こんにちは、臨床心理士の西井です。
日々多くの方と関わる中で、「心理学を少し本格的に学んでみたい」という方や、「心理カウンセラーという職業に興味がある」という声を聞くことがあります。
しかし、社会人になると仕事や家庭で忙しく、まとまった時間を取れないという現状もありますよね・・。
そこで、今回の記事では社会人が心理学を学ぶうえでおすすめの方法やポイントなどをお伝えしていきたいと思います。
また、読んで間違いのない書籍やwebサイト、おすすめの通信・通学講座などについても触れていくため、スムーズに心理学の勉強をスタートできるのではないかと思います。
1. そもそも心理学とは?
世界最大の心理学に関する学会であるアメリカ心理学会(APA)によると、心理学の定義は以下のようになっています。
心と行動の研究。
アメリカ心理学会(APA)
心理学は、人の心の仕組みや行動について研究をする学問なのです。また、「心の科学」と呼ばれることも多いのですが、ここで重要なのは「心理学は科学である」ということ。つまり、調査や実験、臨床活動の中で得られた心に関する知見を使って人々の生活に活かせるようにする学問のことを心理学と言うのです。
2. 心理学の種類
心理学には「○○心理学」というようにいくつも種類があります。自分が学びたい内容によってどの心理学から学び始めるかが変わってきます。ここでは、臨床心理士である筆者が大学・大学院で学んだ、重要度が高いと思われる心理学をお伝えします。
臨床心理学
臨床心理学は、精神疾患や心の問題にアプローチすることを目的とした心理学です。うつ病、不安障害、不登校、人間関係の悩みなど、人々が生活する中で経験する、あらゆる「心」に関連した問題に対する対処法を学んでいくことになります。心理検査や心理療法など、あらゆるアプローチを学ぶことになります。心理カウンセラーを目指す方にとっては必須の領域となります。
発達心理学
発達心理学は、人が生まれてから死ぬまで、どのようにして発達していくのかを研究する心理学です。例えば、ピアジェによる認知的発達段階説やエリクソンのライフサイクル論などが有名です。子どもに関わるお仕事をされている方にはとくにおすすめの領域です。
社会心理学
社会心理学は、「個人」ではなく「集団」を研究対象とした心理学です。人は、所属している集団や周囲との関係性の中で行動を決定すると考えます。例えば、アッシュによる同調圧力の実験などが有名ですね。
個人的には、「いじめ」や「パワーハラスメント」などの社会的な問題を解決する糸口はこの「社会心理学」が握っているのではないかと感じています。
学習心理学
学習心理学は、人がどのように行動を増やし、または減らし、維持するのかを研究する分野です。有名な実験に「パブロフの犬」がありますが、あれは「古典的条件づけ」について検証したものです。
スキナーによる「オペラント条件づけ」は、行動の結果良いことが起こると、その行動が増えるということを示した概念です。
この学習心理学の理論から派生して認知行動療法という心理療法が出来ており、これは現代の精神医療においてうつ病や不安障害へのスタンダードとなっています。
僕は大学生の頃に学習心理学の授業を履修し、そこでとても面白い!と感じて認知行動療法にも興味を持つようになりました。
教育心理学
教育心理学は、人に教育を施すうえで、より効果的な方法を模索する分野です。個人的に好きなのが、「内発的動機付け」「外発的動機付け」という概念です。
内発的動機付けは「やりたいからやる」という内側の欲求からくるモチベーションのことを言い、外発的動機付けは「ご褒美をもらいたいからやる」という外部からの報酬を期待したモチベーションを示しています。
アンダーマイニング効果によれば、もともと好きで絵を描いていた子どもの絵を褒めることで、その子の「絵を描く」という行動は減ってしまうと考えます。
つまり、子どもの教育では外発的な報酬によって伸ばすのではなく、子どもがもともと持っている内発的な欲求を尊重し、大人はそれを助ける環境を整えることが重要ということです。
健康心理学
健康心理学では、「予防的な観点」を重要視します。心の問題を解決へと導くのは臨床心理学の仕事。健康心理学では、より健康的に生きていき、心身の不調を予防していくための方法を様々な調査や実験により模索していきます。
ポジティブ心理学
ポジティブ心理学は、1998年にアメリカの心理学者であるマーティン・セリグマンが提唱した比較的新しい心理学の分野です。
人の心のネガティブな側面ではなく、ポジティブな側面に焦点を当て、それを伸ばしていくことを考えます。また、大規模な調査をもとに幸福の構成要素を明示したPERMA理論なども有名です。
ポジティブ心理学は、心の問題を抱える方だけでなく、より一般に開けた学問と言えます。
認知心理学
認知心理学は、人がどのように物事を認識するか、その「情報処理のプロセス」を研究する学問です。研究対象は注意・記憶・問題解決など、多岐に渡ります。心を観察できない「ブラックボックス」であると過程するのではなく、その情報処理の仕組みを解明することを目的としています。
数々の心理学がありますが、心のケアに興味がある方には「臨床心理学」から学び始めることがおすすめです。臨床心理学は基礎心理学も含めた数々の知見を臨床に活かす学問であるため、心理学を網羅的に学ぶことにもつながるからです。
2. 社会人が心理学を学ぶメリット
社会人が心理学を学ぶメリットは数多くありますが、今回は3つに分けて解説してみます。
「自己」への理解が深まる
心理学を学ぶと、自分自身の心の動きや行動の傾向などを客観的に眺めることができるようになります。例えば不安な気持ちになった時。「不安というのは一時的なものであり、回避せずに行動を続けていけば自然に消えていくもの」ということを知っていれば、不安に踊らされることは少なくなりますね。
また、心理学には数々の性格検査がありますので、そういったものをまずは自分で行い理解を深めることで、「自分はどんな時にストレスを感じるのか?」「どんなコミュニケーションの特徴を持っているのか?」などといったことを客観的な視点から眺めやすくなります。
「他者」への理解が深まる
心理学部卒の宿命として、飲み会の時に「心読めるの?」「マインドコントロールできるの?」などと聞かれるというものがあります。(笑)
しかし、実際は逆だと思っています。心理学を学ぶことで、「他者を変えることなどできない」ということに気づけるのです。
本質的に人は自分で選択をしていくものだし、それを求めている。だからサポートをする人は、本人を変えるのではなく、本人の選択を促す役割を持っているに過ぎないことに気づけます。
「関係性」への理解が深まる
多くの悩みは人間関係から生じているのではないでしょうか。「こんなに頑張っているのに認めてもらえない」「あの人には何を言っても無駄」「自分の気持ちなんて誰も分かってくれない」
こういった「すれ違い」が、人間関係の問題を維持させてしまいます。心理学を学ぶことで、相手の態度や言動の「裏側」を考える習慣が身につき、自分自身の伝え方も考えるようになるのです。
「議論」から「信頼関係の構築」へとシフトする方法を学べるのは、一生ものの価値なのではないでしょうか。
3. 社会人が心理学を学ぶ方法6つ
前置きが長くなってしまいましたが、本題である「社会人が心理学を学ぶ方法」を6つご紹介していきます。
ウェブサイトや動画で学ぶ
最も手軽なのがこちらなのではないでしょうか。ただし、ウェブサイトや動画で学ぶ際に問題となるのが「信憑性」になります。
そこでおすすめなのが、公益社団法人日本心理学会が一般向けに公開しているWebサイトである「心理学ミュージアム」です。
心理学ミュージアムの運営団体である日本心理学会は1927年(昭和2年)に創立された歴史ある学会であり、非常にアカデミックな場であるため情報の質は間違いないでしょう。
そして、心理学ミュージアムは学術的な心理学の研究成果を一般の方に分かりやすく、楽しく知ってもらうことを目的としたWebサイトであるため、「信憑性」「親しみやすさ」の両面において優れています。
まずはこのサイトの情報を眺めてみて、「心理学ってこういうものなのか!」と概要を掴んでみるのはいかがでしょうか?
本を読む
「本を読む」というプロセスは、最終的にどのような学び方を選ぶにしても、必要なのではないかと思います。まずは本を読んで体系的な知識を身につける必要があるからです。
ここでは、実際に僕も学生の頃に読んでいた、心理学初学者におすすめの入門書を3冊ご紹介します。
○心理学
実際に心理学部の学生が教科書にしている本です。基礎心理学から応用心理学まで幅広く網羅されており、個人的にこの本が最も分かりやすく、面白かったです。
○よく分かる臨床心理学
社会人の方から「心理学を学びたい」と聞いたとき、それは基礎心理学ではなく臨床心理学を意味しているのかもしれないなと感じます。なぜなら、人の心に寄り添ったり、カウンセラーに必要とされるような知識の大半は臨床心理学的なものだからです。こちらの本は臨床心理士を目指す学生にとってのバイブルのようなもので、読んで間違いのないものだと思います。
○プロカウンセラーの聞く技術
こちらは、カウンセラーが現場でクライエントの話を聞く際にどのような「技術」を使っているのかを実践的に学ぶことができる書籍です。カウンセリングに限らず、コミュニケーション一般に使える知識が詰まっています。
通信講座で学ぶ
民間企業が開講している心理カウンセラーのオンライン講座を受講するという方法もあります。オンライン講座を受講するメリットは主に2つ。1つは「資格を取得できる」こと、そしてもう1つが「時間がない中でも深い学びができる」ということです。
まず、多くの心理カウンセラー養成講座では受講修了&試験合格を条件に資格を取得できるシステムになっています。そして、通信講座の場合は単に本を読むだけでなく動画の視聴やライブ授業を通して体験的に学ぶことができるため、座学ではなく生きた知識として定着しやすくなるわけですね。
民間の心理カウンセラー資格についてもっと知りたい方は、過去の記事で網羅しているのでチェックしてみてください♪
検定を受験する
心理学の学習を開始する際の懸念点の1つとして、「学習を継続できるか?」というものがあるのではないかと思います。そこでおすすめなのが、検定試験を受けることです。学習に限らず、何かを継続するためには「明確な目標」が必要であると心理学的には考えられているのです。
検定の受験が決まっていれば、明確な目標に向けて学習を行うことになるため、学習を継続しやすいでしょう。そこでおすすめなのが、日本心理学諸学会連合が認定している「心理学検定」です。心理学検定はかなりアカデミックな学会が認定している検定ですし、内容としても幅広く網羅されているため、これから心理学を学ぶ方にもおすすめと言えます。
大学・大学院に通う
大学・大学院に通って学ぶこともできますが、臨床心理士や公認心理師の資格取得を考えているわけではない場合はあまりおすすめできません。理由は、莫大な費用と時間がかかるからです。上記2資格を取る場合は通う必要がありますが、社会人になってから、自分自身や人間関係に活かすために心理学を学びたい場合は、アカデミックな心理学を学ぶよりも、むしろ通信講座で体験的な学びを経験した方が豊かな学びが得られるかもしれません。
4. 社会人が心理学を学ぶ際のポイント
次に、社会人が心理学を学ぶ際のポイントについてお伝えします。
目的を決める
心理学は非常に幅の広い学問であるため、「何を目的とするか」によって学び方が異なってきます。
臨床心理士や公認心理師を目指す場合は大学・大学院に通う必要がありますが、社会人になってから「心理学を学びたい!」と思う方の多くは、自己理解やセルフケア、コミュニケーション、人間関係の改善などを目的とされているのではないでしょうか?
その場合は資格にこだわらず、自分が興味のある分野を深掘りしてみるのが1番だと思います。例えば、子どもに関わるお仕事をされているなら発達心理学や教育心理学、医療関係の方なら臨床心理学や精神医学を学ぶのがおすすめです。
肌で学ぶ
個人的に最も強調したいのがこの部分です。人の心を知る最たる方法は、「実際に関わりながら学ぶ」ということだと思います。
そして、心理学を肌で学ぶ際におすすめなのが、グループダイナミクスを味わうということです。例えば、講座を受講するのであれば、他の参加者や講師と意見交換やワークを行うような、ワークショップ形式のものから得られる学びが最も深いのではないかと思います。
極論、知識は本やネットでいくらでも得られるわけです。「人と関わりながら、体系的に学ぶ。」これが最も効率的な学習法なのではないでしょうか。
おすすめ講座
心理学を学ぶことができる民間企業の講座はたくさんありますが、個人的におすすめなのがヒューマンアカデミーの「心理カウンセラー総合養成講座」です。以下、おすすめの理由を解説します。
<おすすめポイント①: 最新の心理学を学べる!>
ヒューマンアカデミーの心理カウンセラー養成総合コースでは、ポジティブ心理学総合講座・NLPプラクティショナー講座・カウンセリング基礎講座・マインドフルネス講座という4つの講座を受講することで総合的なスキルを身につけられます。上記の心理学は、今世界で注目されている「最新」の心理学に位置付けられているものたちです。もっとも新しい心理学を学ぶことで、時代に先駆けることができるでしょう。
<おすすめポイント②: 資格を取得できる!>
コースを修了することで、
「ポジティブ心理学プラクティショナーⅠ・Ⅱ」「NLPプロヴィジョナルプラクティショナー」
という2つの資格を取得することができます。前者の認定団体は「JAPAN POSITIVE PSYCHOLOGY INSTITUTE」、後者の認定団体は「米国NLP協会」であり、それぞれ世界に開かれた信憑性のある団体です。
<おすすめポイント③: 授業はオンラインライブ>
ほとんどの講座において、一流のプロフェッショナルがオンラインにてリアルタイムに授業を行います。授業の進め方はワークショップが中心となるため、まさに「体感的な学び」が可能になります。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか?今回の記事では、社会人が心理学を学ぶうえでおすすめの方法をご紹介しました。本文中でも述べていますが、やはり心理学は「肌で学ぶ」ことが重要です。
まぶはWebサイトや本で学び、更に実践的なスキルを身につけたいと思った時には民間講座などを受けてみてはいかがでしょうか?
学習を継続できた場合は、心理カウンセラーとしての道を模索してみるのも1つなのではないかと思います。