認知行動療法の進め方

心理学

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心理士のにっしーです!認知行動療法のカウンセリングを受けることを検討されている方の中には、

認知行動療法では具体的にどんなことをするの?

カウンセリングは何回やるの?

どのように進めていくの?

という疑問を持つ方も少なくないのではないでしょうか?

そこで今回は、認知行動療法のカウンセリングを受ける際に、どのようなステップで進めていくのか、標準的な流れをお伝えしたいと思います。この記事を読むことで、認知行動療法のカウンセリングを受けるイメージが掴みやすくなるでしょう。

1. 認知行動療法のカウンセリングは何回くらいやるのか

認知行動療法のカウンセリングは、30〜50分ほどで16〜20セッションほど行うのが一般的です。また、必要に応じて期間を延長することもあります。

参考: 厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル」

16週間(約4ヶ月)継続することにより、十分な効果が期待できるとしている先行研究もあります。

カウンセリングの頻度としては、週1か2週間に1回くらいが一般的と言えるでしょう。

認知行動療法の個人カウンセリングを受けられる場所としては、精神科や心療内科、メンタルクリニック、民間のカウンセリングオフィスなどがあります。こちらに関しては過去の記事で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。

2. 認知行動療法の進め方

それでは、認知行動療法のカウンセリングを開始してから終結するまでの標準的な流れをご紹介してききたいと思います。

①認知行動療法カウンセリングへの導入

初回カウンセリングや2回目のカウンセリングでは、

・現在の悩みごとの整理

・生育歴などをカウンセラーに伝える

・認知行動療法の概要を学ぶ

という3点がメインです。今現在の状況についてセラピストにお話しいただく中で、まずはセラピストと協働関係を築いていくことが重要視されます。

②目標の設定

3〜4回目くらいのカウンセリングでは、セラピストから見立てを伝えられると思います。

見立てとは、今の自分の問題がどのように維持されていて、どのように改善していくのが良いのかということについて、セラピストが専門的な立場から考えた内容のことを言います。

セラピストから伝えられた見立てに対して、自分自身でもよく考え、納得感が高いようであれば、目標に向けて共に話し合っていくことになります。

目標は、セラピストが考えたものを単に実行するというよりは、セラピストから伝えられた見立てをもとに、共に考えるイメージを持ってもらえると良いと思います。

自分の置かれている環境や、思考の傾向、気分の傾向、体調、行動などをワークシートに記入しながら話を進めていくこともあります。

③自動思考の同定

5〜6回目くらいのセッションでは、生活の中で実際に生じた出来事をもとに、「自動思考」を同定するためのワークをセラピストと共に行うことが多いです。

自動思考とは、「瞬間瞬間に頭の中に生じる思考」のことを示します。

例えば、職場で電話が鳴った時、

ある人は「まずい!自分には対応できない!」と瞬間的に考え、またある人は、「誰かな?要件は何かな?」と考えると思います。

きっと、前者に比べて後者のほうが不安は低くなりますよね。

セッションの中では、認知再構成法(コラム法)という技法を用いながら、まずは自分自身の自動思考とその特徴に気付いていく練習を行います。

コラム法の書き方については、過去の記事をご覧ください!

④自動思考の変容・対人関係の改善・問題解決技法

7〜12回目くらいのセッションでは、これまでのセッションで観察し、記録してきた自動思考について話し合い、より適応的で柔軟な思考を見つけていきます。ここでも、コラム法を活用することが多いです。

また、

・ロールプレイ(実際に演じてみること)などの技法を使ったり、セラピストと話し合ったりする中で、実際の対人場面を練習し、コミュニケーションの改善を図っていくワーク

・ワークシートを用いながら、実際の問題解決の手順をセラピストと考えるワーク

などを行い、認知的技法と行動的技法を上手く組み合わせて、現実場面での充実を目指していきます。

⑤スキーマの同定と変容

13〜14回目くらいのセッションでは、自分のスキーマを同定し、より適応的なものに変容させていくことを目標にセラピーを進めます。

スキーマとは、自動思考の前提となっている、根底の部分にある価値観・信念のことを示します。

スキーマを同定するためには、下向き矢印法と呼ばれるワークシートに記入を行ったり、セラピストと話し合ったりします。

自分の不適応的なスキーマと思われる価値観・信念が見つかったら、それを実際に行動してみることや、柔軟な思考を考えてみることなどによって変化させていく取り組みを行います。

※スキーマは、場合によっては取り扱わないこともあります。

⑥終結と再発予防

最後に、15〜16回目くらいのセッションでは、これまでのカウンセリングについての振り返りや、問題の再発予防に向けての方策を一緒に考えます。

また、カウンセリング期間を延長するか否かに関しても、ここで話し合いを行います。

いかがでしょうか。以上が、個人で行う認知行動療法の標準的な進め方になります。

3. 認知行動療法の1回あたりのセッションの進め方

先ほどは、合計16〜20回ほど行う認知行動療法のセッションの流れについてお伝えしました。今度は、1回のセッションの中でどのような時間配分で行うのか、標準的な流れをお伝えしたいと思います。

0. 心理検査等の実施

気分の変化、セラピーの効果などについて確認するため、毎回セッションの前に心理検査への回答をお願いすることがあります。

よく使われる心理検査に、BDI(ベックうつ病調査票)QIDS-J(簡易抑うつ症状尺度)などがあります。

※心理検査は行わないこともありますし、セラピーの開始前と終結時などの、ある程度の期間を置いて行う場合などもあります。

1. チェックイン

相談者とセラピストがカウンセリングを行う部屋に入室し、最初は簡単な雑談をしたり、今日の体調や気分などを伺ったりと、「関係づくり」の為の時間を作ります。

2. ホームワークの振り返り

前回のセッションの中でホームワークを出されていた場合は、取り組み状況や内容について一緒に確認する作業を行います。

3.アジェンダの設定

アジェンダとは、セッションの中で話し合うテーマのことです。「今日のカウンセリングではどのようなことについて話すのか」ということについて、最初に一緒に決めることにより、ある程度焦点を絞って建設的な会話ができるようになります。

4. アジェンダに沿って話し合う

いよいよ、先程決めたアジェンダにそって、実際の問題解決にむけて話し合いを行います。必要に応じて、コラム法や問題解決技法などのワークシートを用いることもあります。

5. ホームワークの設定

次回のセッションまでに行ってくるホームワークの設定・説明を行います。

6. セッションでの気づきや、全体のまとめ

今回のセッションの中で気づいたことや、全体のまとめの共有などを行い終了になります。最初はセラピストが主導で行い、徐々に相談者が主導になって進められるようにします。

いかがでしょうか。こちらが、1回のセッションにおける標準的な流れになります。

4. 認知行動療法のポイント

最後に、認知行動療法のポイントについて、代表的なものをお伝えしたいと思います。

協働的経験主義

これは、相談者とセラピストがチームを組み、ともに問題解決に向けて科学者のように仮説と検証を繰り返すような関係性を示します。認知行動療法が大切にしている、最も重要な考えの1つです。

構造化

セッションの回数が決まっていたり、1回のセッションの中でアジェンダを決めてから話し合いをはじめたりと、時間を制限のあるものと捉え、有効活用しようと努めるのも認知行動療法の特徴です。

心理教育

認知行動療法の考え方などについて、配布資料などを用いながら実際に学んでいただくこともあります。理論的な枠組みなどについて、相談者とセラピストで共通認識を持っている必要があるからです。

認知的技法と行動的技法

認知行動療法では、その時の状況に合わせて、自分のものの捉え方にアプローチする認知的技法と、行動そのものにアプローチして悪循環を好循環へと変えていく行動的技法を組み合わせながら進めていきます。

ホームワーク

認知行動療法の中では、ホームワークはむしろ中心的な要素であると考えます。なぜなら、セッションは相談者とセラピストで「作戦会議」をする場であり、実際の治療の場となるのは日常生活であると考えるからです。なので、ホームワークにきちんと取り組むことがとても重要な要素になります。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか。今回の記事では、認知行動療法の進め方について、詳しく解説させていただきました。認知行動療法は、短期間で効果を発揮できる非常に優れた心理療法です。生活の中で悪循環を抱えているように感じる方は、ぜひ一度受けてみることを検討してみていただけると幸いです。