「うつで家から出られない」と悩むあなたへ。行動活性化療法をおすすめします。

認知行動療法

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臨床心理士の西井です!

今日も1日中家にいて何もできなかった・・毎日自己嫌悪に陥るが、どうしても外に出たり活動的になることができない・・

このようなお悩みを持つ方に向けて本記事を書きました。とくに、うつ病適応障害などの精神疾患を患ってしまったことがある場合は、外出して前向きな活動を行うことが難しくなってしまうことがあります。

そこで、今回の記事では心療内科やリワークにて集団認知行動療法を担当してきている心理士である私から、「行動活性化療法」をおすすめしたいと思います。

この記事を読むことで、専門的な知識に裏付けられた方法で、悪循環を好循環へと変えていくための「きっかけ」を得ることができます。

具体的な行動をお伝えすると共に、行動活性化療法で使われるワークシートを無料でダウンロードできるようになっているため、この記事に書いてあることを実践するだけで、解決の糸口を掴むことができると思います。

1. なぜ家から出られないのか?

まずは、うつ病や適応障害、その他の心の問題を抱えていると家から出られなくなってしまう理由からお伝えしていきます。

学習性無力感

学習性無力感とは、アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマンが発見した現象です。

人や動物は、自分の力ではどうしようも出来ないような状況を継続的に経験すると、「何をやってもどうせ意味ない」と学習してしまうのです。

例えば、職場で繰り返しパワーハラスメントを受けて休職してしまった方は、「どんなに頑張っても、何をしても、状況は改善しない」と考え、「無力感」を学習してしまうわけです。

休職をして1人家にいても無力感を抱くようになり、以下のように考えます。

散歩に行ったところで無意味だ。状況は何も改善しない。
病気になる前に好きだったことをやっても気分が改善するわけなんかない

すると、どうせやっても意味ないのだから、家にいて何もしないということを選択し続けてしまいます。ただ、「動いたほうが良い」という現実だけは追いかけてきて、更に気分は辛くなってしまうのです。

「気分」が原因で「行動」が結果になっている

認知行動療法では、「認知の歪み」が抑うつ的な気分を作り出すと考えます。認知の歪みとは、自分で自分を苦しめてしまうような、極端でネガティブな思考を示します。

認知の歪みには色々な種類があるのですが、その中に「感情的決めつけ」と呼ばれるものがあります。

これは、「こんなに不安なんだから自分には出来るわけない」「こんなに気分が落ち込んでいるのだから、この先も上手くはいかないだろう」と、その時に感じている気分がものごとを判断する基準になってしまっている状態です。

気分が落ち込んで家から出られなくなっている時、「こんなに気分が落ち込んでいるのだから、外に行っても何も良いことはない」と考えていませんか?

もちろん、精神疾患の場合は休養を取ることが第一となります。しかし、症状が回復してきてからは、行動を起こしたほうがかえって気分が改善しやすくなることがあるのです。

2. 行動活性化療法がおすすめ

症状が回復傾向にあるにも関わらずなかなか外出が出来ないと悩む方には、行動活性化療法がおすすめです。

行動活性化療法とは、「行動」を起こすことによって、気分の改善を図る心理療法です。一般的には、「気分が良いから外に出る」といったように、気分が先に来ると考えますよね。

しかし、心理学の研究の結果、実は行動を起こすことによって気分が改善することが多いことが分かっているのです。

×気分が良い→外に出る

○外に出る→気分が良くなる

日本の認知行動療法における第一人者の1人である原井宏明医師は、著書「認知行動療法実践のコツ」の中で行動活性化療法を以下のように説明しています。

「病気行動」を減らし、「健康行動」を増やす。

認知行動療法実践のコツ/原井宏明/金剛出版

病気行動」とは、家の中で横になって過ごし、過去の嫌だった出来事を繰り返し思い出したり、自分自身を責める言葉を自分に浴びせることを1日中行っているような行動です。

健康行動」とは、明確な目標を持ち、毎日少しずつ活動を増やし、他者と交流し、適度に身体を動かすような行動です。

行動活性化療法では、少しずつ「病気行動」を減らし、「健康行動」を増やし、悪循環を好循環へと変えていくことを目指します。

3. 行動活性化療法をはじめるタイミング

行動活性化療法をはじめるには、適切なタイミングがあります。ここでは、うつ病や適応障害などのストレス性の精神疾患を発症してから、健康な状態に戻るまでのプロセスを解説します。

急性期

急性期とは、気分の落ち込みや睡眠障害などの症状が最も強く出ている時期です。最も辛い時期であると言われており、ここで大切なのは医療機関の受診と休養です。

主治医の判断による適切な服薬を行いながら、とにかく心身を休めることが重要と言えます。

回復期

回復期は、症状が改善されて体力も戻ってくる時期です。ここで大切なのは、生活リズムを一定に保ちつつ、リハビリのつもりで適度に活動を取り入れていくことです。外に出てみたり、作業をしてみたり、人と話してみたりなどですね。

このタイミングで、デイケアリワーク就労移行支援事業所などに通う方もいます。

再発予防期

再発予防期では、社会生活に戻ること、つまり学校や仕事に復帰をする時期です。しかし、普段の生活に戻ってからも油断は禁物。再発予防のため無理をせず、ストレスがあれば早めに対処していくことが重要となります。

行動活性化療法をはじめるのは回復期から

お気づきの方もいるかもしれませんが、行動活性化療法を行うのが適切な時期は、「回復期」になります。十分な休養が取れていない状態で行動活性化療法を無理に行うことで症状が悪化してしまうこともあるため、医療機関に通っている方は必ず主治医に相談してから始めましょう。

4. 行動活性化療法のやり方

ここからは行動活性化療法のやり方について解説していきます。具体的にやっていただくことは、「活動記録表」をつけるということ。活動記録表とは、1日の予定と実際に行ったことを書き込む表のことなのですが、これを行うことにより、活動と気分の関係を可視化し、効率的に「健康行動」を増やしていくことができます。

また、この記事では代表的なうつ病のセルフヘルプ本として知られるデビット・バーンズ博士による書籍「嫌な気分よさようなら」で紹介されている活動記録表の書き方をベースにお伝えしていきます。

ステップ①: 活動記録表をダウンロード(または書く・自分で作る)

まずは下記リンクより無料で活動記録表をダウンロードし、印刷してください。印刷する環境がない場合は、画像を参考に手書きで書くか、エクセルやスプレッドシートなどを使って表を作成してもらえたらと思います。

活動記録表

ステップ②: 1日の行動を記録する

ここからは、ダウンロード(もしくは画像を参考に作成)していただいた活動記録表をもとに解説していきます!

まずは、表の右側「振り返り」の欄に、現状の活動記録をつけるところから始めます。まずは今の行動パターンを把握することが大切なわけですね!

活動記録は1時間ごとに全て記入するわけではなく、まずは大まかな行動を記入していくだけでOKです。

ステップ③: 次の日の活動予定を立てる

次に、1日の行動記録を参考に、寝る前に次の日の活動予定を立てましょう。ここでポイントになるのが、義務的な行動楽しさを感じる行動をバランスを考えることです。また、義務的な行動には「M(Mastery)」、楽しめそうな行動には「P(Pleasure)」と記入してください。

※食事などはMとPのどちらとも言える部分があると思いますので、その場合は「M・P」と記載していただければOKです!

ここでポイントなのが、いきなり難易度の高い行動を組み込まないということです!外へ出るにしても、公園でお弁当を食べるとか、公共料金の支払いにいくとか、ある程度すぐにできそうなことにしましょう。

そして、立てた目標を可能な限りで良いので実行してみましょう!

ステップ④: 1日の行動を再度記録する

1日の行動目標を立て、実行してみたら、寝る前に実際にやったことを「振り返り」の欄に記入していってください。実際にやったことを記入したら、その隣に義務的な活動を表す「M」や楽しい活動を表す「P」を記入していくのですが、今度はそれぞれの満足度を基準に、1から5の間で評点してみてください。

例えば、「顔を洗ってみる」という行動を行なってみてある程度気分が改善されたなら、「M-3」などと記載します。

上の画像を見ていただくと分かるように、予定として立てた行動目標をいきなり全て達成することは難しいかもしれません。しかし、「顔を洗う」「ベランダに出て深呼吸をする」といった今までにはなかった行動を取り入れることで、達成感や気分の改善を少しずつ感じることはできるのではないかと思います。

このように、義務的な行動(M)と楽しい行動(P)をバランス良く、少しずつ増やしていく中で、好循環が生まれてくるわけですね!

5. 活動記録表をつけるメリット

活動記録表の進め方については、ご理解いただけたでしょうか?ここでは、活動記録表を通して「健康行動」を増やしていくことのメリットをお伝えします。

「活動の意味」についてクヨクヨ考えなくなる

抑うつ的な気分の時には、「この活動を行ったところで意味があるのだろうか?」とクヨクヨ頭の中で考え、肝心な「行動すること」を妨げてしまいます。

しかし、活動記録表に事前に行動目標を記入しておくことで、「書いてあるからやろう!」と、迷わず行動を起こしやすくなります。

達成感を積み重ねられる

活動記録表に書いたことを日々実践していく中で、「今日もこれができたな!」と小さな達成感を蓄積していくことができます。

活動記録表をつけていなくても何かしらできていることはあるはずなのですが、それが可視化されないため、「できた」と認識できていないのです。

活動記録表をつけることで、行動できたことをきちんと「できた」と認識できるため、達成感を積み重ねやすくなります。

学習性無力感への反論になる

学習性無力感とは、「行動したところでどうせ状況は改善しない」と考え、状況を改善させるための行動を起こさなくなってしまうことでしたね。

実は、活動記録表をつけ行動を増やしていくことは、学習性無力感への反論になります。なぜなら、行動目標を立て、実行し、気分の改善を実感するプロセスは、「少しずつでも、行動を起こせば状況を改善させられる!」という認識を強め、実際に前向きな行動を増やしていくからです。「自分は状況を改善させることがらできる」という効力感を回復させることができるのです。

6. 行動活性化療法のエビデンス(効果)

最後に、行動活性化療法の効果を裏付ける研究についてご紹介します。権威ある医学誌である「The Lancet」に掲載されたDavid Richard氏を筆頭著者とする研究では、以下のような結果が確認されているのです。

<手続き>

①成人のうつ病患者440人を集める

②「行動活性化療法を行うグループ」「通常の認知行動療法を行うグループ」の2群に分ける。

③治療から1年後の両群におけるうつ病の改善度を調べる。

上記の手続きの結果、約3分の2の患者にうつ症状の軽減が見られ、両群の改善度に差は見られなかったとのことです。

つまり、行動活性化療法を行った群と、通常の認知行動療法を行った群でどちらも同じように治療効果が得られたということ。

効果は同等であるにも関わらず、行動活性化療法は実施が簡単で費用対効果も高いため、この研究を機に行動活性化療法は更に注目されるようになりました。

7. まとめ

いかがでしたでしょうか。今回の記事では、「憂鬱で家から出られない」と悩む方に向けて、行動活性化療法をご紹介しました。実際に活動記録表をダウンロードし、生活の中で取り入れていただけると幸いです。

今回ご紹介したように、心理学には自分の行動や気分をコントロールしていくための理論が詰まっています。「うつに苦しむ人の力になりたい」と思う方には心理カウンセラーの通信講座を受けてみることがおすすめします。

とくにおすすめなのは、ヒューマンアカデミーの「心理カウンセラー講座」。ヒューマンアカデミーの心理学に関する講座は、心理士の僕から見ても専門性を保持しているように感じます。

自宅で受講することができるため、活動の一環として取り入れてみるのも良いかもしれませんね♪