
最近、「SST」という言葉をよく耳にするようになりました。「コミュニケーションを学ぶ上で効果的な方法らしいのだが、詳しいことはよく分からない!」という方もいるのではないでしょうか。
この記事では、SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは何かについて、基本的な概要をお伝えし、更にどのように進めていくのか、どこで受けることが出来るのかなどをお伝えしていきます!この記事を読み終えると、SSTとは何かを理解し、進め方について知り、受講できる場所などを知ることが出来ます。では、さっそく解説していきます!
1. SSTとは

SSTのSは「Soicial」、もう一つのSは「Skills」、Tは「Training」を意味しています。日本語にすると、「社会的技能訓練」となります。つまり、社会的な技能=コミュニケーションスキルを見につけるための訓練、ということになります。では、「社会的技能」とは何を示すでしょうか。それは、人との関わりの中で良好な関係を保っていくためのコミュニケーションスキルを示します。
子どもと大人で、必要なコミュニケーションスキルも変わってくるでしょう。
例えば、子どもなら、
・友達と喧嘩してしまったあとに仲直りするスキル
・分からないことがある時に、大人にやり方を聞くスキル
・友達を遊びに誘うスキル
などが、必要な「社会的技能」となります。
大人なら、
・飲み会の3次会を断るスキル
・忙しい時に上司からの仕事を断るスキル
・仕事をお願いするスキル
など、仕事に関する「社会的技能」が必要になってくることが多いと思います。
こういった、「人間関係」に関するスキルは、普通は義務教育の中で科目として学ぶことはありませんよね。生きてきた中で、自然に身につけてきたものです。ですが、SSTでは、人間関係も、他の教科と同様に「訓練すること」によって改善させられると考えます。人間関係で困る場面をクローズアップして、伝え方や考え方について学び、訓練することによって、「より充実した毎日」を目指していくわけですね。
ここまでをまとめると、SSTとは、コミュニケーションを中心とした、人間関係に関するスキルを身につけるためのトレーニングの総称、ということになります。
2. SSTでは、具体的にどんなことを行うの?

SSTでは、「ロールプレイ」という「演技」が頻繁に用いられます。ロールプレイというのは、実際に人間関係で困った場面を演じてみる中で、より適切なコミュニケーションを学んでいく方法のことです。例えば大人なら、「飲み会に誘われたが、終わらせる必要のある仕事があるため断りたい時」などの具体的な場面を設定し、「自分役」と「相手役」に分かれて、やりとりを演じてみたりします。
ロールプレイを繰り返し行なっていく中で、対人場面で困った時に臨機応変に対応する力がついていきます。これは、野球選手が試合で活躍するために練習をするのと全く同じ発想です!コミュニケーションもまた、スポーツなどと同じように、練習することで向上させていくことができるんです。

また、子どものSSTでは、幼稚園生年長さんが小学校の授業に向けて、力をつけておく必要がある時などに練習として行うケースが多いです。幼稚園と小学校では大きく環境が異なるため、落ち着いて授業を受け、先生の話しを聞いたり、友達と会話をしたりする練習が必要になることがあります。とくに、自閉スペクトラム症やADHDなどの発達障害をお持ちのお子様に適用することが多いです。
子どもを対象としたSSTでは、実際の授業場面を模して、先生の話をよく聞いてから行動に移す練習や、手をあげてから発表する練習、皆の前で自己紹介を行う練習などを行うことが多いのが特徴です。また、「○○くんは、ダメだよ!!って強く言われてどんな気持ちだったと思う?今度は優しい言い方で注意してみよう!」と促し、より適切なコミュニケーションについて知ったり、相手の気持ちを推測することを学んだりすることも効果的です。
大人のSSTと子どものSSTでは多少異なってきますが、他者や自分の気持ちについて考えたり、より適切なコミュニケーションをとったりするトレーニングをするという意味では、大人も子どもも一緒と言えます。
3. どんな人がSSTを受けるの?

一口にSSTといっても、目的は人によって様々です。ですが、SSTを受ける多くの人は、コミュニケーションや人間関係に問題を抱え、そういった問題がきっかけとなってSSTの受講にいたることが多いようです。ですが、コミュニケーションの悩みが誰にでもあるように、SSTを受けることによるメリットは、誰にでもあると私は考えています。ここでは、SSTを受ける背景として代表的なものをご紹介します。
発達障害をはじめ、発達的な悩みが理由でSSTを受けるケース

発達障害への社会的な理解は、ここ数年で一気に進んでいます。発達障害の大きな特徴として、生まれつき人とコミュニケーションをとることに苦手さがあることが挙げられます。よって、幼稚園生や小学生のうちから、専用の施設でSSTを受けるお子様が増えています。発達障害を持つお子様がSSTを受けることができる施設として代表的なのが、市区町村にある「療育センター」や、民間企業が運営している「児童発達支援」「放課後等デイサービス」などが有名です。これらの施設では、10人ほどの大きな集団や、3~5人ほどの小集団でのSSTを受けることができます。(※SSTのタイプや目的、授業形式などは施設によって異なります。お住まいの地域の施設を調べてみてください)
精神科デイケア等でSSTを受けるケース

精神科や診療内科、メンタルクリニックには、うつ病や不安障害、統合失調症などの精神疾患を患ってしまった方が来ます。通常はドクターの診察を受け、薬やカウンセリングを処方するスタイルが一般的ですが、現在では多くの病院に「デイケア」というサービスがあります。デイケアとは、ある程度まとまった時間(3~6時間ほど)病院のデイケアルームに滞在し、様々な活動をする医療のスタイルです。
例えば、うつ病の症状が落ち着いてきて、日々の生活に戻るための「リハビリ」としてデイケアで1日活動することなどが一般的な利用例です。精神疾患になってしまう原因の1つとして、人間関係はかなり大きなものだと思います。再び人間関係で悩んだときに、より自分がつらくならない方向にコミュニケーションをもっていくために、SSTを導入しているデイケアは数多くあります。
デイケアの中でも、休職中の患者が復職を目指して通うデイケアのことを「リワーク」といいます。リワークの中でSSTを行う場合は、「嫌な上司との付き合い方」「忙しいときに上手に仕事を断る方法」「自分の意見を上手に伝える方法」などを、ロールプレイなどを通して学ぶことがほとんどです。プログラムの中でSSTを行うことで、復職後に人間関係でつまずき、再度休職してしまうことを予防するわけです。
ここでは、SSTの代表的な活用場所をご紹介しました。上記で紹介した2パターン以外にも、あらゆる場所でSSTが行われていますので、ぜひ調べてみてください。
4. SSTでよく使われるテーマ

ここでは、多くのSSTで使われるテーマを、少しだけ専門的な用語を交えながら解説します。これらの用語を知っておくことで、SSTへの理解がより一層深まることでしょう。また、大人と子どもで若干SSTで取り上げる内容が異なるため、それぞれ解説していきますね。
<子どもの場合>

指示理解
指示理解とは、全体の説明を聞いて、それを行動に移す力のことです。人の話に注意を向け、行動に移すことに苦手さがある子どもに対して、SSTの中で指示理解の練習を取り入れることが多いです。例えば、先生が「まず鉛筆と消しゴムをお道具箱から取ってね。その後にプリントをやって、終わったら手をあげてね」と全体に向かって説明しているのをよく聞き、そのように行動する練習をすることなどが挙げられます。
他者理解
相手の気持ちを察することに苦手さがあるお子様の場合、SSTの中で自然に生じる子ども同士のささいなトラブルにスポットライトを当て、相手の気持ちを推測する練習を行うことができます。例えば、子ども同士が玩具の取り合いになった場合、「○○くん、どうして○○ちゃんは泣いてしまったのかな?もしかしたら、遊んでいた玩具を急に取られてしまったから、悲しくなったのかもしれないよ」などと声かけ、「今度はかしてくれる?って聞いてみよう」と、より適切な行動を学んでもらいます。
以上、ここであげたのはほんの一例では、子どもを対象にしたSSTでは、上記のようなテーマを扱うことが多いと思います。
<大人の場合>

アサーショントレーニング
「アサーション」とは、相手も自分も大切にしたコミュニケーションのことです。日本語では、「爽やかな自己表現」などと訳されています。人と関係を保つうえで、相手に合わせることも時に大切ですが、自分の意見を心の中に押しこめて、ただ「イエスマン」になることは、本当の意味でよいコミュニケーションとは言えません。SSTの「アサーショントレーニング」の中では、相手の主張も受け入れ、大切にしたうえで、自分の意見もちゃんと伝える練習をしていきます。
Iメッセージ
Iメッセージ(アイメッセージ)とは、相手に自分の気持ちや要望を伝えるときに「私」を主語にして伝える方法のことです。例えば、同じ部屋でパートナーがテレビを見ているときに、テレビの音が大きすぎたとしましょう。「音が大きすぎるわよ!!」と伝えてしまうと、相手は自分が非難された気持ちになり、反論したくなります。このようなメッセージの伝え方は、「Youメッセージ」と言います。「You(あなた)は、テレビの音量を大きくしすぎ!」といったように、相手への非難に矛先が向いてしまっているため、Youメッセージは効果的なコミュニケーションとは言えません。「I(私は)、作業に集中したいから、もう少しテレビの音が小さいと嬉しいな」と伝えることで、相手は不思議とこちらの意見を叶えてあげたくなってしまいます。
非言語コミュニケーション
コミュニケーションには、言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの2種類があります。言語コミュニケーションとは、その名のとおり言葉を使ったコミュニケーションのことです。非言語コミュニケーションとは、言葉を使わずに、素振りやジェスチャーなどで相手に意志を伝えるコミュニケーションということになります。例えば、視線、会釈、咳払い、うなずきなどが挙げられるでしょうか。非言語コミュニケーションを読み取る練習をすることで、相手の今の気持ちを推測しやすくなり、より円滑なコミュニケーションに近づくことができるようになります。
5. まとめ

いかがでしたでしょうか。今回の記事では、コミュニケーション能力を高めるためのトレーニングである、SST(ソーシャルスキルトレーニング)について解説していきました。SSTを行うことにより、コミュニケーションの具体的なスキルを身に付けていくだけでなく、相手の気持ちやその他の参加者の感想を聞くことで、より幅広いものごとの「捉え方」を身に付けていくことができます。自分ではすごく気にしていたことが、他者からのアドバイスを聞いて、実はそんなに悪く映っていないことを知り、安心することなどがあります。また、自分自身をつらくしてしまっている「思考の癖」に気づくきっかけも提供してくれます。SSTは誰にでもメリットがあるトレーニングなので、気になった方はぜひ、一度受けてみてください♪ それでは、今回もご一読いただきありがとうございました。
