アートセラピーとは?やり方や概要、資格などについて詳しく解説します

心理学

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アートセラピーってどうやってやるの?

そもそもアートセラピーって何?

上記のような疑問に応えられる記事となっています。この記事では、アートセラピーの概要ややり方、資格などについて現役の臨床心理士が詳しく解説していきます。

1. アートセラピーとは

アートセラピーとは、絵を描くこと、造形、ダンスなどの「表現すること」を用いた心理療法です。

・心の問題を抱えた方や障害をお持ちの方

・自己成長や自己への気づきを得たい健康な方

そのどちらにも開かれているのがアートセラピー。「上手い」「下手」という批評をすることなく、表現を通して自分自身の本音と向き合うことが大切なのです。

2. アートセラピーの歴史

ここでは、アートセラピーの全体像を理解していただけるよう、簡単に歴史をお伝えします。

旧石器時代

旧石器時代の壁画なども、捉え方によってはアートセラピーと言えるでしょう。絵を描くという行為によって精神の浄化を図っていたように思われるからです。

西洋美術における表現主義の台頭

それまでの西洋美術は、自然や光などを忠実に再現する写実主義が主流でした。しかし、1880年代半ば過ぎ、ゴーギャン・セザンヌ・ゴッホといった画家たちは、忠実に景色を描くのではなく、自分自身の心像を描くことに惹かれていきました。これは表現主義と言われるのですが、アートセラピーと近い発想にあるのではないかと思います。

アートを精神医療に導入

アメリカの心理学者であるマーガレット・ナウムブルクは、はじめてアートを精神医療に導入した人として有名です。彼女は、アートが精神的な病を抱えた方に対してどのような効果を及ぼすのか、長年に渡り研究し、書籍も残しています。

「アートセラピー」という言葉の誕生

イギリスの芸術家であるエイドリアン・ヒルは、結核患者に絵を描いてもらうという取り組みを行ったのですが、ここではじめて、「アートセラピー」という言葉が使われています。

ユングと芸術療法

フロイトの元弟子であり、分析心理学を打ち立てたことで知られるカール・グスタフ・ユングは、芸術による表現が人間の精神を統合させ、人格的成長へと導くと考えていました。心理学と芸術を結びつけた心理学者として、ユングがキーマンとなっているのは間違いないと言えるでしょう。

3. アートに表れる心理状態

心理学には、投影法と呼ばれる「心理分析」があります。投影法とは、あいまいな刺激への反応の仕方を見ることにより、その人の無意識を知る方法です。

アートセラピーは、表現という行為そのものに意味があるものであり、心理テストではありません。しかし、何気なく選んだ色や描き込んだもの、筆圧、タッチなどに無意識が反映されることがあります。「正解」があるわけではありませんが、時々自分の無意識を眺め、感じ、想いを巡らせる媒体としてもアートセラピーは一役買ってくれるのです。

4. 代表的なアートセラピー

ここでは、専門家が臨床現場でよく行っている代表的なアートセラピーをご紹介します。

箱庭療法

箱庭療法は、砂が入った箱の中に、人、動物、建物、植物などのミニチュアを置いていく表現療法です。

1929年にイギリスのローウェンフェルトが考案し、それをスイス人のカルフがユング心理学をもとに発展させていきました。そして、1965年に精神科医の河合隼雄が箱庭療法を日本の精神医療にはじめて導入しました。

箱に入った砂に触れることで脳の本能的な部分が刺激され、無意識が表現されやすくなります。治療者の優しい態度に見守られながら自由に表現する中で、抑圧していた無意識を解放し、カタルシスを得られることがあります。また、作品を治療者と眺める中で自己理解を深めることもできます。

箱庭療法は、精神科や心療内科、心理相談室などで行っていることが多いです。例えば、飯田橋メンタルクリニックでは通常の診療にプラスして箱庭療法を行っているようです。

風景構成法

風景構成法は、セラピストから伝えられる11のアイテムを順番に画用紙に描いていき、そこから心理状態を把握したり、自己理解を深めたりすることができる絵画療法です。

河合隼雄が箱庭療法を日本に導入し、学会で発表していたのを聞いていた精神科医、中井久夫は、箱庭療法を二次元の紙上で簡便に行えないものかと考え風景構成法を考案し、1969年に発表しました。

風景構成法を行う際、最初にセラピストが画用紙に「枠づけ」を行うのですが、これには意味があり、「自由にして保護された空間」の中でクライエントが安心して自分を表現できるよう促しているのです。

アイテムの配置や内容、筆圧、色などから自己理解を深めていくことができます。また、どのように風景が「構成」されているのかということも重要な観点です。

風景構成法は、精神科などで心理検査として用いられることもありますが、近年ではカウンセリングの一環として用いられたり、精神科デイケアの中でワークとして導入されたりすることが多いです。

風景構成法については、過去の記事で詳しく解説しているのでご覧ください。

なぐり描き法

なぐり描き法は、ペンを使って自由に画用紙に「なぐり描き」を行った後、そのなぐり描きの中に見えるもの(投影されているもの)に彩色し、形づくる方法です。考案した人によって微妙にやり方が違うので、それぞれ解説します。

①スクリブル法

ナウムバーグによって考案されたスクリブル法は、セラピストが見守る中でクライエントが自由になぐり描きを行い、見えたものに彩色をして絵を完成させる方法です。

②スクイッグル法

ウィニコットが考案したスクイッグル法は、クライエントとセラピストが協力して一枚の絵を完成させる方法です。具体的には、まずセラピストがクライエントの前でなぐり描きをして見せ、そこから見えたものにクライエントが彩色して絵を完成させるというものです。一巡したら、役割を交代して新たに絵を共作します。

③交互なぐり描き物語統合法

山中康裕によって考案された交互なぐり描き物語統合法では、コマ割りされた画用紙にクライエントとセラピストが交互になぐり描き・見えたものに彩色を行い、最後にクライエントがすべてのコマに描かれた対象をもとに物語を考えるという方法です。なぐり描きは無意識が表れやすいものですが、そこに言葉を使って物語を紡ぐことで、無意識的なものを意識で統合するという効果が期待できます。

なぐり描き法は、セラピストとクライエントの「無意識の交流」とも言え、関係性を構築する際にも大切にされている手法です。

その他すべての表現

上記でご紹介した箱庭療法や風景構成法、なぐり描き法は、学術的にも裏付けられているアートセラピーたちです。

しかし、本質的にアートというのは自由なものであり、踊ったり、歌ったり、粘土を触ったり、コラージュを行ったりと、表現に関するものはすべてアートセラピーとなり得ます。

5. アートセラピストになるには

ドイツをはじめとした欧米にはアートセラピーの国家資格があるのですが、現時点で国内にはアートセラピーの公的な資格はなく、民間資格となっています。

極端な話し、自分で「アートセラピスト」と名乗ってしまえばそれは違法ではないわけです。しかし、個人的には民間資格でも良いので、体型的な知識を身につけてから実施することがおすすめです。「自分自身がアートセラピーを受けてみたい」と思う方も、学びながら自らに実践することができるのではないでしょうか。

個人的におすすめなのは、NPO法人日本統合医学協会によるアートセラピー資格取得講座です。


日本統合医学協会は、「西洋医学を補完する形として東洋医学や代替医療を積極的に取り入れ、患者一人ひとりの心身の状態に合わせた統合的な治療とケアをしていく医療」である統合医学を推進している団体です。

オンラインで体系的にアートセラピーの基本を学ぶことができる点が優れていると同時に、講座の費用が比較的安価に抑えられているのが魅力的であるように感じます。個人的には、資格を取ることに時間とお金を費やしすぎず、体型的な知識を早めに学んで、なるべく早く現場で経験するのが大切なのではないかと思うのです。

6. アートセラピーの効果

最後に、アートセラピーで言われている代表的な効果についてお伝えしたいと思います。

抑圧していた感情を解放できる

普段の生活の中ではあらゆるストレスや願望などが自分自身に降りかかってきます。しかし、現代社会は左脳(理性脳)を中心に出来ており、それを表出することはタブーとされているところがありますよね。

しかし、私たちの抑圧されたストレスはどこへ行けばよいのでしょうか?アートは、その答えとなってくれます。無意識に抑圧した怒りや葛藤をアート表現として表出することで、浄化効果(カタルシス効果)を得ることができるのです。

自己理解を深められる

アートセラピーは、必ずしも治療のために行われるものではありません。アートは自分の無意識、つまり「本音」を映し出してくれるもの。なので、時々アートに触れることにより、「自分の本当の気持ち」に気づきやすくなるのです。

創造性が刺激される

アートセラピーでは、理性や言葉を司っている左脳よりも、感覚や感性を司る右脳を多く使います。現代は左脳中心の生活になりがちと言われていますが、たまにアートに触れることにのり右脳が活性化し、左右の脳のバランスが良くなります。すると、普段思い付かないようなアイデアが出てきたり、クリエイティブなことをしたくなったりと、創造性を促進しやすくなるのです。

7. これからは創造性がものを言う時代

著書、「自分だけの才能の見つけ方(山口揚平著: 三松堂株式会社)」では、これからは想像力がものを言う時代になる、ということが主張されています。

昭和はコンストラクション(製造)の時代

平成はオペレーション(操業)の時代

そして、

令和はクリエーション(創造)の時代

なんだそうです。

働き方が多様化し、AIが代替可能な操作を担うようになっていく中で、個人がアイデアや独創性を発揮することの重要度が高まってくるのです。

そういった意味でも、アートセラピーは今後さらに需要が高まってくるかもしれません。時には治療の為、時にはアイデアの起爆剤として、そして時には自己理解の為に、アートセラピーを活用していきたいものですね。