないと、「議論」が白熱するばかりで、お互いの気持ちを受け入れるというゴールから別のルートに遠ざかってしまいます。
例えば、妻が夫に、
「あなたはいつも家事をやってくれないじゃない!」
と怒りを述べたとしましょう。
しかし、夫は、いつもではないものの、「休日はやってるんだけどな~」と思ったとしましょう。
ここで、「休日はやってるだろ!」と言い返してしまうと、妻は更にヒートアップし、「議論」が白熱するコースへと突入していきます。
大事なのは、「夫婦の家事のあり方について」の結論を出すことではないのです。お互いの気持ちを通わせることですよね。
そこで夫は、「自分の主張」を言い返したい気持ちをグッと我慢し、妻の言葉の中から真実を見つけ、それを伝えます。
ワーク 〜やってみよう〜
さぁ、あなたが夫だったら、Step1. の技法を使って、何と妻に伝えますか?ちょっと考えて、書いてみましょう!
「 」。
正解の例は、こんな感じです。
→「確かに、君が家事をやってくれてることのほうがずっと多いよね」
※全てに同意はしていないものの、妻のほうが家事をやってくれているという事実に同意しています。
ここを理解したら、次のステップに行きましょう!
Step2. 相手の思考と感情に共感する

先ほど、「返報性の法則」の話をしましたよね。それに従えば、自分が相手への理解を示した時、相手も自分に対して理解を示そうという気になるのです。そこでおすすめなのが、相手の「思考」と「感情」に共感すること。
「思考」・・相手が考えていること
「感情」・・相手が感じていること
思考は相手が考えていること、感情は相手が感じていることです。思考と感情は似て非なるものであり、これら2つを分けて伝えることにより、相手はより「深い理解」をしてもらっていると感じます。また、自分は、「相手がどのように考え、感じているのか」を考えるきっかけにもなります。
ワーク 〜やってみよう〜
今度は、同じくあなたが夫になったつもりで、相手の「思考」と「感情」に共感するとしたら、どんな言葉になるか考えてみましょう。
「思考」への共感・・「 」
「感情」への共感・・「 」
正解の例としては、こんな感じでしょうか。
「思考」への共感・・「君は、僕に家事の大変さを分かってもらえてないと思っているのかな?」
「感情」への共感・・「それで、イライラした気持ちになっているんだよね?」
※「疑問形」で聞くことは大切です。疑問形で聞くことにより、相手はより自分の気持ちを表明しやすくなるからです。
Step3. Iメッセージで自分の思いを伝える

ここでは、自分が思っていることや、自分が感じていることを相手に伝えます。その際、「Iメッセージ」を意識してみてください。Iメッセージとは、「私」を主語にして、自分の考えや気持ちを伝えることです。逆の言葉に「Youメッセージ」があります。Youメッセージだと「あなた」を主語にして伝えることになるため、相手は「非難されている」「決めつけられている」と感じやすくなってしまいます。
例)
Iメッセージ・・「私は、そう言われて悲しい」
Youメッセージ・・「あなたは、そんな言い方をしてひどい」
ワーク 〜やってみよう〜
あなたが夫だったら、Iメッセージを使って、どのように自分の思いや気持ちを伝えますか?書いてみましょう!
「 」
正解の例はこんな感じでしょうか?
「僕は仕事でストレスを抱えていて、強く言われると、胸が苦しくなってしまうんだ」
Step4. 相手を尊重する

最後に、相手のことを大事に思っていることをしっかりと伝えます。
「色々つらいこともあるけど、僕は君と、これからも仲良くやっていきたい。もっと分かり合いたい。だから、たまにこうして、また話してくれるかな?」
ワーク 〜やってみよう〜
ここは、相手のことを最大限尊重しながら、自分の思いを伝えるところです。ある程度自由度は高いと言えますね。今回の例で、あなたなら妻に何と伝えますか?ちょっと考えてみましょう!
「 」
4. まとめ

いかがでしたでしょうか?今回の心理学のコミュニケーション講座はここまでにしたいと思います。最後にまとめとしてお伝えしたいことは、コミュニケーションにおいて大切なのは「テクニック」ではなく「誠意」であるということです。例えば、自分がある企業の面接官だとして、
「とても緊張していて、一生懸命話している人」
「リラックスして流暢に話し、態度が悪い人」
どちらに好意を抱きますか?
僕は、前者のほうです。多くの方が、前者を選んだのではないでしょうか。つまり、コミュニケーションにおいては、誠意を込めて相手と向き合うという「姿勢」が大切ということが言えると思います。
その際、「相手への誠意」だけでなく、「自分への誠意」も大切にしてもらいたいと思います。関係性を考えて自分を押し殺すようなコミュニケーションをとるのは、自分に対して「失礼」なんです。「自分のことも大切に、相手もことも大切に」をスローガンに、これからも一緒にコミュニケーションを学んでいきましょう!
