- 心理カウンセラーという職業に興味がある。
- 自分は心理カウンセラーに向いているのか知りたい!
本記事は、上記のようなお悩みを持つ方に向けて書きました。
人の心に寄り添い、心の問題を相談者とともに解決していく心理カウンセラーは魅力的な仕事ですよね。
ただ、「自分は向いているのか?」と気になってしまう方も多いのではないかと思います。
臨床心理士である筆者が、これまでの経験を通して感じた「向いている人」「向いていない人」について解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
心理カウンセラーに向いている人の特徴6つ
まずは、心理カウンセラーに向いている人の特徴を6つに分けて解説します。
ここでご紹介するのは資質であり、「比較的生まれ持った要素の強い特徴」と考えていただければと思います。
人への好奇心が強い
相手がどんなことを考えていて、どんなことを感じているのか、相手の趣味趣向はどのようなものなのかなど、他者についての好奇心が強い方は、心理カウンセラーに向いています。
心理カウンセラーは「相手を理解すること」が中心的な業務なので、そもそも他者への好奇心が強ければ、楽しんで業務に取り組めるわけですね。
感情移入しすぎるのではなく、「へぇ〜。そういう風に考えるんだ」などと、少し冷静な視点で興味を持てる方は、更に向いていると言えるでしょう。
「人間観察が好きな人」と言い換えても良いかもしれませんね。
話を聞くのがうまいと言われたことがある
心理カウンセラーの仕事は、答えを見つけて導いてあげることではなく、相談者自身が答えを見つけられるように促すことです。
実際、心理カウンセリングの中でカウンセラーが「こうしたほうが良いですよ」と意見を言うことはほとんどなく、「なぜそう思ったのですか?」などと質問を重ねることで、相談者が自己理解を深められるように促していきます。
これまで生きてきた中で身近な人から「話を聞くのがうまいね!」と褒められた経験がある方は、相手の話をじっくり聞くことが自然とできているのではないでしょうか。
「自然とできていること」は才能であり、心理カウンセラーに向いていると言えます。
学ぶことが好き
心理カウンセリングを行うには、以下のような知識を習得しておく必要があります。
- 心理アセスメントに関する知識
- 精神疾患に関する知識
- 心理療法に関する知識
上記のような知識を身につけたうえでカウンセリングを行えば、自分の中できちんと枠組みを持ったうえで目の前の相談者と向き合えるようになるのです。
また、有効な治療法などは日々変化していくので、知識をアップデートし続ける必要があります。
読書や経験を通して新しい知識を身につけるのが好きな方は、心理カウンセラーに向いているでしょう。
自己分析が好き
心理カウンセラーは、自分自身についての理解を深めていく必要があります。
なぜなら、自分自身についての理解が深まっていないと、無意識のうちに自分の主観に流され、偏った見方で相談者を理解することにつながってしまうからです。
これまで、誰に言われるでもなく、自分でやりたくて自己分析をやったことがある方、自己分析を割と楽しんで行える方は、心理カウンセラーに必要な習慣を自然と実践していることになるので、向いていると言えるでしょう。
気が長いほうである
「あなたは、どちらかというと気が短いほうですか?それとも、長いほうですか?」と聞かれた時、どちらだと感じるでしょうか?
心理カウンセリングを行う中で、相談者からネガティブな感情を向けられてしまうことがあります。
「陰性転移」と呼ばれており、精神分析では相談者が幼少期に両親に対して向けていたネガティブな感情を、カウンセラーに向けていると考えられています。
仮に陰性転移を向けられた時に、自分が感情を爆発させてしまうと、心理カウンセリングが進展しなくなってしまいます。
また、心理カウンセリングを通して相談者が変化を遂げるには時間がかかるので、「気長に待つことができる人」は心理カウンセラーに向いていると言えるでしょう。
言語化が得意なほうである
心理カウンセリングでは、色々な場面で言語化の能力が役に立ちます。
例えば、相談者が言葉にならない感情を抱えているとき、その感情を言語化し、名前をつけてあげることが、相談者の安心感につながることがあります。
ただ、「伝え方」も大切になってきますよね。
「今おっしゃった気持ちは、怒りの裏に期待があるという印象も受けたのですがいかがですか?」
上記のように、決めつけるのではなく、伺うような聞き方をすると、相手は意見を押しつけられたのではなく、理解してもらえたと感じやすくなるのです。
言語化の能力がある方、相手を傷つけない言葉選びを慎重に行える方は、カウンセラーに向いているでしょう。
心理カウンセラーに向いていない人の特徴6つ
心理カウンセラーに向いていない人の特徴として6つ解説しているので、参考にしてみてください。
沸点が低い
子どもの頃から、もともと沸点が低いと感じる方は、心理カウンセリングを行う中で弊害が多いかもしれません。
心理カウンセリングでは、相談者が一時的に不安定になったとしても、心理カウンセラーは自身の心の動きをどこか冷静に眺め、受容的な態度をキープする必要があるのです。
生まれつきではなく、何らかの経験から一時的に沸点が低くなってしまっている場合は、まずは自己分析を深め、自分の状態を説明できるようになることが重要です。
今は沸点が低くても、トレーニングを重ねることで、少しずつ心理カウンセラーの適性を高めていくことはできます。
偏見意識が強い
心理カウンセラーは心理学や精神医学、その他の領域についても幅広い知識を持ったうえでカウンセリングに臨むことが大切です。
ただ、いざ心理カウンセリングを行うときには、一度頭の中を真っ白にして、目の前の相談者について「心の色メガネ」なしで理解するプロセスが必要になります。
カウンセラーの中に「心の色メガネ」があると、相談者を等身大で理解することが難しくなってしまうわけですね。
- 日本人は絶対に〇〇だ
- イタリア人は絶対に〇〇だ
- 男はこうあるべき
- 女はこうあるべき
上記のように、偏見が強い場合は、まずは自分自身にどのような「心の色メガネ」があるのかを、自己分析を通して知るのがおすすめです。
人に興味がない
心理カウンセラーは、常に相手にスポットライトを当てて話を聞くことが求められます。
心理カウンセラーは基本的に相手の話を聞き、理解するのが仕事なので、人にあまり興味がないと感じる場合、心理カウンセリングが苦痛に感じてしまうようになるでしょう。
心理カウンセリングを仕事として続けられるかどうかという視点が、結局は「向き・不向き」の決め手となるのかもしれないですね。
学ぶことが苦痛
心理カウンセリングを行ううえでは、日頃から新しい知識を吸収し、自らの専門性を磨く必要があります。
学ぶこと自体があまり好きではなく、苦痛である場合は、心理カウンセラーとして専門性を高めることが難しくなってしまいますよね。
学ぶことが苦痛と感じる方は、心理カウンセラーにはあまり向いていないかもしれません。
共感力(=想像力)に乏しい
共感する力は、相手がどのように考え、どのように感じているかを想像する力でもあります。
とくに、感情に共感してもらえると、「自分のことを分かってもらえた」と感じ、それだけで気持ちが救われることがありますよね。
この共感力(=想像力)が乏しい場合、相談者に対して正論ばかりを押しつけてしまい、関係性の構築が難しくなってしまうことがあるのです。
精神的に不安定な状態にある
心理カウンセラー自身が精神的に不安定な状態にある場合は、まずは自分自身のメンタル不調と向き合う必要があります。
心理カウンセラー自身がメンタル不調の状態にあると、相談者も不安が大きくなってしまい、自分の悩みを安心して打ち明けることが難しくなってしまうわけですね。
過去にメンタル不調を感じることはあったものの、今は回復しており、更に自分自身を客観的に眺めることができている場合は、心理カウンセラーに挑戦するのもおすすめです。
心理カウンセラーに向いている人が心理カウンセリングを仕事にするためのスキル
ここまでは、心理カウンセラーに向いている人・向いていない人の特徴を解説してきました。
心理カウンセラーの素質があると感じた方が次にすることは、専門的な学びを得てスキルを身につけることです。
素質とスキルが合わさることで、はじめて「仕事」になるわけですね。
以下には、心理カウンセラーが身につける必要のあるスキルを記載しました。
傾聴力
傾聴とは、耳だけでなく、心も使って相手の話にじっくりと耳を傾けることです。
日常的な会話では、相手の話を聞きながら、自分が次に何を言おうか考えていることが多いですよね。
傾聴の場合は、相手の話を聞いている時にはその話だけに集中し、価値判断をすることなく、ありのままに相手の考えを受容する姿勢が求められます。
普段のコミュニケーションとは少し質の異なる話の聞き方なので、トレーニングを積んで身につける必要があります。
アセスメント能力
アセスメントとは、相談者の心の問題がどのようにして成り立っていて、どのようにして維持されているのか、そしてどのようにアプローチしていくのが良いかを決めるプロセスのことを言います。
アセスメントは我流で行うのではなく、精神医学や心理学などの知識、アセスメント技法をもとに行う必要があるので、心理カウンセラーになる場合は必ず学ぶ必要があります。
心理療法
アセスメントによって相談者の心の問題の成り立ち・維持要員・アプローチ方法の仮説を立てたら、今度は仮説に基づいて介入していく必要があります。
相談者の悩みに対して何かしらのアクションを起こしていく時には、心理療法を用いるのが効果的である場合も多いです。
代表的な心理療法を以下に記載しました。
- 認知行動療法
- 精神分析療法
- 来談者中心療法
上記は最も有名な心理療法として知られており、とくに認知行動療法はうつ病や不安障害への第一選択肢として、近年ではスタンダードになっています。
心理療法を学んでおくと、介入の引き出しが増え、カウンセラーとしてのスキルも高まるでしょう。
関係調整力
心理カウンセラーには、相談者と1対1で話すだけでなく、関係を「繋ぐ」役割もあります。
学校であれば教職員同士の関係性や子どもと教員の仲裁に入ることもありますし、医療現場であれば他職種同士をコーディネートする必要が出てきます。
双方の意見を丁寧に聞き取り、必要に応じて関係を調整できる力は、心理カウンセラーとして重宝するスキルと言えるでしょう。
心理カウンセラーはどのような職場で働いているの?
心理カウンセラーの仕事に興味を持った場合、まずは心理カウンセラーがどのような職場で働いているかを知っておくと良いでしょう。
なぜなら、どの領域で働くかによって、必要な学びが大きく異なってくるからです。
以下には、心理カウンセラーの代表的な職場を記載しました。
病院
病院の中でも、精神科や心療内科で働いている心理カウンセラーは非常に多いです。
病院で働く心理カウンセラーの主な業務内容を以下に記載しました。
- 心理検査
- 心理カウンセリング
- デイケア運営
病院は、心理検査の実施スキルが最も求められる職場です。
医師による精神疾患の診断を補助するために心理検査を実施するわけですね。
とくに、WAIS(ウェイス)と呼ばれる知能検査やロールシャッハ・テストと呼ばれる性格検査などを実施できることが必須条件であることも多いので、学んでおくと良いでしょう。
学校
学校で働く心理カウンセラーは「スクールカウンセラー」と呼ばれます。
いじめや不登校などの問題が深刻化する今、スクールカウンセラーの需要は非常に高まっているのです。
- 生徒とのカウンセリング
- 保護者とのカウンセリング
- 教員への情報提供や意見交換
- 研修等
上記がスクールカウンセラーの主な役割になります。
スクールカウンセラーには教師や地域の人々を巻き込みながら子どもの心の健康を守る視点が求められており、「調整力」がとくに重要な職場です。
福祉施設
障害を持つ方がよりよく生きるためにサービスを提供するのが福祉施設です。
とくに、心理カウンセラーの場合は以下に示す2つの福祉施設との相性が良いので覚えておきましょう。
- 児童発達支援/放課後等デイサービス
- 就労移行支援事業所
児童発達支援は未就学で発達障害を持つお子様を自律に向けてサポートする施設、放課後等デイサービスは発達障害を持つ就学児を対象とした施設です。
発達障害を持ったお子様へのサポートは心理カウンセラーとしての知識が活きる領域であり、とくにお子様に関する心理職に就きたい方に向いている職業と言えるでしょう。
就労移行支援事業所は、障害を持ち、一般就労を目指す成人に対して、就職に向けた訓練を提供する施設です。
利用者はメンタル疾患を抱えた方が多く、心理カウンセラーとしてのスキルをフル活用できます。
私設のカウンセリングオフィス
個人開業をして、自ら心理カウンセリングオフィスを営んでいる心理カウンセラーもいます。
心理カウンセリングのスキルだけでなく、相談者に来談してもらうためのマーケティングの知識なども必要になってくるのが特徴と言えるでしょう。
心理カウンセラーとしてある程度経験を積んだら、個人開業を検討してみるのも1つでしょう。
心理カウンセラーになるための方法
最後に、心理カウンセラーになるための方法について、具体的に解説するので参考にしてみてください。
大学・大学院に通う
心理カウンセラーの中でも、国家資格である公認心理師や、地名度の高い資格である臨床心理士を取得するためには大学や大学院に通う必要があります。
- 公認心理師:大学・大学院にて必要科目を履修するか、大学で必要科目を履修した後認定施設で2年間の実務経験を積むことで受験資格が得られる。
- 臨床心理士:4年制大学(学部は問わない)を卒業し、第一種指定大学院・第二種指定大学院・専門職大学院のいずれかで修士号を取得することで受験資格が得られる。
公認心理師や臨床心理士になるには時間とお金がかかりますが、心理系職種の就職活動にはかなり有利になります。
民間スクールや通信講座を利用する
民間スクールや通信講座を受講することによって、民間の心理カウンセラー資格を取得する道もあります。
多くのスクールでは以下の手順によって資格を取得できるので、覚えておきましょう。
- 通学講座や通信講座の過程を修了する
- 試験を受ける
資格によっては、試験なしで、講座を受講修了するだけで得られるものもあります。
公認心理師や臨床心理士に比べて気軽に取得できると同時に、最近ではかなり本格的な知識・スキルが学べる講座も増えています。
最速で心理カウンセラーを目指したい方は、過去の記事をチェックしてみてください。
独学で心理カウンセリングを学ぶ
本や動画、論文などを通して独学で心理カウンセリングを学ぶ方法もありますが、以下に示す2つの理由から個人的にはあまりおすすめできません。
- 独学には「実践形式の学び」がない
- 知識に偏りが出てきてしまう
心理カウンセラーを目指す講座の中には、実際にロールプレイを行いながら学ぶなど、「実践」を通して学べる講座もあります。
心理カウンセリングは「技術」なので、実践を通してしか得られない学びがあり、独学では難しい学び方と言えるでしょう。
また、独学の場合は得る知識に偏りが生じてしまう可能性がありますが、大学や大学院、民間講座であれば体系的に学ぶことが可能になります。
まとめ:心理カウンセラーに向いているなと思ったら、スキルを身につけましょう!
本記事を読んでみて「自分には心理カウンセラーの素質があるのかもしれない」と思った方には、ぜひ「行動」を起こしてみることをおすすめします。
なぜなら、どんなに才能があったとしても、行動が伴わなければ才能を活かすことができないからです。
心理カウンセラーを目指す過程の中で得られる学びは、仮に心理カウンセラーには最終的にならなかったとしても、生活の中で活かせるものばかりです。
心理カウンセラーという職業を通して、自分がやりたいことを実現できるよう願っています。