いじめ後遺症が原因で「恋愛ができない」と悩む方への4つの提案【臨床心理士が解説】

いじめ後遺症

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臨床心理士の西井です。新宿・横浜の二箇所にていじめ後遺症に特化した心理カウンセリングを、認知行動療法の知識をもとに行っています。詳しくは、心理相談室HappyFeelingのホームページをご覧ください。

今日は、過去にいじめられた傷がトラウマとなり、「恋愛ができない」と深く悩まれている方に向けて、私なりの4つの提案をさせていただけると嬉しいです。

今回の記事は、半分は心理学に裏付けられた知識を、もう半分は私自身の考えを取り入れさせていただきました。「いじめ後遺症」という概念そのものについては、過去の記事で詳しく解説しているため、そちらをご覧ください。

今回の記事のキーワードは「いじめ後遺症」「恋愛」となっていますが、ここでいう恋愛というのは、「他者と親密な関係を築くこと」と定義したいと思います。恋愛では素の自分をさらけ出す側面が出てくるので今回のテーマとなっていますが、これが「友情」であったとしても、同じく今回の記事の内容が役に立ってくれると嬉しいなと思います。

また、今回の記事では、「なぜ?」の部分に焦点を当てるよりも、「どのように?」の部分に焦点を当ててお話したいと思います。この記事を読んでくださっているあなたが、ゆっくりと一歩を踏み出されることを願っているからです。

マインドセット」「思考」「コミュニケーション」「行動」という4つに分けてお話しをしていきたいと思います。

1. マインドセット

最初に、この記事の中でお伝えするすべてのメッセージの前提としたマインドセットをお伝えします。

それは、「ゆっくり。変化を急がない」ということです。なぜなら、いじめによって受けた傷は心の深い部分にあるからです。頭では分かっていても、心の深いところで傷ついてしまっているため、1週間や2週間でどうにかなるというものではないと思うのです。実際、脳には以下のような部位があると言われています。

・大脳辺縁系・・人間に昔から備わっている脳皮質。感情や本能などをつかさどる。

・大脳新皮質・・進化的に見て新しい脳皮質。思考や言語などをつかさどる。

いじめによる傷は、より本能的な大脳辺縁系に位置する「海馬」に貯蔵されます。また、恐怖をつかさどる「扁桃体」にも影響するでしょう。

そして、大脳辺縁系と大脳新皮質ですが、より力を持っているのは大脳辺縁系と言われています。

だから、いじめによる傷はすぐに癒えるものではなく、時間をかける必要があるのです。周囲の人は、「もっと心を開いて」と伝えるのではなく、むしろ「無理に出さなくてもいいんだよ」という気持ちを持って、ただ隣にそっと居ることが大切なのではないかと思います。「隣にいる」というのも、相手を尊重するメッセージなのです。

2. 思考

例えば異性からいじめを受けていた場合、女性であれば男性に恐怖心を抱いたり、男性であれば女性に恐怖心を抱いたりすることがあるかもしれません。

・男性は自分を攻撃してくるかもしれない。

・女性は自分を攻撃してくるかもしれない。

もちろん、上記のように考えるようになってしまった理由として過去のいじめがありますし、いじめを行った人が悪いのは前提です。

ただ、「今」の自分が他者と関係性を築いていくうえで、「一般化の原理」が働いてしまっている可能性があるかもしれません。

例えば昔の人は、はじめて「ハチ」に刺された時、「この虫は危険だ」と一般化をしたのではないかと思います。これは、生命を守るために必要な解釈です。

しかし、「異性」においては、女性の中にも優しい人もいれば意地悪な人もいるし、男性の中にも優しい人もいれば意地悪な人もいるでしょう。

○○な人もいるし、○○な人もいる。私は、○○な人を大切にする。

と柔軟な見方を練習していくことで、「機会」を自ら遠ざけてしまうことを予防できるかもしれません。

柔軟な思考を練習していくうえでは、「コラム表」と呼ばれる認知行動療法の技法がおすすめです。詳しくは過去の記事でご紹介しているのでお読みになっていただけると嬉しいです。

3. コミュニケーション

相手に嫌われてしまうのが怖くて、自分が本当に思っていることが言えない」と悩んでいる背景に、過去のいじめの経験が影を落としていることがあるかもしれません。

その場合は、「相手との関係を大切にしたいからこそ、本当の気持ちを伝えよう」という方向にシフトしてみることがおすすめです。

言い方はあまり良くないかもしれませんが、これには「テスト」という側面もあります。相手が自分のことを大切に思っているのなら、自分の気持ちを素直に伝えた際、何かしらの「アクション」を真剣に起こすはずです。

僕はこれまでの人生で家族などの親しい間柄の人と何度も衝突することがありましたが、いつも彼らは真剣に言葉を選んでいました。対して、僕に侮辱的な態度を取る方も過去にいましたが、Iメッセージで気持ちを伝えた結果、捨て台詞を吐いて僕のもとを去っていきました。

自分の気持ちを「私」を主語にして伝えることを「I(アイ)メッセージ」と言うのですが、僕はこれを「Iメッセージ・テスト」と呼んでいます。

また、自分も相手も大切にしたコミュニケーション、自分の感情を率直に表現することを「アサーション」と言うのですが、こちらは練習によって身につけることができます。

僕は「アサーション」の練習を1対1で行えるカウンセリングを提供しており、いきなり集団の中に入ることに不安を感じる方もいらっしゃるのではないかと思うのでおすすめです。よろしければ、カウンセリングを検討してみていただけると嬉しいです。

4. 行動

他者と関係性を築いていく中で、その最初のステップになるのが「行動」なのではないかと思います。ただ、行動を起こすうえでは「自分の心の声」を聞いて判断することが大切なのではないでしょうか。

例えば、昔自分をいじめていた人が出席する「クラス会」に出る必要はないのではないかと僕は思います。心の声を聞いた時に、「嫌だ!」と思うのであれば、その声の言うことを聞いてあげて良いのではないかと思うのです。心理学では、「内発的動機付け」と「外発的動機付け」という2つの動機付けによって人は行動を駆り立てられると言われています。

外発的動機付け・・外から与えられる報酬を期待して行動を駆り立てられること。

内発的動機付け・・自分の内側からくる興味や欲求に行動を駆り立てられること。

僕は、内発的動機付けによる行動を増やしていくことが大切なのではないかと考えます。

もし、「関わりたいな」と思う相手がいて、それでも行動に移すことに恐怖心を感じるのであれば、その行動を起こしてみることに価値があるのではないかと思います。その場合は、少しずつ、無理のないところから手をつけていくのが良いのではないかと思うのです。

5. まとめ

今回の記事では、いじめられた経験により恋愛ができないと感じ、悩んでいる方に向けて4つの提案をさせていただきました。最後に、僕が思う「魅力的な人」についてお話ししたいと思います。魅力的な人というのは、人として「深み」のある人だと思います。深みとは、「人の悲しみに耳を澄ませることができる」ことを示すのではないかと思うのです。人によって傷ついた経験があるからこそ、人に優しくすることもできるはず。僕はそんなあなたを心から応援しています。