うつやメンタル不調で休職中の方におすすめの過ごし方【心理士が解説】

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  • うつ病やメンタルヘルス不調で休職をすることになったが、休職期間中にどう過ごせば良いか分からない
  • 休職時にやるべきことやお金の不安を解消する手段を知りたい

私は臨床心理士としてこれまで多くの休職中の方と関わらせていただいていますが、「休職中にどう過ごして良いか分からない」というお悩みを多く耳にします。

「復職への焦りから十分に休めない」「不安で押しつぶされそう」などと考えてしまいますよね…。

そこで今回は、うつ病やメンタルヘルス不調により休職中の方におすすめの休職期間の過ごし方やポイントをお伝えしていきます。

うつ病とは

厚生労働省によると、うつ病は「セロトニン」や「ノルアドレナリン」などの精神の安定ややる気などの元となっている神経伝達物質が減少してしまう病気であるとされています。

主な症状を以下に記載しました。

  • 悲しく憂鬱な気分
  • 興味の喪失
  • 食欲不振あるいは過食
  • 睡眠障害
  • 感情コントロールの難しさ
  • 疲れやすさ
  • 無価値感
  • 集中力や決断力の低下
  • 希死念慮

上記のような症状が2週間以上続いており、医師によって診断された場合が「うつ病」であると言えるでしょう。

うつ病の他にも、仕事やプライベートのストレスなどにより罹ってしまう病気に「適応障害」や「不安障害」などもあります。

また、うつ病の診断には至らなくとも、医師から「抑うつ状態」などの診断を受けるケースもあるのです。

いずれにせよ、上記のようなメンタル不調になってしまった場合には第一にしっかりと休養を取り、医師の指示に従いながら生活習慣や食生活を改善させ、過度なストレスから離れることが重要です。

引用:厚生労働省

休職とは

厚生労働省による「休職」の定義は以下になります。

「休職」とは、ある従業員について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に、使用者がその従業員に対し労働契約そのものは維持させながら労務への従事を免除することまたは禁止することである。

引用:厚生労働省

つまり、ポイントとしては、

  • 業務への従事が困難な状態にること
  • 雇用契約は維持したまま、業務を休止すること

の2点となります。

雇用契約を維持しているので、症状が良くなり回復すれば、また業務にあたることができる可能性があるということですね。

安易に会社を辞めてしまうのではなく、休職制度を活用するのは賢い選択かもしれません。

うつ病やメンタル不調で休職した際の過ごし方

うつ病やメンタルヘルス不調により休職した場合、以下に示す「段階」を意識するのが重要です。

  • 休職前
  • 休養期
  • 回復期
  • 復職準備期
  • 就労定着期

復職時は「早く会社に戻らなくては」「自分だけ仕事をしていないなんて申し訳ない」と考えて焦ってしまいがちですが、上記の段階を飛ばさずにきちんと踏むことが結局は近道です。

また、段階ごとの過ごし方を理解しておけば、焦りに支配されることなく、必要な時に休み、必要なときに活動を再会することができるでしょう。

以下に詳しく解説していきますね。

休職前にしておくこと

休職中は心身をきちんと休めることが重要だからこそ、本格的に休職期間に入る前にきちんと「足場」を固めておくのが重要です。

具体的には、以下の点を確認しておきましょう。

  • 医療機関の受診
  • 会社の休職制度について確認する
  • 休職中の給与の確認
  • 傷病手当の申請
  • 休職中の窓口と連絡手段

大事なところなので一つ一つ解説しますね。

医療機関の受診

うつ病やメンタルヘルス不調などで休職する場合、医師による診断書が必要であることがほとんどです。

精神科や心療内科を受診し、精神科医に相談しましょう。

医師の判断により休職が妥当とみなされた場合、診断書を発行してもらえます。

診断書の発行には時間がかかるケースもあるので、不調を感じたら早めに医療機関を受診し相談するのが重要です。

診断書を持って上司や人事担当者に相談し、現在の状態と休職を希望する旨を伝えましょう。

会社の休職制度について確認する

休職制度を設けていない会社もあるので、会社の就業規則を確認するか、上司や人事担当者に確認しましょう。

また、休職期間についても就業規則で決められている場合もあれば、相談して決める場合もあります。

相談して決める場合、医師による判断をもとに上司や人事担当者と調整することになります。

併せて、「どのような状態になったら復職の許可が下りるのか」「試し出社や慣らし勤務の制度はあるのか」ということについても確認しておくと安心ですね。

休職中の給与の確認

休職中に給与を支払う法的義務が会社にあるわけではありません。

休職中に給与が部分的に支払われる会社もあれば、支払われない会社もあるので、事前に確認しておきましょう。

給与が支払われる場合、休職中の月給についても明確に確認しておくと安心ですね。

休職中に給与が支払われない場合、健康保険の「傷病手当」に申請すれば月給の3分の2が最長1年6ヶ月間支給されます。

(傷病手当は休職中に安心して生活するうえでとても重要なので、下記の記事を参考にしてください。)

休職中の窓口と連絡手段

休職初期はとくに、仕事のことは考えずに心と体をしっかりと休めることが重要です。

しかし、休職中の会社とのコンタクト方法が分からないと、それ自体が不安を作ってしまうでしょう。

休職に入る前に、休職中は会社の誰とどのタイミングで連絡を取るのか決めておくと無難です。

例えば、1週間に1回、1ヶ月に1回、受診をしたタイミングなどと決めておけば、「連絡をいつ取ろう…」と余計な不安を抱かずにすみますね。

メールや電話、あるいは会社の近くの喫茶店など、どのように連絡手段も決めておくと安心です。

休養期の過ごし方

休養期は、休職して間もない期間です。

心身を休めることを最重視し、「とにかく休む時期」と思っていただいて差し支えありません。

休養期は生活リズムもあまり重視する必要はなく、1日中寝たきりの状態であっても良いので、とにかくたくさん寝て、ゆっくりと過ごしましょう。

仕事のことや会社のことは一切考えず、脳をきちんと休ませてあげる視点が重要です。

休養期の期間は人によってさまざまなので、医師と相談するのも良いですね。

また、外出したり何か活動をしたいという気持ちになった時が休養期から次に示す回復期に移行してきている頃と考えると分かりやすいかもしれません。

注意点:休養期であっても、受診と服薬は継続してください。

回復期の過ごし方

回復期は、体調や気分が比較的安定しはじめ、少しずつ活動の意欲が湧いてきている時期です。「リハビリの時期」と考えると分かりやすいかもしれないですね。

特に着手したいのが「生活リズムの正常化」です。

休養期ではとにかく休むのが第一優先なので生活リズムはさほど意識する必要がありませんが、回復期では徐々に朝型の生活リズムを取り戻していきます。

また、少しずつ運動や頭を使った活動を生活に取り入れることで、日中の活動ペースや体力の回復を図ります。

おすすめなのが「朝散歩」です。

朝散歩をすると、日光が網膜に取り込まれ、「セロトニン」という神経伝達物質が分泌されやすくなります。

また、セロトニンが朝分泌されると、夜には「メラトニン」という入眠を促す神経伝達物質の分泌が促進されます。

朝散歩を行えば、運動によって体力を回復できるうえに生活リズムも整えやすくなるので、とてもおすすめです。

また、図書館へ行って読書をしたり、日記をつけたりするのも良いでしょう。

日記をつけることで今の自分が思っていること、感じていることが可視化され、復職に向けて気持ちを整理することにもつながるのです。

復職準備期の過ごし方

回復期を経て気分や生活リズムが安定し、体力が戻ってきたら復職準備期へと入ります。

「働かなければならない」ではなく「働きたいな」という気持ちが少しでも出てきていれば、復職に向けて準備をはじめても良いでしょう。

もちろん、主治医に相談するのは必須です。

復職準備期にやることとしておすすめなのが、以下の2点になります。

  • 認知行動療法に取り組んでみる
  • 休職原因分析を行い再発防止策を立てる

認知行動療法に取り組んでみる

認知行動療法とは、物事への捉え方(=認知)の癖を知り、柔軟な認知を身につけることで気分の改善を図る心理療法です。

うつ病とネガティブな思考には密接な関係があり、認知を柔軟なものへと変える取り組みを行うことで、復職後も長期的に安定した気分で過ごせるようになることを目指します。

精神科医や公認心理師、臨床心理士などの専門家のカウンセリングを受けるのがおすすめですが、カウンセリングの相場は1回8,000円〜10,000円ほどと比較的高額です。

認知行動療法には「セルフヘルプ本」と呼ばれるものがあり、本を読みながら自分の考えなどを書き込み、思考を柔軟にしていけるタイプのものがあるので、安価に認知行動療法を実践したい方にはおすすめです。

認知行動療法を受けられる施設やおすすめのセルフヘルプ本は過去の記事でも紹介しているので、チェックしてみてください。

休職原因分析を行い再発防止策を立てる

休職原因分析とは、職場でうつ病やメンタル不調になってしまった原因について考えるプロセスのことを言います。

休職中に対処策を考えることで、復職後により充実した働き方ができるようになるのを目指すわけですね。

  • どのような状況でストレスを感じていたのか
  • ストレス場面でどのような行動をとっていたのか
  • どのように考え、どのような気持ちになっていたのか
  • 今後はどのように考え、どのように行動していけば良いのか

上記のような観点で紙に書き出していくことにより、「今後どのように働くのが良いか」が見えてきます。

また、職場の方へ伝える配慮についても事前に考えておくと、復職後も周囲の理解を得ながら働きやすくなるでしょう。

就労定着期の過ごし方

晴れて休職を果たしたとしても、早く業務に適応しようと無理をしてしまうのはおすすめできません。

平成28年に行われた「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」では、うつ病で休職した場合約半分の社員が5年以内に再休職をしているというデータが出ています。

また、1回目に休職した場合の期間は平均107日ですが、2回目は平均157日となっており、2回目の休職のほうが休職期間が長くなる傾向にあることが分かっているのです。

残業は極力避ける、任せられる業務は他の社員に任せる、問題がある時にはすぐに上司や同僚に相談するなど、無理をせず、安定して出社することを第一目標に掲げる姿勢が重要と言えるでしょう。

引用:主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究|労災疾病臨床研究事業費補助金

就労移行支援事業所で復職準備を行うのもおすすめ

復職準備期では生活リズムを維持し、休職原因分析や再発防止策を立てるのがおすすめとお伝えしました。

しかし、日中用事がないと外出するのが億劫になってしまったり、どのように休職原因分析を行うのが良いか分からないといった悩みもあるでしょう。

そこでおすすめなのが、「就労移行支援」という障害福祉サービスです。

就労移行支援事業とは、国から委託された企業が現在休職や離職中にある方の復職や転職をサポートする事業で、全国各地に展開しています。

就労移行支援事業所に通いながら復職準備を行えば、専門知識を持ったスタッフに相談をしながら準備ができるので安心ですね。

利用料は国が負担してくれることが多く、少額あるいは無料で就労移行支援事業所を利用している方がほとんです。

おすすめの就労移行支援事業所を紹介している記事もあるので、ご興味がある方は読んでみてください。

うつ病やメンタル不調で休職した際の過ごし方に関するQ&A

最後に、うつ病やメンタルヘルス不調により休職した方から寄せられることの多い質問と回答をまとめたので、参考にしてください。

Q. 休職中に給料は支給されますか?

休職中に給与が支給されるかどうか、また休職中の給与額などは、会社の規定によって異なります。

うつ病やその他のメンタル不調の場合は「個人的な傷病による休職」と判断されることも多く、給与が支給されないケースが多いです。

休職中の生活費は健康保険による「傷病手当」により、最長1年6ヶ月の間、ボーナスなどの不定給を除いた月給の平均(標準報酬月割)の2/3が支給されますので、申請は早めに行いましょう。

Q. 平均的な休職期間はどれくらいですか?

休職期間も会社の規定によって異なるので、早めに上司や人事担当者に確認しておくのが重要です。

あくまで参考ですが、厚生労働省が平成28年に発行している報告書である「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」では、メンタルヘルス不調者の平均休職日数は107日(約3.5ヶ月)であるという調査結果があります。

会社が休職期間を明確に規定していない場合は、主治医の意見書をもとに上司や人事と話し合い、休職期間を決めることになります。

引用:主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究|労災疾病臨床研究事業費補助金

Q. 休職期間が長くなると、会社から解雇されることもありますか?

休職時に決めた休職期間を過ぎても復職が難しい場合、復職が難しいという判断により退職を促されることがあります。

しかし、会社と決めた休職期間を過ぎていない場合であれば解雇されることは基本的にないと思って良いでしょう。

「もし解雇されたら…」と焦ることなく、きちんと休養し、回復するのが最も重要です。

Q. 傷病手当金の他に、受給できる補助金などはありますか?

傷病手当金の他にも、経済的な負担を軽減できる制度がいくつかあります。

以下には、代表的なものを紹介しますね。

  • 自立支援医療制度

自立支援医療制度を受けると、通院の際にかかる自己負担額が通常は3割のところ、1割負担になります。

また、月々の上限額を超えるとそれ以上通院代が発生しなくなるので、医療費を軽減することになります。

  • 労災保険制度の「休業補償」

各都道府県の労働局や労働基準監督署に申請し、病気や怪我が業務上の事由によって生じたものであると認められた場合には労災保険制度の「休業補償」を受けられます。

通院費は無料になり、月給の8割が支給されることもありますが、メンタル不調による休職の場合は申請に通らないことも多いので注意が必要です。

  • 精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、障害を抱えた方が経済面も含めて自立して生活することを目的とした福祉手帳です。

所得税等の控除が27万円〜40万円受けられたり、公共施設や公共料金などの減免を受けられます。

また、障害者保健福祉手帳を持っていることで、障害者雇用枠での就労が可能になります。

上記の他にも障害者を支える制度は多くあります。

具体的な申請方法や条件などについて、興味がある方は市区町村の役所などに相談してみましょう。

引用:メンタル不調で動けないときに気になるお金や手当・保障 休職中・離職中に利用できる助成や制度について|NEURO REWORK

Q. 症状が良くなってきたら、服薬を中止しても大丈夫ですか?

症状が良くなってきても、自己判断での服薬中止は決して行わないでください。

薬の効果により一時的に症状が良くなっているケースもあり、自己判断で服薬を中止してしまうと治療を長引かせてしまうことにもつながります。

「もう服薬は必要ないのでは」と感じた際は、その旨を必ず主治医に相談し、主治医の判断を仰ぐのが賢明です。

まとめ

今回の記事では、うつ病やメンタル不調により休職中の方、あるいは休職を検討している方に向けて「休職中におすすめの過ごし方」をお伝えしました。

休職期間で最も大切なのは、とにかく心身を休めることです。

休職中に安心して心身を休めるためにも、今回ご紹介した過ごし方を意識してみていただけると幸いです。

また、一人では何をしたら良いか分からず不安というお悩みをお持ちの方には「就労移行支援事業所」の利用がおすすめです。

無料または安価で利用できることに加え、プログラム内容や支援が充実している事業所も多いので、安心して休職期間を過ごせるでしょう。