エゴグラムは、精神科医であるエリック・バーンが創始した交流分析というパーソナリティ理論に基づいて作られた、性格診断テストです。
エゴグラムの結果の見方について詳しく知りたい!
自分のパターンを知って生活に活かしたい!
今回の記事では、上記のようなニーズを持った方に向けて、臨床心理士が信憑性のある情報をもとに分かりやすくお伝えしていきます。
この記事を読むことで、自分のエゴグラムについて理解を深め、生活に活かすことができるようになると思います。
また、当ブログでは、心理学を学んでみたい社会人の方や、未経験から心理カウンセラーを目指したい方に向けて情報を発進しています。過去の記事でも紹介しているので、ぜひご覧ください。
1. 交流分析とは?
交流分析とは、カナダ出身の精神科医であるエリック・バーンが提唱した、人のコミュニケーションや性格、心理状態に関する一連の理論体系を示します。
とくに有名な理論に「自我状態モデル」があり、人には5つの自我状態(心の状態)があると仮定しています。
2. 5つの自我状態
自我状態とは、「行動、思考、感情が関連した一連のセット」のことです。
例えば、宝くじで1万円当たった人が、「キャー!サイコー!」と叫んだとします。
この時、その人の行動・思考・感情は一貫しています。
行動: 両手を上に上げて、サイコー!と叫ぶ
思考: 「ついに当たった!好きなものを買えるぞ!」と思っている。
感情: 嬉しい。爽快感。
上記の3つは、バラバラではなく一貫して子どものような素直な表現だと思いませんか?
このように、ある時点において一貫した心の状態のことを、自我状態と呼びます。
そして、その自我状態というのは、以下にご紹介する5つに集約されると考えられているのです。
①CP(Critical Parent) 指導的な親
自分が子どもの頃、両親、または親的な立場の人の指導的な部分を見て、自分自身に取り入れた自我状態。
例) 食事の前は手を洗いなさい
他人をジロジロ見てはいけません
自慢をしてはいけません
目標を持って生活しよう
②NP(Nurturing Parent) 養育的な親
自分が子どもの頃、両親の養育的な部分を見て、自分自身に取り入れた自我状態。
例) ケガしちゃったのね。かわいそうに。
何か嫌なことがあったのかな?どうしたの?
よしよし。いいこいいこ。
③A(Adult) 合理的な成人
これは、自分が「今この瞬間」を賢く生きるために使っている合理的な自我状態。
例) 待ち合わせ時間に間に合う為には、○○線に乗り換えたほうがいい
今日の仕事の段取りはこのようにしよう。みんなが休憩を取れるようにするには・・
④FC(Free Child) 自由な子ども
自分が子どもの頃に経験していた、他者からの評価ではなく、自分がしたくてしていることをのびのびと行なっている時の自我状態。
例) 僕は砂遊びがしたいんだ。
○○くんと遊ぶのは楽しいな。
⑤AC(Adapted Child) 従順な子ども
自分が子どもの頃に経験していた、親や親的な役割の人の期待に応えようとしていた時や、言いつけを素直に守ろうとしていた時の自我状態。
例) 勉強すれば褒めてもらえる。
花瓶を割っちゃった。どうしよう。怒られる。
CPやNPのような親の自我状態、FCやACのような子どもの自我状態は、過去の自分、とくに子どもの頃に身につけた自我状態です。
対して、A(合理的な成人)だけは、今この瞬間を生きている自分の自我状態です。
つまり、CP・NP・FC・ACと言った自我状態になっている時には、過去の自分の心の状態を再現していると考えられているのです!
3. エゴグラムとは?
エゴグラムは、上記5つの自我状態のバランスを可視化するため、デュセイが考案した方法です。CP・NP・A・FC・NPそれぞれについて、各自我状態にどれだけの時間を割いているか、グラフにして相対化します。
そして、東京大学医学部心療内科が開発した東大式エゴグラム(TEG)では、53問の質問に答えることで、自分の自我状態のバランスを数値として出すことができます。今はインターネット上のサイトでも無料で診断を受けることができるので、まだ受けていない方は回答してみましょう!
4. エゴグラムの結果の見方
エゴグラムの結果を見ることで、自分の自我状態のバランスが分かります。そして、そのバランスには特定の「パターン」のようなものがあり、それを分析することで自己理解が深まります。
①「へ型」
NPを頂点とし、ACが最も低くなっているのが特徴です。NPが高いことから、人に優しくすることができ、ACが低いため必要以上に従順的になることもありません。
I am ok. You are ok, too.
他人にも自分にも優しくすることができるバランスタイプであると考えられています。
A(Adult)の自我状態も平均以上ですが、情に流されずに冷静な判断をすることが求められる状況や立場の場合は、これを更に高めることで合理的な選択がしやすくなることもあるようです。
②「N型」
NPを頂点とし、FCが最も低いのが特徴です。周囲に優しくすることができる献身的な状態なのですが、ACが高すぎると他者依存的・自己犠牲的になってしまうことがあります。
I am not ok. You are ok.
「あなたが喜んでくれるなら、私は我慢しますよ」というN型の傾向は、文化によってはそれが「美徳」とされることもあるでしょうし、他者からは頼りにされ、信頼も厚いでしょう。
ただ、自分が我慢をしすぎてしまうと、やはり辛くなってしまうこともあります。
N型の状態にある人は、自分の素直な気持ちを大切にしてFCを高めたり、論理的に考える癖をつけることでAを高めることで、全体のバランスが良くなります。
③逆「N型」
逆N型は、CPとFCが高く、NPとACが低いというのが特徴です。自分の確固とした信念を持っており、自由に発想したりアクティブに活動したりすることにも長けています。ただ、他者の意見を聞かずに独善に走ってしまったり、言葉尻が少しきつくなってしまうことなども考えられます。
I am ok. You are not ok.
逆N型の状態にある人は、NPを高めてみるのがおすすめです。すると、自然にCPとのバランスが良くなっていき、他者の意見を聞いて受け入れる、ということもしやすくなっていくかもしれません。
④「V型」
CPとACが高いのがV型の特徴です。CPが高く「こうであるべきだ」という気持ちが強い一方で、ACも高いのでそれをなかなか人に伝えることができないという矛盾を抱えています。
I’m not ok. You are not ok,too.
V型の状態にある方は、AやFCを高めて、自分の気持ちを他者に伝える練習をすることで、ストレス溜め込まないようにしていくことが重要です。
⑤「W型」
加えて、W型の場合は、冷静に、客観的に自分を分析できてしまいます。その結果、更に深く考えすぎてしまい、どんどん自分を追い込んでいってしまうことがあるのです。
I am not ok. You are not ok,too.
W型の方は、FCやNPを高め、自由に楽しむ時間や他者と触れ合う時間をとって、定期的にガス抜きをすることが大切です。
⑥「M型」
NPとFCが高く、CPとACが低いのがM型の特徴です。他者に優しく、自分の気持ちにも素直で、やりたいことを追求していく傾向にあります。他者からも好かれやすいパターンと言えるでしょう。
I am ok. You are ok,too.
Aが極端に低い場合は、段取りや準備が甘く、責任感にやや欠ける印象を持たれてしまうこともあります。Aを高めることによって、冷静に物事に対処していくことができるようになる可能性もあります。
⑦「右下がり型」
CPを頂点に、ACに向かって滑り台のように低くなっているのが右下がり型の特徴です。CPが高いので責任感があり、NPも高いので多少お節介な印象を持たれることもあるかもしれません。
I am ok. You are not ok.
右下がり型の状態にある方におすすめの方法は、ACを上げることです。そうすることによって、他者の意見を聞き、関係性の構築にもつながると思われます。
6. エネルギーの恒常仮説
最初にエゴグラムを開発したデュセイによると、自我状態のエネルギーの総和は有限なものであり、1つの自我状態が増えれば、他の自我状態はそれに応じて減らざるを得なくなるとのことです。
例えば、CPが高くて人につい厳しくあたってしまい悩んでいる人は、NPを増やすことが大切です。CPを減らそうとするのではなく、NPを増やすことによって、それに応じてCPは自然に下がっていくわけです。
そこでおすすめなのが、この1週間で、高めたい自我状態を高めるための行動を5つ挙げてみるということです。
例えば僕は、最近ACが高くなりがちで、FCが低くなっていることに気づきました。たしかに、人に合わせることが多いような気もします。そこで、FCを高めるために有効と思われるこの1週間で行える行動を5つ考えます。
・週に1日は何も予定を入れず、「好きなことをやる日」を作る。
・自分の気持ちをそのまま相手に伝えてみる
・仕事で、同僚に雑談を持ち掛ける
・好きな映画を観る
・仕事の帰りにカフェでケーキを食べる
まずは、自分が高めたいと思う自我状態を高めるための方法を、行動レベルで考えてみることがおすすめです。行動はあまり難度の高くない、すぐにできるものが良いですね!
あなたが高めたいのは、どの自我状態でしょうか?
7. 交流分析やエゴグラムを学ぶには
心理学者エリック・バーンが創始した交流分析や、デュセイが考案した自我状態の尺度であるエゴグラムは、学べば学ぶほど発見があり、実生活での人間関係にも直に影響してくる奥深い分野です。
以下には、交流分析やエゴグラムをもっと深く学んでみたい方や、交流分析やエゴグラムの知識を仕事に生かしたい方、カウンセラーを目指している方に向けておすすめの学び方を記載しました。
書籍で学ぶ
最も手っ取り早いのが、書籍で学ぶことでしょう。交流分析やエゴグラムの書籍は多数ありますが、とくにおすすめなのが実務教育出版より出版されている「TA TODAY(イアン・スチュアート/ヴァン・ジョインズ著/深沢道子監訳)」です。
創始者であるエリック・バーンの考え方を正統に継承しており「本物の交流分析」が学べる一冊と言えるでしょう。また、最新の交流分析についての知見も凝縮されているため、初学者が最初に読む本としてふさわしいと思います。
ただし、交流分析やエゴグラムを実生活や仕事の中で使いこなすには「肌で学ぶ」というプロセスが必須になります。心理学は「生きた学問」であるべきなのです。そこでおすすめなのが通信講座。以下に詳しく解説するので見ていきましょう。
TA(交流分析)カウンセラー養成講座で生きた学びを
心理系の講座で高い専門性を発揮しているヒューマンアカデミーは「TA(交流分析)カウンセラー養成講座」を開講しているのですが、以下の2つの理由により強くおすすめできます。
- 講座の内容が本格的
TA(交流分析)カウンセラー養成講座は4日間のオンライン学習で完結しますが、その割に内容がとても濃いです。まずは自己理解を深めるために実際にエゴグラム診断を行い、そのうえで対人パターンを分析する「ストローク分析」や、「怒り」の理解と扱い方、「インナーチャイルド」や「恋愛傾向の分析」などをトータルで学んでいくのが特徴でしょう。
専門的な交流分析の知識に基づきつつ、実生活での活用を意識しているので魅力的なのです。
- 肌で学べる
TA(交流分析)カウンセラー養成講座では、単に知識を吸収するのではなく、自己理解を深めたうえで、他者との交流についての理解を深めていきます。心理学を学ぶうえでは「理論と実践の往復」が重要なのですが、TA(交流分析)カウンセラー養成講座ならそれが実現できるのです。
講座はオンラインですが、ライブ形式で行われるため講師の表情や他の参加者の反応などを感じ、グループダイナミクスを活かした学びが可能でしょう。
以上の理由から、交流分析をこれから学びたいと考えている方には、ヒューマンアカデミーのTA(交流分析)カウンセラー養成講座 が個人的にはおすすめです。
オンライン説明会や講座資料は無料であるため、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
出典:TA(交流分析)カウンセラー養成講座|ヒューマンアカデミー
8. まとめ
いかがでしたでしょうか。今回の記事では、エゴグラムの結果の見方、パターンについて解説をさせていただきました。エゴグラムはとても奥が深く、コミュニケーションの取り方などにも応用して考えることが可能です。機会があれば、そのことについても触れていけると良いなと思っています。