- 心理学の「NLP」って言葉を良く聞くけど、どういう心理学なの?
- 色々調べてみたけど、NLPの定義ってわかりづらい!
コミュニケーションや目標達成、セルフケアなどに効果的であり、仕事や恋愛で広く活用されている心理学の一分野に「NLP」があります。
ただ、「NLPって結局どういう学問なの?」「なんかしっくりとこないな」と思っている方も少なくないのではないでしょうか。
僕も最初はそのように思っていましたが、実際NLPはとても優れた学問です。
本記事では、臨床心理士である筆者が分かりやすく、NLPの概要について解説していきます。
NLPとは何かを明確に理解したい方、NLPを活用することに興味がある方は、ぜひ読んでみてください。
NLPとは何か?【わかりやすく解説】
NLPは実践的かつ包括的な心理学の分野なので、一言で「これがNLPです」と言い表すことが難しい心理学の分野と言えます。
強いて言えば、「心の取り扱い説明書」と思っておくと良いでしょう。
心や脳のメカニズムをもとに、より効果的なコミュニケーションや目標達成の方法を研究している学問なので、活用範囲も多岐に渡るわけですね。
以下には、NLPの成り立ち、NLPという言葉の意味、活用している有名人などについて詳しく記載しました。
NLPの成り立ち
NLPは、1970年代にアメリカのカリフォルニア大学にて言語学教授であったジョン・グリンダー氏と、当時学生であったリチャード・バンドラー氏によって創始されました。
当時のアメリカでは、ベトナム戦争からの帰還兵が深刻なトラウマ症状を呈していることが問題視されており、より短期間で高い効果を望める治療法が求められていました。
そこで、ジョン・グリンダーとリチャード・バンドラーは、以下に示す3人の天才セラピストが用いているコミュニケーション技法を分析しました。
- フリッツパールズ・・ゲシュタルト心理学を心理療法に応用。
- ミルトン・エリクソン・・催眠療法の第一人者。
- バージニア・サティア・・家族療法の創始者。
彼ら3人の天才セラピストはそれぞれ異なるセラピーを展開していましたが、「短期間で高い治療成果を出していた」という点で共通していたのです。
彼らがセラピーの中で自然と用いているコミュニケーション技法を集約してできたNLPは、短期間でのトラウマ治療を成功へと導きました。
その後はトラウマ治療に関わらず、日常でのコミュニケーションや目標達成のためのメソッドとして、幅広い領域で活用されるように発展していったのです。
NLPという言葉の意味
「NLP」とは、以下に示す3つの言葉の頭文字です。
- Neuro(ニューロ):「五感」のこと
- Linguistic(リングイスティック):「言語」のこと
- Programing(プログラミング):「行動のパターン」のこと
私たちは、外界を視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚などの「五感」を通して認識していますよね。
そして、五感で認識したものに言語を使って意味づけをし、何らかの行動を起こすでしょう。この一連の流れにはお決まりの「パターン」のようなものがあります。
例えば、以下のような例で考えてみましょう。
例)りんごが目の前にある
Neuro(五感):視覚でりんごの形や色を認識する
Linguistic(言語):「りんごだな」と言語的な意味を与える
Programing(プログラミング):りんごを食べる
この例の方の場合、視覚でりんごを捉え、言語で「りんごだな」と意味づけを行い、「食べる」という行動を起こすという「パターン」を身につけていることになります。
これが「プログラミング」であるわけですね。
こちらの例では「かじる」という行動パターンが生じていますが、人によってどのように五感で認識し、言語的な意味づけを行い、どのような行動が生じるかは異なるので、何通りものパターンが生じるわけですね。
NLPでは、どのように五感で認識し(Neuro)、言語的意味づけを行い(Linguistic)、行動パターンを身につけるのか(programing)を研究し、より人生が豊かになるようなパターンへと書き換えていくことを目指します。
ここまでをまとめると、NLPとは以下のような特徴を持った学問であることが分かりますね。
- フリッツパールズ、ミルトン・エリクソン、バージニア・サティアという3人の天才セラピストのコミュニケーション技法を分析・集約してできた学問である。
- Neuro(五感)・Linguistic(言語)・Programing(プログラミング)の3つにアプローチし、自分が望む結果を得るためのパターンへと書き換える学問である。
- 最初はトラウマ治療として発展したが、次第に日常でのコミュニケーションや目標達成のためのメソッドとしても活用されるようになった。
あまり深く考えず、「NLPはより良く生きていくための知識やスキルを提供してくれる汎用性の高い学問である」、と理解しておけばOKです!
NLPを活用している有名人
NLPを活用していることで知られている有名人を、参考までに以下に記載しました。
- アンソニー・ロビンズ(世界No.1コーチ)
- アンドレ・アガシ(テニスプレイヤー)
- バラク・オバマ(元アメリカ大統領)
- 勝間和代(著述家・評論家)
- ポール・R・シーリィ(フォトリーディング・ホール・マインド・システムを開発したアメリカの学者・実業家)
- ネルソン・マンデラ(南アメリカ共和国大統領)
- ロナルド・レーガン(元アメリカ大統領)
- レディ・ガガ(ミュージシャン)
- アンソニー・ホプキンス(俳優)
- タイガー・ウッズ(ゴルファー)
- ブッシュ(元アメリカ大統領)
- クリントン(元アメリカ大統領)
- クリントン(元アメリカ大統領)
コーチングや一国の大統領など、高いコミュニケーション能力により他者に影響を与える立場にある人が、多くNLPを学んでいる傾向にあることが分かりますね。
また、スポーツ選手やミュージシャンなどは、素晴らしいパフォーマンスを発揮するためにNLPを活用しています。
NLPを学ぶ3つのメリット
NLPを学ぶことによってどのようなスキルが身につき、どのような良い結果が得られるのでしょうか?
以下には、NLPを学ぶ代表的なメリットを3つに絞って記載しました。
他者と信頼関係を築けるようになる
NLPは3人の天才セラピストが意識的・無意識的に行っているコミュニケーション技法を集約させてできたものです。
そして、セラピーの成否を分けるのは、クライエントと信頼関係を構築する力にかかっているわけですね。
NLPでは、他者と信頼関係を築くための基本的な態度やコミュニケーションの技法を学べるので、人間関係が良好になっていくのを実感するはずです。
目標を効果的に達成できるようになる
NLPでは、自分が望んだ結果を得るために効果的に「五感」を活用し、目標達成に近づけるような「プログラム」に書き換える方法を学びます。
人間の脳に即した方法で無理なく目標を達成できるメソッドを学べるので、目標を達成することが習慣化していきます。
セルフマネジメントができるようになる
自分の感情に振り回されてしまうというお悩みを持つ方にとっても、NLPを学ぶメリットは大きいです。
NLPはトラウマ治療を起源に持つ学問なので、過去のネガティブな記憶を、自分にとって前向きな意味を持つ記憶へと書き換え、「今」の気分を改善させるテクニックが豊富です。
感情に振り回されてしまって自分にとって意味のある活動ができなくなってしまう状態から変化し、自分にとって本当に意味のある活動に集中することができるようになるでしょう。
ちなみに、NLPに限らず、広く心理学を学ぶことは上記に記載した結果を得るために役立ちます。
社会人が心理学を学ぶおすすめの方法について、以下の記事で紹介しているので、こちらも併せて読んでみてください。
NLPの基本的な特徴
NLPは包括的で実践的な学問なので、実態が掴みづらい側面があるのは否めません。
ただ、それがNLPの魅力でもあるわけですね。
NLPには数多くの技法がありますが、共通している特徴はありますので、理解の助けになるよう以下に記載します。
成功者の「成功法則」を分析・集約している
NLPは、元々は3人の天才セラピストのコミュニケーション技法を分析・集約し、それを誰もが再現できるようになることを目指す学問でしたね。
NLPが発展していくについて、次第に3人のセラピスト以外の「成功者」も分析の対象となり、今では多くの成功者が意識的・無意識的に行っていることを集約した学問となっています。
- 成功している人の意識的・無意識的なパターンを分析する
- 特徴を集約し、誰もが再現可能な形にする
上記がNLPの基本的な考えであることを覚えておきましょう。
また、NLPの本質を理解するようになれば、自分で周囲の人の「良いな」と思ったことをNLP的な視点から分析し、取り入れることができるようになるわけです。
「他者を観察し、良い部分を取り入れられる力」というのは、素晴らしい能力なのではないでしょうか。
五感を活用してプログラミングを望ましいものに置き換える
NLPの重要なキーワードとして「五感」があります。
- 過去に形成したネガティブなプログラミングを、五感を活用してポジティブなものに書き換える
- 未来の目標を達成できるよう、五感を活用して今のプログラミングを書き換える
上記のように、自らの「プログラミング」を書き換えることは、「今」の行動や気分に前向きな変化をもたらし、人生をより良い方向へと進めることに繋がります。
そのための手段として、視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚といった五感を活用することになります。
NLPの目的は「望ましい状態を手に入れること」であり、そのための手段が「五感を用いてプログラミングを書き換えること」であるわけですね。
「Why」よりも「How」を重視
心理学や精神医学では、「なぜ人は精神疾患になってしまうのか?」というように、「Why」の部分に注目することが多い傾向にありました。
しかし、NLPでは「どうすればより良い状態に近づけるのか?」という「How」の部分に着目します。
例えば、「過去のネガティブな記憶により今が楽しめない」という方がいたとしましょう。
従来の心理学では「なぜネガティブな記憶は忘れ去ることができないのか?」と考えるのに対し、NLPでは「どうしたら、より前向きな記憶に書き換えることができるだろうか?」と考えるわけですね。
NLPの代表的な技法
NLPには「今を効果的に生きる」ために有効な数多くの技法があります。
代表的かつ実用性の高い技法を以下に記載したので、参考にしてみてください。
モデリング
モデリングは、自分にとっての「ありたい姿」に近づくために、「憧れの人」や「他者の良いなと思う側面」の真似をする技法です。
- 会社の上司
- 友人
- 家族
上記のような身近な存在の方を真似しても良いですし、
- 芸能人
- プロスポーツ選手
- 有名な実業家
上記のような遠い存在の方を真似しても良いでしょう。
憧れの存在を注意深く真似する中で、次第に自分が「良いな」と思ったポイントが自分の中で育っていくわけですね。
NLPの中でも基本となる技法なので、ぜひ覚えておきましょう。
キャリブレーション
キャリブレーションは、相手のことをよく観察する技法です。
コミュニケーションにおいて相手と信頼関係を築くために有効な技法として代表的なものですね。
前提として、コミュニケーションには言語的コミュニケーションと非言語コミュニケーションの2種類があります。
- 言語的コミュニケーション:言葉を介すやり取りのこと
- 非言語コミュニケーション:表情、うなづき、視線など、言葉を介さないやりとりのこと
キャリブレーションでは、相手の非言語コミュニケーションを注意深く観察し、相手の今の気持ちや、相手にとって受け取りやすいメッセージの伝え方を考えます。
例えば、相手が話しの途中で「う〜ん」と言いながら上を向いていることが多い場合、頭の中で視覚情報をイメージしている可能性が高いでしょう。
そのような相手に対しては、視覚的な情報を多く提示したほうが、安心してコミュニケーションを取ってくれるようになるのです。
リフレーミング
リフレーミングは、物事を今とは別の視点でとらえ直すことで、自分自身の気分の改善や他者との信頼関係構築に役立てられる技法です。
例えば、「仕事でミスをしてしまった」という出来事が生じた際に、以下のようなとらえ方をしたとします。
「ミスばかりして、情けないな」
では、他の視点からとらえ直すとどうなるでしょうか。例えば、以下のように考えることもできますね。
「ミスをしたおかげで、学びにつながったな」
上記のように考えれば気持ちが楽になりますし、結果として次につながる行動も起こしやすくなるものです。
また、他者が同じような状況にあるときに、「それだけ挑戦してるってことだよね」などと声をかけてあげられれば、信頼関係の構築につながるでしょう。
スウィッシュ
スウィッシュ技法は、今の状況を改善し、自分が在りたい姿へと近づくために有効な方法です。
例えば「資格勉強をしたいのについ動画を見てしまう」ということで困っている場合の手順は、以下になります。
- つい動画を見てしまっている自分の姿(変えたい自分)を「大きく明るく」視覚的にイメージする
- 資格勉強に集中している自分(理想的な自分)を「小さく暗く」、ディスプレイの端にあるようなイメージで思い浮かべる
- 「スウィッシュ!」と心の中で唱え、上記の視覚的イメージを入れ替える
変えたい今の姿と理想の姿を視覚的なイメージで切り替えることにより、本来取りたい行動の方に意識を向けられる効果があるわけですね。
嫌な記憶について考えるのをやめたい時にも使える技法であり、慣れれば自分の意志で思考や行動をコントロールできるようになります。
NLPを習得する方法
本記事で述べてきたように、NLPは生活の中で実践ができるとても有用な学問です。
以下にはNLPを学び、習得する方法を2パターン解説したので、参考にしてみてください。
独学で学ぶ
NLPに関する書籍は多数出ているので、まずは入門書を数冊読んでみると良いでしょう。
NLPの参考書籍の一覧を以下に記載しました。
- マンガでやさしくわかるNLP/山本啓支・サノマリナ著・日本能率協会マネジメントセンター
- すぐに使えるNLP/藤川とも子著・日本実業出版社
- NLPの実践手法がわかる本/山本啓支著・日本能率協会マネジメントセンター
- 手にとるようにNLPがわかる本/加藤聖龍著・かんき出版
- 今日から使えるNLP/鈴木信市著・ナツメ社
- プロが教えるはじめてのNLP超入門/芝健太著・成美堂出版
- NLPコーチング/ロバート・ディルツ著・VOICE
- 天才達のNLP戦略/ロバート・ディルツ著・VOICE
- 一瞬で自分を変える法/アンソニー・ロビンズ著・三笠書房
- NLPで最高の能力が目覚めるコーチングハンドブック知識と経験を最大化するセンスの磨き方/山本啓支著・日本能率協会マネジメントセンター
- 面白いほどよくわかるNLPの本/梅本和比己著・西東社
- 神経言語プログラミングー頭脳(あたま)をつかえば自分も変わる/リチャード・バンドラー著・東京図書
- リチャード・バンドラーの3日で人生を変える方法/リチャード・バンドラー著・ダイヤモンド社
- 脳と言葉を上手に使うNLPの教科書/前田忠志・実務教育出版
ただ、NLPを仕事の中で役立てたい場合は、書籍を読むだけの学習はおすすめできません。
なぜなら、NLPは「実践の学問」であるからですね。
例えば、ピアノを弾けるようになりたい方は、ピアノの本を読めば弾けるようになるでしょうか?
もちろん難しいですよね。ピアノの先生に直接指導してもらい、実践を繰り返す中でこそ、正しくピアノが弾けるようになるのです。
よって、NLPを「身につけたい」方には以下に示すスクールがおすすめです。
スクールで学ぶ
通学制のスクールでNLPを学ぶメリットを以下に記載しました。
- 講師の直接指導により生きたスキルが身に付く
- グループワークを通して自己成長が期待できる
- 資格取得により仕事に結びつくことも
通学制のスクールでは、講師からのリアルタイムのレクチャーにより、着実にNLPのスキルを身につけることができます。
グループワークを通して自分への気付きが深まるとともに、修了後はNLPの実践家として仕事に結びつけることもできるでしょう。
とくに、近年話題の仕事である「コーチング」とNLPは非常に相性が良いので、コーチングスキルを持った人材へと自分の市場価値を高めていくことができます。
NLPを学ぶならヒューマンアカデミーがおすすめ
資格の専門校であるヒューマンアカデミーでは、通学講座として「米国NLP協会認定NLPプラクティショナー講座」を開講しています。
本講座がおすすめな理由は2つあるので、以下に記載しました。
- 米国NLP協会認定資格(NLPプラクティショナー)を取得できる
- 少人数制クラスの中で経験豊かな講師から学べる
NLPには数多くの資格がありますが、米国NLP協会が認定している「NLPプラクティショナー」に関しては創始者のリチャード・バンドラー氏自らが認定しており、トレーニングマニュアルも国際基準の信頼性が高いものです。
また、少人数クラスの中で実践的な学びが展開されているので、まさに「スキルを身につける」という目的が叶えられる講座と言えるわけですね。
コーチングが注目されている今、NLPの専門資格を持つメリットは非常に大きいです。
NLPプラクティショナーの有用性については、過去のまとめ記事の中でも解説しているので、参考にしてみてください。
まとめ:NLPとは分かりやすく言うと「脳と心の道具箱」
本記事では、NLPについてわかりやすく解説してきました。
自分で説明していても、NLPは幅広く活用されている学問であるだけに、「これがNLPだ!」とシンプルに説明するのが難しいなと思いました。
NLPは「脳と心の説明書」と説明されることが多いですが、個人的には「脳と心の道具箱」と考えた方が分かりやすいな、と感じました。
NLPには、コミュニケーションや目標達成、セルフマネジメントに役立つ「技法」が本当にたくさんあります。それらをひとまとめにして「NLP」と読んでいるわけですね。
この「道具箱」を自由自在に活用できるようになるには、1つ1つの技法の本質にあるNLPのメカニズムの理解や、上手に活用するための「習熟」が必要になってきます。
本を読んだり、スクール通ったりする中で、ぜひ「自分のもの」にしてみていただけると幸いです。
NLPに限らず、心理学には人生を豊かにするためのヒントが詰まっています。
社会人が心理学を学ぶ方法についても過去の記事で解説しているので、ぜひ読んでみてくださいね。