認知行動療法って、効果あるの?その悩みに心理士が応えます!

心理学

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認知行動療法って、具体的にどんな心理療法なの?

結局、認知行動療法って本当に効果があるの?

そういったお悩みに、お応えできる記事となっています。なぜなら、この記事では認知行動療法の概要に限らず、「効果がある」と言われている根拠具体的な認知行動療法の流れどのような心の悩みに対して、どのような認知行動療法を適用するのかなど、かなり具体的にご紹介しているからです。

この記事を読んでいただくことで、なぜ認知行動療法が「効果がある」と言われているのかがしっくりとくると思うので、安心して一歩を踏み出せるようになるのではないかと思います。

記事の後半では、「認知行動療法を受けてみようかな」と思った方に向けて、どのような機関で受けることができるのかといった情報も詳しく解説しています!

1. 認知行動療法とは?

世界的にメンタル面の問題への効果が高いことが実証されている認知行動療法。もともとはアメリカで発展してきた心理療法ですが、最近では日本の中でも知名度が上がりつつあります。まずは、認知行動療法とはどのような心理療法なのか、確認していきましょう!

世間一般での認知行動療法の定義

ネットで「認知行動療法とは?」と検索すると、「認知行動療法は、認知(考え方)を変化させることで、行動や気分の改善を目指す心理療法です」といった内容が書かれていることが多いと思います。この定義は正しいのですが、実はこれは、「認知行動療法という集合体」の中にある「認知療法」の定義です。

認知行動療法は集合体の名前である

認知行動療法は、「認知」や「行動」にアプローチする理論や技法、考え方の集合体の名前です。認知を変化させることで気分の改善を目指す認知療法は、確かに認知行動療法の中でも中心的な役割を果たしています。ただ、「それが全て」ではないのです。

・認知の歪みに気づき、より柔軟な思考を身につけていけるようにする認知再構成法
・行動を変化させることで「好循環」を作っていく行動活性化
・今この時に注意を向け、価値判断せずに現実を受け止め、認知と上手に距離を取れるようになることを目指すマインドフルネス
・不安を感じる対象に段階的に身を曝して「慣れていく」ことを目指す曝露反応妨害法

上記のようなあらゆる技法や理論の集合体のことを、「認知行動療法」と呼んでいるわけです。

認知行動療法のあらゆる技法の「共通点」

認知行動療法が理論や技法の集合体であることは分かったけど、心理療法には認知行動療法の他にも色々な種類がありますよね。何をもって「認知行動療法に含まれる」と言えるのか、分からなくなってしまうと思います。そこで、認知行動療法のあらゆる理論や技法に共通したポイントをお伝えしたいと思います。

共通点①:科学的根拠(エビデンス)を重視する

→認知行動療法では、「ランダム化比較試験(RCT)」や「システマティックレビュー」などと呼ばれる研究方法を駆使して、技法や理論の有効性を実証的に検証する手続きを大切にしています。例えば、近年注目されている「マインドフルネス」も、元々は宗教から派生した考え方ですが、上記のような手法を使って有効性を確かめる手続きを行い、効果を検証した上で臨床場面で適用するようにされています。

共通点②:「認知」や「行動」に働きかける

→認知行動療法、という名前の通り、「認知」や「行動」に働きかけることは前提になってきます。自分の気分や、対人関係の良し悪しは、自分の努力だけではコントロールできません。だから認知行動療法では、自分の意思でコントロールしていける認知や気分に働きかける(もしくは距離をとる)ことで、結果として気分や対人関係等が前向きな方向に向かうよう促していくのです。

共通点③:クライエントとセラピストが共同的に問題に向き合う

→セラピストがクライエントを一方的に「治す」わけでもなければ、セラピストが完全にクライエントに身をゆだねるわけでもありません。クライエントとセラピストが「チーム」となり、一緒に問題解決への仮説を立て、検証していくプロセスを大切にします。

共通点④:人間哲学<普遍的法則

認知行動療法は「人間哲学」よりも科学性を重視します。哲学とは、主観的なその人の考え方ですよね。例えば、「人生に意味を見出すことが、幸福な人生を歩む上で大切である」というのは、普遍的事実というよりは、言っている人の「考え」だと思います。認知行動療法では、人間に共通する「普遍的法則」を見つけ、問題を予測し、コントロールできるようになることを目指します。

「ある行動の後に良いことが起こると、その行動は増える」(学習理論:オペラント条件づけ)

「どのような認知を抱くかが、後の感情を決める」(認知療法)

といった考えは、「人間哲学」ではなく研究の結果導き出された「普遍的法則」であると仮定しているのです。

2. 認知行動療法の効果

「それで結局、認知行動療法は効果があるの?」そういった疑問が、ネット上でもいくつか見受けられます。そこで認知行動療法では何をもって「効果がある」と言っているのかをご紹介してみたいと思います。

認知行動療法の「効果がある」とは

認知行動療法が「効果がある」と言われているのは、先ほどご紹介した「ランダム化比較試験」や「システマティックレビュー」などの数多くの研究で、認知行動療法を行なった群と、行わなかった群でうつ病や不安障害、その他の精神的な問題の症状などに「有意な差が見られた」という結果が出ているからです。

こういった研究は科学的な手続きによって行われ、専門家による正規の認知行動療法が研究協力者に提供されています。あくまで研究の結果であるので、「認知行動療法が、絶対誰にでも効く」とは言い切れませんが、こういった科学的な研究の結果が出ていることを根拠に、「効果がある」とされているのです。

認知行動療法の効果が高いと言われている心の問題

認知行動療法は、うつ病・不安障害・摂食障害・統合失調症などへの効果が高いと考えられています。各疾患や心の問題により、技法を組み合わせながら改善を目指していく形になります。 また、疾患レベルの問題に限らず、日常の中での気分の落ち込みや不安にも効果があるとされています。近年では、身体疾患への認知行動療法の有用性も確認されつつあるようです。

認知行動療法は再発予防にも効果的

認知行動療法のセッションが終了してから、何ヶ月か経った後のうつ病の再発率を「認知行動療法を受けた群」と「受けなかった群」で比較した研究もあるようです。その結果、「認知行動療法を受けた群」の方が再発率が有意に低かったとのこと。

認知行動療法を行うことで再発率が下がる理由として、認知行動療法を受けた方自身に問題解決能力や気分のコントロール方法が身についているため、自分で問題に対処することができるようになっていることが挙げられています。

認知行動療法の効果の根拠

「認知行動療法は研究によって効果が実証されている」という言葉だけよりも、実際にどのような研究が行われてきたかを知れた方がしっくりとくるのではないかと思います。よって、過去に行われた認知行動療法の効果研究を2つご紹介します。

研究①:認知行動療法と薬物療法の効果を比較した研究

認知行動療法の第一人者の一人であり、アメリカの精神科医のデビッド・D・バーンズ博士は、著書「フィーリングGoodハンドブックの中で、以下のような1970年代にペンシルバニア大学で行われた研究を紹介しています。

とある精神科に通う、うつ病患者を2つのグループにランダムに分けた。

Aグループ:抗うつ薬のみを投与するグループ

Bグループ:認知行動療法のみを行うグループ

結果:12週間の治療期間が終了した際、認知行動療法を受けたグループは、薬物療法のみを受けたグループと同程度に症状が回復していた。

出典:デビッドD・バーンズ著 野村総一郎監訳 関沢洋一訳:フィーリングGoodハンドブック 気分を変えて素晴らしい人生を手に入れる方法 2005 株式会社星和書店

副作用のない認知行動療法に、薬物療法と同程度の効果があることが分かったのは画期的な発見であったようです。また後の研究で、「認知行動療法は薬物療法以上に効果が高く、また再発率も低い」という結果も出ているようです。

研究②:集団認知行動療法と薬物療法の効果を比較した研究

日本で権威ある学術雑誌である「行動療法研究」に掲載されている2012年に行われた研究です。一度に複数人を対象に行える集団認知行動療法の効果を実証しています。

都内の診療内科神経科クリニックに通院しているうつ病の診断を受けている患者をランダムに2グループに分けた。

Aグループ:通常の薬物療法に加え、計12回の心理士による集団認知行動療法プログラムを実施

Bグループ:通常の薬物療法のみを実施

→実施前・実施中・実施後の3回に分けて、世界的に信頼性が認められているうつ症状の評価尺度であるBDI-Ⅱで効果を検証。

結果:実施後の時点において、AグループのBDI-Ⅱの得点が、Bグループの得点と比べて有意に下がっていた。

→通常の薬物療法に加えて、心理士が行う集団認知行動療法を行うことでうつ症状の改善効果が高まることが示された。

出典:伊藤大輔ほか 2012 行動療法研究 第38巻3号 169-179

認知行動療法は10〜20回のセッションを基本とするため、「認知行動療法を必要としている人」に対して「認知行動療法を行える専門家の数が少ない」というジンクスがあるようです。そこで期待されているのが、一度に複数人で参加し、認知行動療法を受けることができる集団認知行動療法です。

上記の研究では、集団認知行動療法と薬物療法を併用することの効果を、科学的に実証されています。

今回は認知行動療法の効果研究として2つの研究をご紹介しました。他にも、認知行動療法では数多くの効果研究が行われてきています。「認知行動療法は絶対に効果がある」と言いきることはできませんが、少なくとも、多くの研究で効果が検証されてきていることは確かなのです。

3. 認知行動療法の進め方

認知行動療法には様々な進め方がありますが、ここではよりスタンダートとされている、認知行動療法の進め方を参考程度にお伝えします。

※認知行動療法を専門家と一緒に行う場合、通常は10〜20回ほどのセッションを1回あたり30〜50分ほどで行うことになります。

①導入

まずは、相談者と治療者で現在の悩みについてしっかりと話し合い、信頼関係を築くことを大切にします。その上で、各問題に対する心理教育を通して、どのような成り立ちでうつ病や不安障害等が生じるのか、どのように治療をしていくのか、理解できるようにしていきます。

そして、現在の相談者の悩みを、認知行動療法の表にまとめるなどの工夫をしながら可視化し、どこに焦点を当てていくかを決めていきます

②認知的・行動的技法の実践

現在の問題と、どのように解決していけるかを話しあったら、今度は実生活の中で認知を記録したり、行動実験を行ってみたりする中で実践していきます。この段階では、相談者にとって実生活は「治療の場」となり、カウンセリングはセラピストと一緒に「作戦会議」をしたり、「フィードバック」を行う場となります。

③再発予防に向けて話し合う

治療終結が近づいてきたタイミングで、これまでの振り返りと、今後の再発予防に向けてのポイントなどを話し合います。必要に応じてフォローアップ面接を行うこともあります。

4. 認知行動療法の技法の活用の一例

どのような心の問題であっても、相談者が今どのようなことで困っているのか、どのような認知や行動の傾向があるのかを治療者が聞き取り、問題についての共通認識を持てるようにすることは前提となります。

その上で、適切な技法を選択し、生活の中で実践しながら、これまでの凝り固まった認知を修正したり、不安に体を慣らしたりしていくことになります。

ここでは、例としてうつ病強迫性障害社交不安障害への一般的な治療の進め方を、それぞれ①心理教育と悩みの概念化、②実践、③効果の順に解説してみたいと思います。

※「悩みの概念化」とは、相談者の悩みの成り立ちや悪循環のパターン、悪循環を好循環に変えていくための具体策などを図や言葉に置き換えていくプロセスのことです。

うつ病(抑うつ状態)に対して・・

うつ病は、気分の落ち込みや気力の低下、食欲の増減や疲労感、睡眠の障害等を主な症状とする精神疾患です。アーロン・ベックが考案した認知療法はうつ病患者への治療を目的としており、認知行動療法の治療対象として、うつ病は代表的な疾患と言えます。

①心理教育と、悩みの概念化

→まずはうつ病の概要や治療の流れなどについて心理教育を行います。また、相談者の現在の悩みや家族構成などのその他の情報について話し合いを行い、治療の方向性を組み立てていきます。

②実践

認知再構成法(コラム法)を用いて、自動思考を同定していきます。まずは今現在の問題を中心に「認知の癖」を把握していき、より適応的でバランスの取れた認知も考えられるようになっていくことを目指します。徐々に、より深層にある自分・他者・世界への考え方である「スキーマ」を同定し、より深くに眠る認知の修正を目指していきます。

③効果

繰り返し自らの認知を書き出し、セラピストとともに認知の妥当性を検証していくプロセスを行う中で、徐々にバランスのとれた認知が身についていき、気分も安定してきます。認知に働きかける治療に加え、必要に応じて問題対処スキルそのものを高める技法や、コミュニケーションの取り方を検討していくこともあります。

出典:厚生労働省:「うつ病の認知療法・認知行動療法治療者用マニュアル」 

強迫性障害に対して・・

強迫性障害とは、不合理とわかっていながらも感じてしまう不安「強迫観念」を解消するために、儀式的な行為である「強迫行為」を繰り返し、生活に支障が生じている状態を示す精神疾患です。

①心理教育と、悩みの概念化

→まず、強迫性障害とはどのような疾患で、どのように治療を進めていくのか、概要について学びます。その後、相談者がどのような「強迫観念」「強迫行為」を持っているのかを、話し合いの中で同定していきます。そして生活の中のどのような場面を取り上げて、「不安に慣らす」練習を行うか、具体的に決めていきます。

②実践

→①で決めた「仮説」をもとに、実際に不安や恐怖を感じる場面に自分を「曝露」させていきます。例えば、不潔恐怖を感じている人が「汚いものに触ると重篤な病気にかかってしまう」と考えているとすれば、家に帰ってから「入念に手を洗う」という強迫行為をあえてしないようにします。(曝露反応妨害法

③効果

→相談者と治療者で協働関係を築きながら、不安への曝露とフォードバックを繰り返していく中で、以前感じていた「強迫観念」が根拠のないものに思えてきて、思考に柔軟さが生まれ、徐々に強迫行為が減っていきます。

出典:厚生労働省:「強迫性障害(強迫症)の認知行動療法マニュアル」

社交不安障害に対して・・

社交不安障害とは、人と会話をする、食事をする、皆の前でスピーチをするなどの社会的な場面を過度に恐れ、避けてしまうことを特徴に持つ不安障害です。有病率が高い疾患ですが、専門的な治療を受けずに自分の中だけで苦しみ続ける人が多いという特徴も持っています。

①心理教育と悩みの概念化

→まずは、社交不安障害とはどのような疾患で、どのように治療を進めていくのかを説明します。その上で、相談者がどのような場面で社交不安を感じ、どのように困っているのかを詳細に聞いていきます。そして、その場面において相談者がどのような自動思考を抱いており、またどのような「安全確保行動」をとっているのかを同定します。

②実践

→ビデオを撮影して、客観的に自分を眺めることで、これまで抱いていた破局的な自己イメージの修正を図ります。また、安全確保行動を行わずに自然に不安が減っていく感覚を練習したり、注意を自分の内面ではなく、外部に切り替える練習などを行います。

③効果

→これまで自分に向かっていた注意が、バランスよく外部にも向けられるようになり、自然に社交場面でも不安を感じにくくなります。また、安全確保行動をやめることにより、緊張してもありのままの自分を受け入れ、自然に不安が下がっていくのを待つことができるようになります。

出典:厚生労働省:「社交不安障害(社交不安症)の認知行動療法マニュアル」

認知行動療法の施行には、どのような疾患や心の問題であっても何かしらの「共通点」がありますが、問題によって、扱う技法や流れが変わってくるのです。

5. 認知行動療法を受けるには?

ここまで、認知行動療法とはどのような心理療法なのか?どんな効果があるのか?といったことなどについて解説してきました。この記事を読んでみて、認知行動療法を取り組むことへのモチベーションが高まった方に向けて、認知行動療法を受けるにはどうしたら良いかをお伝えしていきたいと思います!

医療機関や心理相談室に通う

医療機関や心理相談室に通うというのが、最もスタンダードな「認知行動療法の受け方」だと思います。今は新型コロナウイルスの影響で、オンラインにてカウンセリングを行っている機関も増えているようです。

過去の記事にて、認知行動療法を受けられる東京の施設をまとめているので、もしよろしければこちらもご覧ください。

セルフヘルプ本に取り組む

大きめの書店に行くと、自分で本に書き込みながら認知行動療法を実践できる「セルフヘルプ本」が並んでいると思います。いきなりカウンセリングを受けて認知行動療法を受けることに抵抗がある方は、まずはセルフヘルプ本からはじめてみるのもおすすめです。

認知行動療法の第一人者である大野裕先生の著書である「こころが晴れるノート」は、とても読みやすいうえに、しっかりと認知行動療法のワークを自分で進めていくことができるのでおすすめです!

ウェブサイトやオンライン相談を活用する

更に、現代ではわざわざ本屋に行かなくても、自宅にいながら認知行動療法を実践することができます。大野裕先生が監修している、認知行動療法活用サイト「こころのスキルアップトレーニング」では、認知行動療法の技法が網羅されており、体系的に習得していくことが可能です。

また、オンラインで専門家のカウンセリングを受けることも可能な時代になりました。おすすめなのは、うららか相談室というオンラインカウンセリングサービスです。臨床心理士・公認心理師・看護師・社会福祉士・精神保健福祉士などの専門的な資格を持ったカウンセラーが相談相手になってくれます。

メッセージ・電話・ビデオ・対面の中から自分に合った相談のスタイルを選ぶことができるため、今のご時世でも場所を気にせずに相談できるというメリットがあります。認知行動療法を専門にしているカウンセラーも在籍しているため、「オンラインで認知行動療法を受ける」というのもオススメです。

6. まとめ

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!「認知行動療法という言葉はよく耳にするようになったけど、本当に効果あるの?」そんなお悩みをネットでよく見かけることがあり、今回は心理士である私が認知行動療法について詳しく解説させていただきました。

個人的には、認知行動療法は柔軟性のある心理療法だと考えています。しかし、ただ柔軟性があるのではなく、科学的な根拠を踏まえた上で柔軟に対応していくところに特徴があるように思います。仮説ー検証というプロセスは、「勇気」を与えてくれるものだと思いませんか?

あくまで仮説なので、失敗しても、また原因を見つめ直し、やり直せばいいのです。僕はこういった「前向きさ」が好きで、認知行動療法に興味を持ちました。