臨床心理士の西井です!今日は、自分を好きになるにはどうしたら良いのか、心理学的に考えてみたいと思います。「あの人が嫌だ。だってあの人は・・」と、僕たちは人間関係に苦しみながら生きています。
しかし、ある事に気づいたのです。1番毎日をつまらなくしているのは、自分自身であると。
まずは、この一曲を聴いてください。
(出典:You Tube:僕は僕を好きになる/ 乃木坂46)
この曲の中で、僕が印象的だった歌詞は、
生きにくくしてる張本人は僕だ
というものです。実は、自分の「生きにくさ」を演出しているのは、他でもない自分自身だったりもします。今回は、まずは自分が自分を認めてあげて、自分自身を好きになる為の考え方を心理学的に解説してみたいと思います。
1. 自分に素直に生きる

自分を好きになるために大切なこと、それは、「自分に素直に生きる」ということではないでしょうか。なぜ、自分を好きになるためにこれが大事なのか、心理学の「自己理論」という理論をもとに、解説してみたいと思います。
1-1. 自己理論とは

自己理論は、「クライエント中心療法」を考案した心理カウンセラーである、カール・ロジャースが提唱した理論のことです。自己理論によると、人には「理想自己」と「現実自己」という2つの自己があるとされています。
理想自己
理想自己は、「こうありたい」と望む、理想的な自己像のことを言います。例えば、「人気者でありたい」「人に優しくありたい」「かっこよく/可愛くありたい」などです。
現実自己
現実自己は、現実の自己像を示します。「自分がどうありたいか」に関わらず、実際に経験している自分自身や体験のことです。
1-2. 現実自己と理想自己のギャップが不適応を引き起こす

ロジャースによれば、現実自己が、理想自己にそぐわない時に、心理的な不適応を引き起こすとのことです。また、そのギャップが大きければ大きいほど、不適応の程度も大きくなるようです。
例えば、「皆から頼られて、一目置かれるような自分」という理想的な自己像を持っていたとします。
しかし現実は、ミスの連続で、頼りなく、いつも周りの人からため息をつかれているような自分だとしましょう。
この場合、理想自己(=頼られる自分)と、現実自己(=頼りない自分)の間に大きなギャップがあり、心理的な不適応を起こしやすい状態にあると言えます。
ワーク
あなたの理想自己と現実自己はどんなものですか?教えてください。
1-3. 理想自己と現実自己の間のギャップを埋めるには

では、理想自己と現実自己の間を埋めるには、どうしたらよいのでしょうか。ロジャースは、「経験に開かれる」ことをおすすめしています。
経験に開かれる
「経験に開かれる」とはどういうことかというと、今の現実をありのままに受け入れた上で、「こうありたい」と思う自分に自分を近づけていく姿勢のことを言います。
「皆に頼られている自分」(理想自己)
「頼りない自分」(現実自己)
という2つのギャップに、「反応するように」苦しみ続けるのではなく、
「今の自分は、確かに頼りないところがある。それが今の現状なんだから仕方ないな。OK!」
と認めた上で、「じゃあ、どこを改善したら、少しでも理想的な自分に近づけるだろう?」
と、今の自分ができる範囲で、具体的に解決策を見つけ、実行していきます。このように生きている人のことを、ロジャースは「十分に機能した人間」と呼んでいます。まとめると、
①現状ををありのままに受け入れる
②現状を受け入れたうえで、理想自己に近づけるような行動をとる
ということになります。
1-4. コミュニケーションにも表れる「自己不一致」

ちなみに、理想自己と現実自己の間にギャップがあることを「自己不一致」と言います。自己不一致は、日常のささいなコミュニケーションの中にも表れます。
例えば、「自分らしくありたい」という理想自己を持った人がいたとします。
しかしこの人は、人と話をする時によく作り笑いをするのです。また、本当は全然行きたくもないのに、友達に遊びに誘われると、「いいね!行こう!」と答えてしまいます。
この場合、「自分らしくありたい」という理想と、「人に合わせてばかりいる」という現実のギャップが広がり、「自己不一致」になります。自己不一致な時は、心理的にも不安定になりやすくなります。
1-5. コミュニケーションの「自己不一致」に気づき、アクションプランを立てる

コミュニケーションにおける自己不一致を直していくには、まずは、「あ、今、自己不一致だよな」と気づいてあげることが重要です。
まずは気づくだけでもokです!すぐにその場でアクションを起こすのがハードルが高ければ、一度寝かせても問題ないのです。家にいる時などに、その時の状況を紙に書き出して整理してみましょう。どんなところが自己不一致なのかを考えたうえで、次に「どうしたら自己一致になるか」考えます。そして、その為にはどのようにコミュニケーションを取ったらいいか、アクションプランを立ててみてください。
アクションプラン
自分の行動を促す為の、具体的なプランのこと。
例えば先ほどの例にあてはめると。
<アクションプラン>
○月○日のアクション
・面白いと思った時だけ笑うようにしよう
・遊びに誘われても、行きたくない時は「家でやりたいことがあるんだ」と素直に伝えよう
といったぐらいに、プランを立案してみましょう。
気づく→実行する→振り返る
というプロセスをコツコツと実行していくことで、理想自己と現実自己のギャップは着実に埋まっていきます。最初は、「作り笑いをしない」ことはハードルが高いかもしれません。でも、ちょっとずつでいいのです!「軽く笑う程度にしよう」という目標からなら、できる気がしてきませんか?
ワーク
あなたのコミュニケーションにおける
①自己不一致な状況(エピソードをもとに)
②自己不一致な状況における「理想自己」と「現実自己」
③自己を一致させるためのアクションプラン
を教えてください。
2. 環境を変える

自分自身を好きになることが重要とはいえ、環境を変えることによって、人生が好転する可能性も、極めて高いでしょう。
僕は、高校1年生の時、友だちと「つるんでいた」事がありました。
そのグループは、自動販売機に石を投げつけて割ったり、道を歩いているおじさんを「はげ!はげ!」と罵ったりすることを「遊び」としているようなところがありました。
僕は、どうしてもその「遊び」が楽しいとは思えなかったのです。
「正しい・間違っている」という社会的な観念の前に、「好きじゃなかった」のです。
僕はそのグループを去ることを決意しました。そして、その後どのように過ごしたのかというと、公園で一人でベンチに座り、アスレチックを眺めたり、本屋に行って立ち読みをしたりして、孤独に時間を過ごしました。
そんな中、「孤独のチカラ」という齋藤孝さんの本に出会ったのです。
それまで、孤独は「寂しい」ものだと思っていたのですが、その本には、孤独は奥が深く、孤高の遊びであることが示されていました。それからは、一人の時間を楽しむようになりました。そして、一人の時間を楽しむようになった頃、「本当の友達」ができたのです。
ワーク
あなたは、一人でいる時間に、どんなことをするのが好きですか?あなたの孤独の楽しみ方をぜひ教えてください。
2-1.孤独を味方につける

「孤独を味方につける」とは、どういうことでしょうか?それは、「自分との時間を楽しむ」ということです。そして、自分との時間を楽しめるということは、自分のことを好きになっていくことなのです。
また、認知行動療法の第一人者であるアメリカの精神科医、デイビット・D・バーンズは、著書「孤独な人が認知行動療法で素敵なパートナーを見つける方法」の中で、以下のようなことを述べています。
自分を好きになる方法、そして愛する方法を学ぶことが、親密さに到達する秘訣なのです。あなたが自分を好きになってはじめて、周囲の人々にポジティブな感情が投射されるのです。周囲の人たちは、突然あなたに愛情と積極性を感じ、惹かれるようになるでしょう。
(デイビット・D・バーンズ著:孤独な人が認知行動療法で素敵なパートナーを見つける方法:星和書店 より引用)
実は、孤独の時間を恐れず、自分を好きになることは、同時に周囲の人から愛されることにもつながるようです。その理由は、「自尊感情」にあります。自分との時間(一人の時間)を大切にしていると、「自分は、かけがえのない存在なんだ」という自尊感情が芽生え、その結果、周囲の人たちもあなたのことが好きになるのです。
2-2. 一人の時間を肯定するためのワーク

ここで、一人の時間を肯定するためのワークをご紹介します。このワークを行うことにより、自分は「人と一緒にいるのも楽しいけど、自分との時間も愛せる」と思えるようになります。
ワーク
①ある1日の、活動予定を列挙する
※自分だけで行う活動と、他の人と一緒に行う活動の両方を含める。
※楽しめたり、人間的な成長を促すような活動を選ぶ。
②それぞれの活動に対して、「一緒に行う人」を記入。
※一人で行う活動の場合、「自分と」と記入。
③それぞれの活動の満足度を、%で記入。
④実際に、それぞれの活動を行ってみての満足度を%で記入。
④まで終わった人は、自分が生活の中で満足を得るために、他者の存在は「絶対的な必要条件ではない」ことに気づくでしょう。「自分との時間」を楽しむことは、「豊かな自分」を育てるのです。
3. まとめ

いかがでしたでしょうか。今回の記事では、自分のことが好きになるための考え方を、いくつか紹介させていただきました。もちろん、自分のことを好きになる方法はこの記事に書いてあることだけではないと思います。また、この記事を書いている僕自身も、書いておきながら、自分のことを「好き」と言い切ることができません。しかし、ここに書いてあることを実践する中で、自分を好きになるための「軌道」には乗れたのではないかと思っています。この記事を読んでくれたあなたと一緒に、「好きな自分」を育んで行けたら嬉しいなと思います。
