- 心理カウンセラーって仕事がないの?
- 本当の情報が知りたい!
心理カウンセラーに興味がありつつも、仕事にならないのかと不安になってしまっている方に向けてこの記事を書きました。
心理カウンセラーは人の悩みに寄り添える魅力的な職業ですが、資格をとっても仕事につながらないという声も聞きますよね。
臨床心理士として仕事をしてきており、心理カウンセラーの就職事情に精通している筆者が真相をお伝えします。
また、心理カウンセラーの民間資格であっても仕事を得る方法についても具体的に解説するので、ぜひ読んでみてください。
結論:「心理カウンセラーは仕事ない」は半分ほんと
残念ながら、心理カウンセラーに仕事がないのは、半分当たっています。
まずは、「半分当たっている理由」について、詳しく解説していきますね。
多くの求人は公認心理師や臨床心理士に限定されている
心理カウンセラーの資格の中でも、最も権威性が高いのは国家資格である「公認心理師」と、長年日本の心理臨床を牽引してきた民間資格である「臨床心理士」です。
両資格は大学や大学院で学ばなければ取得できない資格であり、社会的信頼は高い傾向にあります。
- 精神科や心療内科の心理職
- 学校のスクールカウンセラー
心理カウンセラーの就職先としてメジャーなのが上記2つの仕事ですが、どちらも「臨床心理士または公認心理師の資格保有者」が募集要項になっていることがほとんどです。
「心理カウンセラーの資格を取っても仕事がない」というのが半分当たっている理由は、民間資格の心理カウンセラーの場合は病院勤務やスクールカウンセラーとして求人に応募すらできないからですね。
非常勤採用が多い
公認心理師や臨床心理士であっても非常勤での募集が多いです。
よって、生計を立てるためにいくつかの仕事を掛け持ちしている方が多いわけですね。
- スクールカウンセラーを週2〜3日、クリニックでのカウンセリングを週2〜3日
例えば、上記のような組み合わせ方をしているパターンは良くある印象です。
ただ、もちろん精神科や心療内科で常勤の心理職として働いている方などもたくさんいるので、あくまで「仕事を掛け持ちしている方が多い」と思っていただけたらと思います。
日本はカウンセリングの普及が遅れている
アメリカをはじめとした海外では、日本ほど心理カウンセリングの敷居は高くなく、比較的小さな悩みであっても、心理カウンセリングを利用する傾向にあります。
心理カウンセリングは特別なものではなく、生活に溶け込んでいるわけですね。
日本では心理カウンセリングの普及が遅れており、未だに心理カウンセリングというと料金が高かったり、精神的に問題がある方が通うイメージがあったりと、敷居が高い傾向にあります。
ただ、新型コロナウイルスの流行を契機にして、オンライン心理カウンセリングが広く普及されるようになったことで状況が変わりました。
オンライン心理カウンセリングなら一般的なカウンセリングよりも安価で、気軽に受けられるので、多くの方が気軽に心理カウンセリングを受けられるようになったのです。
日本でも心理カウンセリングが「一般化」しつつあることは、念頭に置いておきましょう。
【必見】心理カウンセラーの民間資格で仕事を得る方法
「心理カウンセラー資格を取っても仕事ない」というのは、「民間の心理カウンセラー資格を取っても仕事ない」ということを示しています。
残念ながら、民間の心理カウンセラー資格は社会的信頼性が高いわけではなく、それ単体では仕事に結びつかないことが多いわけですね。
しかし、僕がこれまで心理士として働いてきた中で、民間の心理カウンセラー資格であっても「資格を活かしながら」働く方法があることを知ったので共有します。
以下に詳しく解説していきますね。
就労移行支援事業所で働く
就労移行支援事業所とは、障害をお持ちの方が就労を目指して準備を行う施設のことを示しています。
厚生労働省が民間企業や社会福祉法人、NPO法人などに業務委託を行うことで成り立っている事業ですね。
そして、就労移行支援事業所には、精神疾患を持ち、就労を目指す方が多く通われています。
つまり、「心理的なサポート」を必要としている方がとても多く通っており、心理カウンセリングの知識・スキルを活かせるということですね。
そして、就労移行支援事業所には、資格を持っていなくても採用面接に通りさえすれば就職できます。
ただ、採用面接の際に心理カウンセラーの民間資格を取得していること、学んだ知識・スキルを支援に活かしたいことを伝えれば、採用側に熱意も伝わりやすいですよね。
何より、心理カウンセラーの民間資格で学んだことは、就労移行支援で大いに役立ちます。
児童発達支援・放課後等デイサービスで働く
児童発達支援・放課後等デイサービスとは、発達障害を持つお子様の発達をサポートする施設のことを示しています。
児童発達支援と放課後等デイサービスの違いを以下に記載しますね。
- 児童発達支援:未就学のお子様が対象
- 放課後等デイサービス:就学しているお子様が対象
つまり、小学生以下のお子様の発達サポートを行うのが児童発達支援であり、小学生以上のお子様の発達サポートを行うのが放課後等デイサービスということですね。
児童発達支援や放課後等デイサービスも、臨床心理士や公認心理師の資格を持っていなくても、常勤で就職できることが多いです。
ただ、子どもの発達や心理学的な知識やスキルを習得しているほうが、当然就職には有利です。
そこで、心理カウンセラーの民間資格が有利に働くわけですね。
とくに、子どもの発達や心理に関する資格を持っていることで、専門性と熱意をアピールできるでしょう。
筆者も、心理士になって最初に勤務したのが児童発達支援でした。
あの時のお子様との関わりが、今でも僕の心理臨床を支えています。
心理カウンセラーの民間資格も受け入れている心療内科で働く
精神科や心療内科の心理職は、基本的には公認心理師や臨床心理士を持っていることが応募条件です。
ただ、非常勤で心理カウンセリングを行う場合、上記2資格を持っていなくても、心理カウンセラーの募集を行っている医療機関があります。
その場合は心理カウンセリングの知識やスキル、そして熱意が重視されての採用となるので、民間の心理カウンセラー資格でも応募が行える可能性があります。
臨床心理学や精神医学の基礎知識を持っていることに加え、特定の心理療法について詳しいと、さらにアピールポイントとなるでしょう。
決して数は多くありませんが、求人サイトなどで粘り強く探してみるのがおすすめです。
例えば、「求人ボックス」などで「心理カウンセラー クリニック」などと検索すると、民間の心理カウンセラーの資格可の求人がいくつか出てくるでしょう。
独立開業
難易度は高いですが、心理カウンセラーとして独立開業する道もあります。
心理カウンセリングは資格がなくても行える仕事なので、独立開業しても問題ないのです。
ただし、悩みを抱えた方が何の資格も持っていない方に相談したいかと言うと、首を傾げてしまいますよね?
よって、心理カウンセラーの資格を持っていることが信頼性の証となるのです。
独立開業の場合はとにかくクライエントさんに利用してもらわなければ仕事にならないので、マーケティングなどの知識も重要になってきます。
簡単なことではないですが、経験やスキルを積んだ後の長期的な視野として考えておくのは1つでしょう。
心理カウンセラーの民間資格で仕事を得るポイント
おそらく、この記事でご紹介している「心理カウンセラーの民間資格で仕事を得る方法」は、他には載っていない一次情報でしょう。
なぜなら、僕が心理士として働いてきた中で得た、インフォーマルな情報だからです。
この記事でご紹介している「心理カウンセラーの資格を活かして働く」道を選ぶ場合、以下に示すようなポイントを重視しましょう。
臨床心理学や精神医学の基礎知識を体系的に学ぶ
心理カウンセラーの資格を得る本質的な目的は、目の前にいるクライエント(患者さん・お子様、利用者さん)に対して信頼性のある知識・スキルで対応できるようになることです。
とくに「心」に関する支援を行う場合、臨床心理学と精神医学の基礎知識を体系的に学ぶ必要があります。
- 臨床心理学:心の問題に対応することを目的とした心理学。アセスメント方法・心理療法・心理検査などを学ぶ。
- 精神医学:精神疾患の分類、症状、病因、治療法などについての知識を学ぶ。
「体系的に知識を学べる」という意味では、やはり心理カウンセラーの通信講座がおすすめです。
例えば精神医学を学んでも医師のように診断を行うわけではありませんが、目の前のクライエントさんがどのような状態にあるのか「見立て」を行う際に必ず必要な知識なのです。
臨床心理学と精神医学を体系的に学べる通信講座は過去の記事でもご紹介しているので、参考にしてみてください。
1つの心理療法の専門性を高める
民間の心理カウンセラーが仕事を得る場合、個人的には特定の心理療法の専門性を高めるのがおすすめです。
例えば臨床心理士は、「臨床心理学」という学問を基盤にして、目の前のクライエントさんにとって最適と思われるアプローチを実践するのが専門性です。
しかし、民間の心理カウンセラーの場合は「得意技」を持っておくことで、必要とされる存在になれるわけですね。
例えば、「マインドフルネスについての知識とスキルに習熟している心理カウンセラー」になれば、デイケアや就労移行支援などでインストラクターとして活躍する道も拓けるでしょう。
「アートセラピーを行える心理カウンセラー」も、レクリエーションの一環として需要が高そうです。
つまり、「尖る」ことによって需要が生まれるわけですね。
まずは以下の記事を読んで、自分が好きな心理学や心理療法を見つけてみてください。
心理カウンセラーの知識・スキルを活かせる仕事に就く
病院の心理職やスクールカウンセラーなどでなくても、心理カウンセラーの知識・スキルが活かせる仕事はたくさんあります。
- 就労移行支援事業所
- 児童発達支援/放課後等デイサービス
上記の仕事なら、心理カウンセラーとしての対人援助スキルを活かせますし、本当に豊富な経験を積めるのでおすすめです。
業界を経験した後、いずれは臨床心理士や公認心理師を目指すのも1つですね。
他にも、保育士さんや教員、福祉施設で働く場合なども、人と密に関わる仕事なので心理カウンセラーの知識・スキルを活かせるでしょう。
心理カウンセラーの仕事は将来性がある理由
どのような形であれ、心理カウンセラーになるために必要な学習を行うことは、将来性のある行為です。
その理由を以下に記載しました。
社会的需要が高まっている
厚生労働省によると、精神疾患の罹患者数は平成29年には258.4万人であったのに対し、平成29年には419.3万人となっており、急増しているのが分かります。
15年の間に1.6倍にまで膨れ上がっており、驚きを隠せません。
土日に心療内科へ行ってみると分かりますが、多くの方が心のケアを求めて列を作っています。
- うつ病
- 不安症
- 発達障害
- 不登校
- いじめ
- パワハラ
現代は人間関係から起因する心の問題への対応が急務になっているわけですね。国が心のケアができる人を求めており、今後も社会的需要は増していくでしょう。
心理カウンセラーのエッセンスを持つ仕事の需要も高まっている
2022年頃から、「AI(Artificial Intelligence)」が世の中を騒がせていますね。
多くの業務が自動化されていく中で、AIには解決できない問題は「人の心の問題」です。
例えば、心理カウンセリングに近い仕事として「コーチング」が注目されています。
目標達成に向けてAIが「何をどれくらいすべきか」を割り出してくれる時代が来ると言われています。
では、人間はAIが言ったとおりに、確実にそれを実行できるでしょうか?
つい怠けてしまったり、先延ばしにしてしまったりするのが「人間らしさ」と言えるでしょう。
コーチングではそのような「人間らしさ」も視野に入れたうえで、目標達成をしたい方に伴走しながらサポートしていきます。
- ダイエット
- 恋愛
- 英会話
- 運動習慣
- 食事習慣
- 楽器やPCなど「技能の習得」
上記のような分野において、今後コーチングが注目されていくことが予想されています。
コーチングでは、目の前の方に寄り添いながらサポートしていく視点や、人の心理に関する知識を役立てることができるので、心理カウンセラーの資格を活かせる仕事と言えるでしょう。
心理カウンセラーは歳を重ねてもできる仕事
定年退職の年齢が引き上げられる時代に突入しています。
今後は「歳を重ねても続けられる仕事に就く」という視点が重要となりそうですね。
心理カウンセラーは、歳を重ねることがメリットにもなり得る仕事です。
多くの経験を積んだ高年齢の方だからこその視点もありますし、長年に渡って心理カウンセリングを行っていれば、それだけスキルも上がっているでしょう。
歳を取っても、今を生きる方の心に寄り添い、力になれるというのは素晴らしい職業ではないでしょうか。
心理カウンセラーの仕事における給料事情
今後変化する可能性はありますが、現状として心理カウンセラーがどのくらいの給料をもらっているか、参考にしていただけますと幸いです。
正社員(常勤)の場合
臨床心理士や公認心理師が精神科や心療内科などで常勤として勤務する場合、月給は額面で25〜30万円ほどであることが多いです。
ちなみに、今回ご紹介した就労移行支援や児童発達支援などもだいたい同じくらいですね。
ただし、「サービス管理責任者」などの役職に就いた場合はプラス5万円ほどになります。
正社員なので、社会保険等の福利厚生はついてきます。
ボーナスは基本的に出ますが、額は職場や業績によって変動します。
非常勤の場合
非常勤の心理カウンセラーとして精神科や心療内科で勤務する場合、時給1,500円〜2,000円ほどであることが多いです。
また、スクールカウンセラーは時給3,000円〜5,000円ほどが相場と言われています。
非常勤なので、社会保険等の福利厚生は基本的にありません。
個人開業(フリーランス)の場合
個人開業やフリーランスとして心理カウンセラーを行う場合、給料は未知数です。
もちろんクライエントさんがカウンセリングを利用してくれなければ年収0円ですし、中には個人開業で年収1,000万円ほど稼ぐ方もいます。
心理カウンセリングの腕と、集客技術がどれくらいあるかにかかっていると言えるでしょう。
心理カウンセラーの資格を取る方法
最後に、心理カウンセラーの資格を取る方法を簡潔にお伝えします。
臨床心理士・公認心理師の場合と民間の心理カウンセラーの場合とで異なるので、それぞれ解説しますね。
臨床心理士・公認心理師の場合
臨床心理士の場合は、大学を卒業した後に臨床心理士を目指すための大学院へ行く必要があります。
「第一種指定校」「第二種指定校」「専門職大学院」のいずれかに進学し、2年間の学びを経て修士号を取得することが受験資格になります。
公認心理師の場合は、大学で必要科目を履修した後に大学院でも必要科目を履修・修了するか、認定を受けている施設にて2年間の実務経験を積むことが受験資格になります。
その他の民間資格の場合
心理カウンセラーの民間資格を取得する場合、通院講座や通学講座に申し込み、修了することで受験資格が得られます。
講座の受講期間や試験の難易度は資格によって様々ですね。
おすすめの心理カウンセラー資格を過去の記事でまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ:心理カウンセラーが仕事を得る方法はある
今回の記事では、「心理カウンセラーは仕事がない」ことに関する実態や、民間資格でも仕事を得る方法などについて解説しました。
心理カウンセラーの民間資格の場合は病院の心理職や学校のスクールカウンセラーとして仕事するのは難しいものの、以下の3パターンで資格を活かした仕事ができることをお伝えしましたね。
- 就労移行支援事業所
- 児童発達支援/放課後等デイサービス
- 心療内科等の心理カウンセラー(非常勤)
多くの方が心理学や精神医学に裏づけられたケアを求めている時代なので、すぐに仕事につながるかどうかはさておき、「スキル」として持っておくのは非常に意義が大きいと思っています。
- 心理カウンセラーの民間資格を取得する→就労移行支援や放課後等デイサービス、心療内科の心理カウンセリングで豊富な経験を積む
上記の流れを経験した後、「でもやっぱり・・!」と思ったら臨床心理士や公認心理師を取得するのも良いかもしれないですね。
とにかく、本質は心理カウンセラーの知識とスキルを身につけることなので、まずは学ぶこと自体を重視するのがおすすめです。