【臨床心理士が解説!】発達障害に関する映画5選!

心理学

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どうも、臨床心理士のにっしーです!

今回の記事では、発達障害がテーマになっているおすすめ映画をご紹介していきたいと思います!
この記事は、以下のような方に向けて書いています。

①自分自身や身内が、発達障害なのではないかと悩んでいる

この場合、今回ご紹介する映画を見ていただく中で、発達障害を持ちながらも前向きに生きている主人公に共感し、明日へのヒントや、勇気を得ることができるかもしれません!

②発達障害の方を支援する専門家や、施設のスタッフを目指している。

この場合、映画を通して発達障害と共に生きる主人公を目の当たりにする中で、決して教科書からは得られない、「生きた理解」が可能となります。

また、今回は、発達障害に関連するおすすめ映画を紹介しつつ、その映画の中で題材になっていると思われる発達障害についての基本知識も解説してみたいと思います。理想は、映画を見ていただきながら、自然に発達障害についての理解を深めていただくことです! 

1. レインマン

僕のメインマン

こちらは、1988年に公開されたアメリカ映画で、監督はバリー・レヴィンソン、主演はダスティン・ホフマンとトム・クルーズです。

サヴァン症候群を持つ兄、レイモンド(ダスティン・ホフマン)と、孤独を心に抱えた高級車ディーラーの弟、チャーリー(トム・クルーズ)の兄弟愛を描いた映画なのですが、「自閉スペクトラム症」という発達障害を理解するうえで、とても有益な映画だと思います。

この映画の主人公であるレイモンドは、サヴァン症候群という名の発達障害である設定です。

サヴァン症候群とは、自閉症(自閉スペクトラム症)の中でも、驚異的な記憶力や計算能力を持つ、極めて稀な症例として分類されている発達障害の一種です。サヴァン症候群は、診断基準に存在するわけではないため、実際は、現代の精神医学では「自閉スペクトラム症」と分類されることが多いでしょう。

この映画の主人公であるレイモンドは、記憶力や計算において驚異的な能力を示すものの、自分の気持ちを言葉で表現することや、人と意思疎通を図ること自分の感情をコントロールすることに大きな困難を抱えています。

自閉スペクトラム症を持つ人が最も困難を感じるのは、人との関係性やコミュニケーションです。仕事で対人関係が上手くいかず、うつ病を併発するというケースがとても多いと言われています。

しかし、この映画の中でレイモンドは、弟であるチャーリーを「僕のメインマン」と言うようになりました。これは、発達障害があっても、当然人と信頼関係を築くことができるということを示しています。

また、弟のチャーリーも、最初はレイモンドに世話を焼いていましたが、次第に1人の兄として、愛するようになっていきました。人を想う気持ちは、発達障害の有無とはあまり関係がないのでしょう。あなたにとっての「メインマン」は誰ですか?発達障害のあるなしに関わらず、周りのかけがえのない人を、大切にしましょう!

解説

この映画の中でキーパーソンとなるサヴァン症候群を持つ兄、レイモンドですが、現代の精神科で診断を受けた場合、「サヴァン症候群」ではなく、「自閉スペクトラム症」と診断される可能性が高いのではないかと思われます。「スペクトラム」というのは、自閉的な特性が薄い状態から濃い状態まで、スペクトラム状に、つまり、0%から100%まで連続的に考えるということを示しています。では、自閉的な特性とは何を示すかと言うと、「自閉症の3つ組の障害」と言われるものがあります。

①対人的相互反応の障害

⇨人と良好な人間関係を築いていくことの難しさ。

②コミュニケーションの障害

⇨相手の気持ちを察したり、自分の気持ちを適切に表現したり、非言語的なメッセージを読み取ることの難しさ。

③常同的な興味・関心

⇨興味や関心の幅が狭く、同じ行動を繰り返す傾向。

の3つです。

これらの特性のどれが強いか、それぞれがどのくらい強いかは人によって様々であり、レイモンドの場合は、より強い特性を持っていることが伺えます。

心理学には「ソーシャルサポートの緩衝効果」と言う言葉があり、障害や病を抱えていても、信頼できる相手が周りにいれば、そこから受けるダメージは少なくなることを示しています。

映画の中で、弟のチャーリーは、自閉症を持つ兄レイモンドの「3つ組の障害」のような「できていない部分」よりも、驚異的な計算能力や記憶力など、彼の得意な部分に気づき、それを生かすことを考えていました。(カジノで生かそうとしたのは、賛否両論あると思いますが笑)

また、チャーリーはレイモンドに対して「自閉症」と言うレッテルを貼ることなく、一人の兄として、女性とのデートを楽しんでもらったり、車の運転を任せたりと、素晴らしい体験をしてもらえるよう働きかけます。

周囲の人が、当事者が持っている才能に気づき、それを生かせるよう働きかけたり、一人のかけがえのない友として楽しむ姿勢は、本当に大切だと思います!そう、相手は「自閉症者or健常者」ではなく、あなたの「メインマン」なのです!

2. ウルトラミラクルラブストーリー

俺の頭の中にはさ、いつもヘリコプターが飛んでんだ。

ウルトラミラクルラブストーリーは、俳優の松山ケンイチが主演の、青森を舞台にした、2009年に上映された映画です。全編で津軽弁が使われているのが印象的です。

青森で祖母の農家を手伝って暮らす、まるで子どもような無邪気な、落ち着きのない青年、水木陽人は、野菜を保育園に売りにいった際に、東京から越してきた新任の保育士、神泉町子に恋をしてしまいます。何度も町子先生にアプローチする陽人でしたが、落ち着きがなく強引な陽人は、相手にもされません。

そんな中、陽人は町子先生がわざわざ青森に引っ越してきた理由は、交通事故で首が飛んでしまった元彼について知るため、霊能者に会うことであると風の噂で知ります。

町子先生の事情を知りながらも、一途に彼女を追い続ける陽人でしたが、ある日、子どもと遊んでいる最中に、大量の農薬を浴びてしまうのでした。農薬の何らかの作用により、本来の落ち着きを取り戻した陽人は、町子先生とまともに会話を続けることができるようになったことに気づきます。それからは、町子先生に好かれるため、大量の農薬を自ら浴び続ける日々を送るようになっていったのですが・・。

解説

発達障害について理解のある方であれば、この物語の主人公、水木陽人はADHDと言う発達障害であることにすぐに気づくでしょう。ADHDとは注意欠陥/多動性障害のことで、不注意や衝動性の高さなどが大きな特徴として挙げられます。

因みに、ADHDは①不注意優勢型、②多動性優勢型、③混合型の3つに分類されます。

不注意優勢型・・忘れ物が多かったり、集中して何かに取り組むことが苦手であったり、片付けが苦手であったりと、主に「注意」に障害が見られる。

多動性優勢型・・落ち着きがなく、常にそわそわと体を動かしていたり、後先考えずに衝動的に行動を起こしてしまう。

混合型・・不注意優勢型、多動性衝動型の2つが混ざっている。

といったところでしょうか。

陽人は、多動性優勢型か、混合型のどちらかであることが予想されますが(これらは、専門医による厳密な検討により診断されます)、陽人のような「落ち着きのなさ」「衝動性」は、ADHD治療薬の服用によって、症状の改善が大きく期待できることがあります。つまり、専門の薬を飲むことにより、落ち着きを取り戻すことが出来るのです。(その可能性が高いと考えてください)

物語の中で陽人は農薬を浴びることからADHD治療薬と同じような作用を得ていたのでしょう。しかし、農薬は基本的に人体にとっては有害物質であるために、陽人の体は次第にむしばまれていきました。

陽人は、農薬を浴びる必要などなかったのです!もっと早くADHD治療薬を服用していれば・・。

この映画は、臨床心理士の僕からすると、ADHDを持つ方にとって、「ADHD治療薬」に出会うことがどれだけ大切かを謳った映画であると思ってしまうのです・・。

陽人のように、「頭の中にいつもヘリコプターが飛んでいる」(ざわざわして落ち着けない)と感じて深刻に悩んでいる方はぜひ、精神科でADHDの診断を受けてみてください。そして、医師の指示に従って、ADHD治療薬を検討してみましょう。

3. 僕と世界の方程式

間違いなんか、どこにもない

続いてご紹介するのは、「僕と世界の方程式」という作品。この作品は、幼い頃に最愛の父を交通事故で無くし、心に傷を負った自閉スペクトラム症を持つ青年の物語です。主演は、「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」「ヒューゴの不思議な発明」などで一躍名を馳せた俳優、エイサ・バターフィールド。監督は、「リトルダンサー」で有名なモーガン・マシューズです。

主人公、ネイサン・エリスは、自閉症スペクトラムという発達障害のために、周囲の人たちとコミュニケーションを取ることが難しく、孤独な日々を送っていました。そんな折、彼の類稀なる数学的才能を知る母、ジュリーは、多発性硬化症を患う高校の数学教師、マーティンにネイサンへの個人指導を依頼します。

マーティンは「逃げ腰」の自分の人生に落胆していましたが、過去に国際数学オリンピックの選抜チームに選ばれた経験のある、ネイサンと同じく数学的才能の持ち主でした。

ネイサンの姿に「過去の自分」を見たマーティンは、ネイサンを国際数学オリンピックに出場させるため、本腰を入れ始めます。

マーティンの指導もあり、見事国際数学オリンピックの選抜チームに選ばれたネイサンですが、オリンピック出場を掛けた選抜合宿のため、台湾への遠征が決まります。

台湾でペアを組む事になったのは、中国の心優しき女学生であるチャン・メイ。彼女との交流を通し、ネイサンは未だかつて経験したことのない「方程式」に取り組むことになるのでした・・。

解説

この作品の主人公、ネイサン・エリスは、幼い頃に自閉スペクトラム症の診断を受けています。最初にご紹介した映画、「レインマン」の登場人物であるレイモンドも同じく自閉スペクトラム症ですが、時代が違うことに着目していただきたいと思います。

「レインマン」が製作された当初、発達障害への世の中の理解は、まだそれほど深まっていなかったことが伺えます。対して、この物語の主人公であるネイサンが生まれた現代では、発達障害への理解も深まっており、より早期に診断を受け、適切なサポートを受けることが出来たのではないかと思います。

ネイサンの最愛の父は、ネイサンが幼いころに交通事故で亡くなっていますが、彼が生前に残した言葉が印象的です。

お前は変わる必要なんてないぞ。

自閉スペクトラム症のような発達障害を持って生まれてきた場合、現代では「療育」をはじめとした専門的なサポートを受けることができるようになっています。この記事を書いている僕もまた、前職では療育の指導員をやっていました。そして、療育を行う中で僕が思ったのは、「苦手な部分を克服するよりも、得意な部分を生かしていくことの方が100倍大切である」ということです。

ネイサンは、コミュニケーションに課題を持っていますが、数学的な才能の持ち主でした。無理に一般的な学校教育に順応させるのではなく、マーティンという数学教師に個人指導を依頼し、ネイサンの才能を伸ばそうとした母ジュリーは、やはりネイサンにとって尊い存在であったと思うのです。

4. サムサッカー

大切なのは、答えなしに生きる力だ。

サムサッカーは、2005年にアメリカで上映、2006年に日本で上映された作品です。マイク・ミルズ監督の初作品としても知られています。主演はルー・テイラー・プッチです。

舞台はアメリカ、オレゴン州。17歳になっても親指をしゃぶる癖をやめられない主人公、ジャスティンは、内気で、何をしてもぱっとしない青年。そんな彼に、家族や友人、教師たちは苛立ちと焦りを感じていました。

両親の勧めでかかりつけの歯科医であるペリー先生に催眠術をかけてもらったところ、なんと本当に親指を苦く感じるようになり、一時はジャスティンの指しゃぶりの癖は治ります。しかし、指しゃぶりをやめたことにより、彼の不安や焦燥感、落ち着かない気持ちは悪化してしまいます。

精神的な不安定さから警察にお世話になったことをきっかけに、今度は医師からADHDの診断を受けます。治療薬を飲むことにより、ジャスティンの頭はクリアになり、次第に本来の力を発揮するようになるのですが・・。

解説

この映画を観た僕の感想は、「正直ちょっとタイクツ」でした。しかし、こんなに爽やかな退屈さをくれた映画もまた、初めてです。退屈だけど、「観て良かった!」と感じるのです。

この映画の主人公であるジャスティンはADHDの診断を受けていますが、この記事の前半で紹介した「ウルトラミラクルラブストーリー」の主人公である陽人と比べると、かなり落ち着いた印象を受けます。

見るからに多動なわけではありませんが、授業の前に準備をすることが出来なかったり、本を最後まで読み切ることができなかったりと、「注意の集中を持続させること」などに障害があることが伺えます。ADHDにも、多動性が目立つタイプと、不注意や集中力のなさなどが目立つタイプがあることが分かりますね。

しかし、この映画が言いたいのは、「ジャスティンがADHDなのか否か」ということではないようです。

映画の後半で、キアヌ・リーヴスが演じる歯科医、ペリー先生がジャスティンに投げかけた言葉が印象的です。

大切なのは、答えなしに生きる力だ。

誰もが、「自分ってちょっとおかしいのかも」「自分は人と比べて劣っているのではないか」と感じることが一度はありますよね。また、自分にはADHDや自閉スペクトラム症などの発達障害の傾向があるのではないかと疑いながらも、その傾向が微弱であるために、「何かおかしい」と思いながらも毎日を生きている人が数多くいます。

そういった方々にこの、「大切なのは、答えなしに生きる力だ」という言葉は強く勇気を与えてくれるのではないでしょうか。「何かおかしい」「自信が持てない」そんな風に感じながらも、自分自身について葛藤を抱きながらも、自分を受け入れて毎日を生きていくこと。そう、とにかく、生きていくことが大切なのです。

5. ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

君が証明したのは、第6区の存在と、君自身の素晴らしさだ。

最後にご紹介するのは、2011年にアメリカで公開された映画、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」です。監督は、「リトルダンサー」「めぐりあう時間たち」で有名なスティーヴン・ダルドリー、主演はトーマス・ホーン、父親役はトム・ハンクスです。舞台となっているニューヨークが作品を彩ります。

アスペルガー症候群の傾向により、人と接することに苦手さを持つ少年、オスカーには、父親という名の「親友」がいました。彼と父親は、「調査探検」を行うことを共通の趣味としており、ニューヨークの「幻の第6区」を見つける冒険をしていました。

父、トーマスは、調査探検を行う中で、人と関わることの素晴らしさを学んでほしかったのです。

しかし、「最悪な1日」が訪れます。2001年9月11日、最愛の父トーマスは、商談でワールドトレードセンターの上部階にいたのです。

最愛の父、トーマスを失ったオスカーは、以前にも増して聴覚過敏やフラッシュバックなどの傾向に苦しむようになっていきました。しかし、ある日父のクローゼットから、一本の古い鍵と、「Black」と書かれた封筒を見つけます。

父親が残したメッセージの意味を知るために「調査探検」を再開するオスカーでしたが、その中で彼が見つけたのは、「鍵穴」以上の素晴らしいものなのでした・・。

解説

この映画のキーワードを僕なりに解釈すると、「発達障害」「同時多発テロ」「人との出会い」となることに気づきました。

今回の記事では、発達障害をテーマにしているので、まずは主人公、オスカーのアスペルガー症候群について解説する必要があると思います。

アスペルガー症候群は、人間関係を構築することの難しさやコミュニケーションの不得手さなどの自閉的な傾向を持ちながらも、言語能力や知能に遅れの見られないタイプの発達障害とされています。しかし、2021年現在では診断基準が変わっており、「自閉スペクトラム症」という、連続した自閉的な傾向を示す名称になっています。

劇中でオスカー自ら、「アスペルガー症候群の不確定診断を受けている」と話していることから、自閉スペクトラム症の中でも、より自閉的な傾向が低いことが推測できます。

特に彼の場合、聴覚過敏やフラッシュバックなどの感覚的刺激の受け取り方に特徴が見られるようです。発達障害には、このような症状が併発することも多いようです。

しかし、この映画を見て、重要なのは障害のあるなしではなく、周囲の人と信頼関係を築くことであると気づかされました。9.11同時多発テロで最愛の父親を亡くしたオスカーですが、父が残した「調査探検の続き」を通して、数々の出会いを経験することになります。また、劇中では「謎の老人」との出会いを通して、「電車」「橋」などの彼が避けていたものを1つ1つ克服していく姿が印象的でした。

まとめ

以上、今回は、心理士である僕から、発達障害に関するおすすめ映画を5作品紹介させていただきました!

発達障害に関する知識を紹介しておいて難ですが、途中から診断名とかがどうでもよくなってきている自分に気づきました。

つまり、僕が言いたいのは、「人生はストーリーである」ということと、「自分は自分である」ということです。確かに、障害があることによって、数々の困難に直面することはあるかもしれません。「周りと何かが違う」と思って不安になるかもしれません。生きづらさを感じることもあるでしょう。

しかし、発達障害を持つ全ての人が同じ人生を歩むとは到底思えません。結局、障害のあるなしに関わらず、「愛情」とか「友情」とか「自分で希望を見出していくこと」とかは、人類の共有財産なのです。

この記事を読んでくれたあなたは、自分の人生をどんなストーリーにしていきたいですか?