大学生でも就労移行支援に通えるの?メリットや利用の流れ【就労支援員が解説】

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  • 精神疾患や発達障害を持つ大学生(または保護者)である
  • 障害により就職活動がうまくいかず困っている
  • 就労移行支援は大学在学中でも利用できるのか知りたい

本記事は、上記のようなお悩みを持つ方に向けて書きました。

障害をお持ちの方が一般就労を目指して準備ができる福祉サービスに「就労移行支援」がありますが、「大学生でも利用できるの?」と疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。

大学生でも就労移行支援事業所を利用できるのかどうかや、就労移行支援を在学中に利用するメリットについても就労支援員が解説しているので、参考にしてみてください。

大学生におすすめの就労移行支援事業所についても記事の後半で解説しています。

目次

そもそも就労移行支援とは?

就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスの1つであり、障害をお持ちの方が一般就労(障害者雇用枠を含む)を果たすための訓練を提供しています。

就労移行支援の利用対象者を以下に記載しました。

  • 18歳以上65歳未満の方
  • 身体障害、知的障害、精神障害、発達障害、難病等をお持ちの方
  • 一般企業への就労または開業を希望する方で、就労が可能と見込まれる方

就労移行支援の利用を希望する場合、最初にお住まいの地域の役所にお問い合わせし、自分が利用対象者に該当するか確認しておくと安心でしょう。

大学生でも就労移行支援事業所を利用できる?

結論として、大学生は在学中に就労移行支援事業所を利用することができます。

前述した通り、就労移行支援事業所の利用対象は18歳以上なので、利用条件に該当するわけですね。

また、2017年より前は大学生は就労移行支援事業所の利用が不可でした。

しかし、厚生労働省による「働き方改革実行計画」により、2017年4月1日からは大学生の就労移行支援の利用が認められるようになったのです。

ただし、大学生が就労移行支援を利用する場合は一定の条件があるので、以下で解説していきます。

大学生が就労移行支援を利用する条件

厚生労働省により、大学生が就労移行支援を利用する場合は以下の条件を満たしている必要があると示されています。

大学(4年生大学のほか、短期大学、大学院、高等専門学校を含む。以下同じ。)在学中の就労移行支援の利用については、以下の条件をいずれも満たす場合に、支給決定を行って差し支えない。

① 大学や地域における就労支援機関等による就職支援の実施が見込めない場合、又は困難である場合

② 大学卒業年度であって、卒業に必要な単位取得が見込まれており、就労移行支援の利用に支障がない者

③ 本人が就労移行支援の利用を希望し、就労移行支援の利用により効果的かつ確実に就職につなげることが可能であると市町村が判断した場合

引用:平成29年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A|厚生労働省

短期大学・大学院・専門学校等の学生も利用可能

厚生労働省の通達により、大学生に限らず、短期大学や大学院、専門学校の生徒なども就労移行支援を利用できることが分かりますね。

18歳以上であること、精神障害・発達障害・身体障害・難病などの診断を医療期間で受けていること、一般就労(障害者雇用を含む)を希望していること、などの、就労移行支援を利用するための一般的な条件は適用されます。

学内の就職支援を活用しても就職につながっていない

学内の就職支援課を利用しても就職に結びつかなかったこと、就労移行支援の利用が妥当であると学校側が判断していることも、大学生が在学中に就労移行支援を利用する条件です。

自治体によっては、学内の就職支援では十分でなく、就労移行支援の利用が必要であることを明示した書類を求められることもあるので、予めお住まいの地域の役所に聞いておくと良いでしょう。

卒業が見込まれているからこそ、就労移行支援を利用できる

就労移行支援を大学生が利用するには、単位を十分に取得できており、卒業が見込まれている必要があります。

こちらに関しても、自治体によっては「単位取得証明書」の提出を求められることがあります。

就労移行支援を利用するには、前提として、単位をきちんと取得できている必要があるわけですね。

自分自身が就労移行支援の利用を希望しており、市町村から「利用が適切である」と判断される必要性

前提として、自分自身が就労移行支援の利用を希望している必要があります。

また、市町村による検討の結果、「就労移行支援を利用することで、効果的に就労に結びつくだろう」と判断される必要があるわけですね。

大学生が就労移行支援を在学中に利用する場合、上記の条件を満たしている必要があるので、覚えておきましょう。

ただ、書類提出の有無や細かな判断の基準は市区町村によって異なるので、まずはお住まいの地域の役所に「大学在学中に就労移行支援を利用したいのですが、どのような手続きが必要ですか?」と確認してみるのがおすすめです。

大学在学中に就労移行支援を利用することになった場合の通い方

「大学の授業があるのに、どうやって就労移行支援に通うの?」と疑問を抱く方も多いでしょう。

実際は、大学の職員・地域の役所の職員・就労移行支援事業所の3者、そしてご本人との調整により、以下のような通い方をすることが多いです。

<通い方の例>

  • 週2日は残りの単位を取得するために大学に通う
  • 週3日は就労移行支援事業所に通い就職の準備をする

もっとも、就職活動を行うのは大学4年生、短期大学や専門学校の場合でも上級生になってからが多いでしょう。

必要単位もほとんど取得している場合、週に何日かは就労移行支援に通えると思います。

大学在学中に就労移行支援を利用するメリット5つ

大学を卒業してからではなく、在学中に就労移行支援を利用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

以下に詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

障害理解を深め、適職を見つけられる

大学の就職支援課などでも就職活動のサポートを得られますが、障害について理解している職員がいないことも多いでしょう。

しかし、障害の特性によって就職活動がうまくいかないケースも数多くあるのです。

就労移行支援事業所なら、メンタルの不調や発達障害などについて深く理解している支援員が、就職活動に向けてサポートしてくれます。

障害特性の把握をしたうえで適職探しを一緒に行ってくれるので安心ですね。

卒業のタイミングで就職できる確率が上がる

大学を卒業してから就労移行支援事業所を利用する場合、卒業してから就職するまで、少なくとも半年から1年ほどはかかるでしょう。

大学在学中に就労移行支援を利用し、スムーズに就職準備が進めば卒業と同時に就職を果たすことができます。

同年代の学生とも同じタイミングで就職できるので、焦りも少なくなるのではないでしょうか。

就労に必要なスキルを身につけられる

大学では学部に応じた専門的な学びを得られますよね。

しかし、「働くためのスキル」は、大学では教えてもらえないことも多いです。

どの職種にも共通して、働くうえで重要なスキルを以下に記載しました。

  • コミュニケーションスキル
  • ビジネスマナー
  • 基礎的なPCスキル

上記のようなスキルを就労移行支援事業所で実践的に学ぶことで、就職後もスムーズに仕事に適応できるようになります。

また、障害に応じた理解やセルフケアの方法も身につけておくと安心です。

  • 自身の障害についての理解
  • 職場に伝える配慮事項の検討
  • 体調管理スキル

上記のようなスキルを就労移行支援で身につけたうえで就職すれば、単に就職するだけでなく、「長期就労」が望めるようになります。

雇用形態についての理解が深まる

一般雇用として働くことの他に、障害者雇用として働くという選択肢もあります。

両者の違いと特徴を、以下に記載しました。

  • 一般雇用:一般雇用枠として働く。給料は障害者雇用よりも高いが、障害への配慮を得られないことが多い。
  • 障害者雇用:障害者雇用枠として働く。給料は一般雇用と比べて低くなるが、障害への理解と配慮を得られる。

給料の面では一般雇用のほうが有利ですが、「長く働く」という視点に立ったとき、周囲の理解を得ながら働ける障害者雇用という選択も1つでしょう。

就労移行支援を利用すれば、支援員と相談しながら、どちらの雇用形態が自分に合っているか検討することができます。

就職後もサポートしてくれる

就労移行支援を利用した場合、就職後6ヶ月間は無償で「就労定着支援」を受けることができます。

就労定着支援で得られるサポートを以下に記載しました。

  • 面談を通して仕事の悩みを相談できる
  • 会社の方との間に立ち、より働きやすくなるよう支援員が促してくれる

就職して間もなくは、仕事の中でストレスを感じたり、難しさを感じることも多くなりがちです。

そんな時に、支援員がサポートしてくれたら心強いですよね。

就労移行支援の利用が適した大学生の一例

大学在学中に就労移行支援を利用している方は、どのような方なのでしょうか。

イメージしやすいよう、以下に一例を紹介します。

発達障害の特性により就職活動がうまくいかない

2021年に行われた日本学生支援機構(JASSO)の調査によれば、発達障害を持つ学生は8,698人と、急増していることが分かっています。

また、発達障害を持つ学生が就職活動を行う際の困りごとの一例を以下に記載しました。

  • 自己分析をどう行ったら良いか分からず、志望動機や自己PRが書けない
  • 面接官からの質問にうまく答えられず、選考に落とされてしまう
  • アルバイトをしたことがないので、働くイメージが湧かない
  • 就職活動の計画を自ら立て、自ら実行することが難しい

注意欠如多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害により、就職活動がうまくいかない例は数多くあります。

学内の就職支援課では発達障害への対応は行っていないことも多く、就労移行支援の利用が妥当と言えるでしょう。

メンタル面が安定せず就職活動がうまくいかない

就職活動ではスケジュールが過密になりやすくなることに加え、面接の緊張感、落とされてしまった時の落ち込みなど、強いストレスが加わります。

うつ病やパニック障害、強迫症、社交不安症などのメンタル疾患をお持ちである場合、メンタル面が不安定になり、就職活動が困難になってしまうケースも考えられるでしょう。

就労移行支援事業所では、ストレスとの付き合い方を身につけたり、自分にとってより働きやすい環境を模索したりすることができるので、利用が適していると言えるのです。

大学生におすすめの就労移行支援3つ

就労移行支援事業所は日本全国に3,000箇所以上もあると言われており、「事業所選び」はとても大変な作業になるかと思います。

以下には大学生が在学中に通う就労移行支援事業所としておすすめの事業所を3事業所ピックアップしてみたので、参考にしてください。

ミラトレ

ミラトレは、有名な転職エージェントである「doda」を運営しているパーソルグループによる就労移行支援事業所です。

ミラトレでは就労に必要なスキルを「模擬職場トレーニング」を通して実践的に学べるので、職場で必要な基本的マナーやPCスキルなど、「就職後にそのまま活かせるスキル」を身につけられます。

見学は無料なので、公式Webサイトを見て通える範囲に事業所があれば、一度足を運んでみると良いでしょう。

ミラトレの公式Webサイトはこちら

障がいのある方への就労移行支援【パーソルチャレンジ・ミラトレ】

ココルポート

ココルポートはかなり規模の大きな就労移行支援事業所です。

555種類もの豊富なプログラムがあり、週2日から利用可能なので、大学生でもスケジュールに融通を利かせやすいでしょう。

そして、ココルポートでは「ランチ提供」「交通費補助」を行っているので、通所時のランチ代と往復交通費を浮かせることができます。

大学生にとって、金銭的負担を軽減できるのは嬉しいのではないでしょうか。

ココルポートも見学・体験をいつでも無料で行っているので、公式Webサイトから申し込んでみましょう。

ココルポートの公式Webサイトはこちら

障がい者の就職を支援する就労移行支援事業所 Cocorport(旧社名:Melk)

エンカレッジ

エンカレッジは、20代〜30代の方を中心に支援を行っている、発達障害をお持ちの方向けの就労移行支援事業所です。

発達障害の特性をお持ちであり、同年代の方と切磋琢磨しながら就職準備を行いたい方にはおすすめです。

利用を希望されている学生の方を対象とした説明会も開催しているので、ぜひお問い合わせしてみてください。

エンカレッジの公式Webサイトはこちら

エンカレッジ

上記でご紹介した以外にも、魅力的な就労移行支援事業所はたくさんあります。

おすすめの就労移行支援事業所をまとめた記事を過去の記事でも書いているので、こちらも参考にしてみてくださいね。

高校生は就労移行支援を利用できる?

就労移行支援事業所の対象年齢は18歳からなので、原則高校生は就労移行支援事業所を利用できません。

ただ、高校卒業後に就労移行支援を利用したいと考えている方、大学の高学年になってから就労移行支援を利用したいと考えている方は、早めに見学をして、自分が通いたい就労移行支援の「あたり」をつけておくと良いでしょう。

高校生でも見学や体験は行わせてくれる事業所も多いので、長期休み期間の時などに一度見学に申し込んでみるのがおすすめです。

就労移行支援を利用するまでの流れ

いざ就労移行支援を利用することになった時のため、利用までの大まかな流れを以下に記載しますね。

通いたい就労移行支援事業所をいくつかピックアップする

当サイトのような情報サイトなどを参考に、自分が通いたいと思う就労移行支援事業所をいくつかピックアップしましょう。

過去の記事でおすすめの就労移行支援事業所をまとめているので、こちらも参考にしてみてください。

見学・体験をする

気になる就労移行支援事業所をいくつかピックアップしたら、公式Webサイトより見学予約をしましょう。

施設の様子を見学したり、支援員からプログラムの内容などについて説明を受けたり、現在のお悩みごとについて聞いてもらえたりします。

見学後、実際にプログラムを体験することも可能です。

複数の就労移行支援事業所を見学したうえで、自分に合った就労移行支援を選ぶようにすれば、ミスマッチが少なくなるのでおすすめです。

利用申請をする

通いたい就労移行支援事業所を1つに絞ったら、お住まいの地域の役所に利用申請をしましょう。

大学生や短大生、専門学校生の場合は、就労移行支援事業所の利用が妥当であることを示す学校側からの書類や、単位取得証明書などの提出を求められることもあります。

いずれにせよ、役所の職員の指示を仰ぐことになるので、とにかくまずはお住まいの地域の役所に問合せ、就労移行支援を利用したい旨を伝えればOKです。

利用開始

利用申請に通れば、「障害福祉サービス受給者証」が発行され、正式に就労移行支援事業所を利用できるようになります。

就労移行支援を利用して就職するまでの流れ

実際に就労移行支援事業所に通いはじめてから、どのようなプロセスで就職に向かっていくのか、イメージしやすいよう一般的な流れを解説します。

事業所に慣れる 

まずは、ご自身が通う就労移行支援事業所の雰囲気に慣れ、安定して通所することを目指しましょう。

朝起きて通所し、プログラムを受講し、夜はしっかり寝る、といった規則正しい生活リズムを形成するのが、就職の第一歩となります。

自己理解を行う 

障害についての理解がある就労支援員と一緒に、自身の障害の特性や、強み・弱みなどについて自己分析を行います。

自分一人で自己分析を行うのは大変ですが、支援員と一緒なら安心して取り組めるでしょう。

自己分析を通して、自分に合った仕事(=適職)を見つけましょう。

職業スキルの向上に向けたトレーニングや職業理解

自己分析を行い適職を見つけたら、プログラムを通して就職に必要なスキルを身につけます。

以下には、多くの就労移行支援事業所で行われている標準的なプログラム内容を記載しました。

  • コミュニケーションのトレーニング
  • ビジネスマナーのトレーニング
  • PC講座
  • メンタルヘルスやセルフケアについてのトレーニング

上記に加え、ITやWebなどの専門スキルを学べる就労移行支援事業所もあります。

IT・Web系に強い就労移行支援事業所は過去の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。

 実習、履歴書・面接準備、就職活動

就労移行支援事業所で働くためのスキルを身につけたら、いよいよ本格的に就職活動をはじめましょう。

実際に就職活動を行う前に、企業実習を通して適性を見極めることもできます。

履歴書の添削や面接準備なども支援員が丁寧に行ってくれるので、安心して就職活動に臨めるでしょう。

就労移行支援の利用料金

気になるのが、就労移行支援事業所の利用料金ではないでしょうか。

就労移行支援は障害者総合支援法に基づき国が定めた福祉サービスなので、国からの助成を受けて利用することができます。

生活保護受給の有無や世帯収入などにより自己負担額が異なるので、下記の表を参考にしてみてください。

区分世帯の収入状況負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯(世帯収入が概ね300万円以下)0円
一般1市町村民税課税世帯(世帯収入が概ね670万円以下)9,300円
一般2上記以外37,200円

もっとも、大学生の場合は前年度の収入はないことが多く、ほとんどの方が「0円」で就労移行支援事業所を利用することができるでしょう。

詳しくは、お住まいの地域の市役所に問合せ、確認してみてください。

まとめ:大学生が就労移行支援を利用するメリットは大きい!

今回の記事では、在学中に就労移行支援事業所を利用したいと考えている大学生(短大生や専門学校生も)に向けて、利用の可否や利用のメリットなどについて解説しました。

大学在学中から就労移行支援を利用することで、何より就職してからの「学生−社会人ギャップ」を埋めることができます。

スムーズに就労生活に入り、健康的に働いていくためにも、就労移行支援の利用はとてもおすすめです。