精神障害者手帳3級に落ちたらどうする?審査基準や対処法を解説!【臨床心理士】

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  • 精神障害者手帳3級に申請したが、落ちてしまった
  • 経済的支援や障害者雇用枠での就労を必要としており、手帳が必要なので困っている

本記事を読んでくださっている方は、精神障害者手帳3級に落ちてしまい、頭を抱えているのではないでしょうか。

とくに、障害者雇用枠での就労を考えている場合には障害者手帳の取得は必須であり、落ちてしまったとなると道を塞がれた気になってしまいますよね。

精神障害者手帳3級に落ちてしまう理由や審査基準、そして再申請時のポイントについて、臨床心理士・就労支援員である筆者が解説しました。

この記事を読めば、ポイントを理解したうえで精神障害者手帳3級の再申請に臨めるので、審査に通る確率を格段に上げることができるでしょう。

【なぜ落ちた?】精神障害者手帳3級の審査基準

精神障害者手帳3級に落ちてしまった理由を知るには、精神障害者手帳3級の審査基準をしっかりと理解しておく必要があります。

以下に詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

精神障害者手帳3級はどの程度の障害を示している?

「精神障害者手帳3級を持っている方は、どの程度の障害であることを示しているのか?」という疑問についてですが、厚生労働省による定義は以下になります。

精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

引用:精神障害者保健福祉手帳の判定基準について|厚生労働省

日常の家事は問題なく行えているものの、状況に変化が生じたり、ストレスが強くなったりした際に症状が不安定になり、他者からの援助を必要とするような状態が「精神障害者手帳3級」に該当するわけですね。

例えば、以下に示す「Aさん」は、精神障害者手帳3級に該当すると考えられるでしょう。

<うつ病で休職中のAさんの例>

うつ病により休職中のAさんは、普段の家事は問題なく自分で行えており、家族や友人ともたまに連絡を取り合っています。

ただ、復職が近づくにつれて不安が高まり、精神状態が悪化してしまいました。

普段できている家事は手がつかなくなってしまい、心配してかけつけた家族の援助を得ざるを得ない状況となってしまったのでした。

上記のように、普段は自立して生活できているものの、「強いストレスがかかった際に精神的に不安定になり、援助を必要とする」場合が、精神障害者手帳3級の障害の程度です。

精神障害者手帳の審査はどのように行われているのか

精神障害者手帳の審査は、主治医が書いた診断書の内容を各都道府県に設置されている精神保健福祉センターの職員が確認することによって行われています。

つまり、主治医が書いた診断書が、審査の結果を決めているわけですね。

ただ、主治医はご本人からの報告や日頃の診察時の様子等をふまえて診断書を記入しているので、「いかに主治医に手帳の必要性を伝えておくか」がポイントとなります。

医師が記入する診断書の中身

それでは、主治医が記入する診断書の中身を確認していきましょう。

精神障害者手帳3級の申請を行う際の診断書の写真を以下に記載しました。

引用:精神障害者保健福祉手帳|千葉県

上記診断書のうち、精神障害者手帳3級の取得に大きく影響するのが「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の箇所になります。

日常生活能力の判定

引用:精神障害者保健福祉手帳|千葉県

上記の「2. 日常生活能力の判定」の箇所を見てください。

これは、日常生活においてどの程度制限があるかを判定するための質問であり、以下の8項目は国が決めた基準であり、どの県でも同じです。

  1. 適切な食事摂取
  2. 身辺の清潔保持・規則正しい生活
  3. 金銭管理と買い物
  4. 通院と服薬
  5. 他人との意思伝達・対人関係
  6. 身辺の安全保持・危機対応
  7. 社会的手続や公共施設の利用
  8. 趣味・娯楽への関心、文化的社会活動への参加

上記項目それぞれについて、以下の評価を行います。

  • 適切に(自発的に)できる
  • おおむねできるが援助が必要
  • 援助があればできる
  • できない

すべての設問に「適切に(自発的に)できる」と回答した場合、「日常生活に困りごとはない=手帳取得の必要性はない」と判断されてしまうわけですね。

例えば、実家で暮らしており、食事は家族が作っている場合、「自発的にできる」ではなく「おおむねできるが援助が必要」などになるでしょう。

「他人との意思伝達・対人関係」などに関しても、対人関係が原因で気分が落ち込んでしまうことがあるのであれば、「おおむねできるが援助が必要」「援助があればできる」などになります。

今の自身の状況を過大視することなく、医師に上記項目に沿って困りごとを話しておくことで、医師はより実際に忠実な記入を行ってくれます。

日常生活能力の程度

引用:精神障害者保健福祉手帳|千葉県

上記の「3. 日常生活能力の程度」を見てください。

以下に示す、5つの項目がありますね。

  1. 精神障害を認めるが、日常生活及び社会生活は普通にできる。
  2. 精神障害を認め、日常生活又は社会生活に一定の制限を受ける。
  3. 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、時に応じて援助を必要とする。
  4. 精神障害を認め、日常生活に著しい制限を受けており、常時援助を必要とする。
  5. 精神障害を認め、身の回りのことはほとんどできない。

上記の①に医師が○をつけた場合、「日常生活能力に問題はない=手帳取得の必要はない」と判断されます。

逆に、医師が②に○をつけた場合には精神障害者手帳3級に該当すると判断される可能性が高くなるのです。

精神障害者手帳3級に落ちてしまうパターン4つ

精神障害者手帳3級に落ちてしまうパターン4つを、以下に解説します。

精神疾患の診断がない

精神障害者手帳3級を取得する際、「精神疾患の診断を受けていること」は前提となります。

とくに、以下に示す8つの精神疾患に該当している必要があるので、チェックしておきましょう。

  1. 統合失調症
  2. 気分(感情)障害
  3. 非定型精神病
  4. てんかん
  5. 中毒精神病
  6. 器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
  7. 発達障害(心理的発達の障害、小児・児童期及び青年期に生じる行動及び情緒の障害)
  8. その他の精神疾患

「その他の精神疾患」とは、神経症性障害やストレス関連障害、身体表現性障害などを示しています。

とくに重要なのは、「症状が長期に渡って持続している」ということです。

例えば、適応障害の場合は比較的短期間で症状が改善し、通常の生活ができるようになることが多いと考えられており、「基準を満たしていない」と判断されてしまうこともあるので注意しましょう。

引用:精神障害者保健福祉手帳の判定基準について|厚生労働省

医師に自分の症状や困りごとが正しく伝わっていない

精神疾患により日常で困りごとが生じているにも関わらず、医師とのコミュニケーションがうまくいっておらず、医師が困り感を把握できていない、というケースも考えられます。

このパターンの場合は、対策することで再申請を行った時に申請が通る確率が高いと言えるでしょう。

なぜなら、「本来手帳を必要としている」という本質ついている状態だからです。

申請の時期が早すぎる

精神障害者手帳3級を取得するには、初診日から6ヶ月以上経過している必要があります。

初診日とは、「現在の精神症状を理由に始めて医療機関を利用した日」を示していることに注目しましょう。

転院をしている場合、はじめて受診した医療機関で診察を受けてから、6ヶ月以上経過していれば問題ありません。

6ヶ月以上経過していない状態で精神障害者手帳3級の申請をしても、無条件で審査に落とされてしまいます。

シンプルに基準を満たしていない

実際にご自身が自立してすべて問題なく生活を送れていたり、精神疾患の診断を受けていない場合は、「シンプルに基準を満たしていない」ことになります。

この場合、再申請をしても審査に通る確率は限りなく低いでしょう。

ただし、時期によって波があるのが精神疾患の特徴でもあります。

今後症状が悪化してしまい、更にその状態が6ヶ月以上続いた場合は、もちろん再申請がおすすめです。

精神障害者手帳3級に落ちても再申請は可能!

そもそも、精神障害者手帳の再申請は可能なの?」という疑問もあるのではないかと思います。

もちろん、精神障害者手帳の審査に落ちてしまったとしても、再申請することはできるので安心してくださいね。

ただ、一度落ちてしまったということは、それなりの「理由」があるからですよね。

その理由を明確にし、対策したうえで再申請を行うのが大切です。

精神障害者手帳3級に落ちた方が再申請する際のポイント

ここまで記事を読んで、落ちてしまった理由が「初診から6ヶ月以上経っていないから」であると気づいた方は、まずは6ヶ月以上経過するまで待つ必要があります。

また、「シンプルに基準を満たしていないから」である場合、一旦精神障害者手帳3級の取得は諦める必要があります。

ただ、それは本来「生活に支障がない」ということなので、むしろ嬉しいことではありますね。

「主治医に正しく自身の困り感が伝わっていない」という理由が思い当たる方は、下記に示すポイントを意識して対策することで、再申請をして審査に通る可能性が非常に高くなるので、参考にしてみてください。

診断書の「8つの項目」を理解する

上記で示した診断書に記載されている「8つの項目」を、しっかりと理解しておきましょう。

(再掲)

  1. 適切な食事摂取
  2. 身辺の清潔保持・規則正しい生活
  3. 金銭管理と買い物
  4. 通院と服薬
  5. 他人との意思伝達・対人関係
  6. 身辺の安全保持・危機対応
  7. 社会的手続や公共施設の利用
  8. 趣味・娯楽への関心、文化的社会活動への参加

上記の中で、自身が生活の中で困っていることを考え、紙に書き出して整理してみるのがおすすめです。

とくに、強いストレスがかかり、精神症状が強くなった時に「困り感」が出てくる場面はないでしょうか?

例えば、不安が強くなると入眠が困難になったり、眠りの質が悪くなる場合は「規則正しい生活」に障害を受けていることになります。

上記の項目に従って困り感をまとめ、医師が「適切にできている」以外に○をつけられるようにすることが大切です。

主治医に症状・困りごとをしっかり説明する

上記に示した「精神症状による日常での困りごと」を、日々の診察の中できちんと医師に伝えておくことが重要です。

自分の中で整理できていても、それが医師に伝わっていない場合は意味がなくなってしまうわけですね。

口頭で話すことが不安な場合は、書き出したメモを医師に渡しながら説明するものおすすめです。

また、付き添いの家族やパートナー、支援機関の方などに話してもらうのも良いでしょう。

※医療機関によっては、診断書記入の前にアンケートが渡される場合もあります。その場合は、アンケートの項目に対して「援助が必要である」と素直に回答していくことが重要です。

医療機関を変更して再申請する

どうしても現在の主治医との間で意思疎通がうまくいっていないと感じる場合は、医療機関を変更するのも1つです。

医師によって考え方が異なる場合もあるので、精神障害者手帳の発行をする際のポイントをよく知っている医師に頼ってみるというのも1つですね。

医療機関を変更することによって精神障害者手帳の申請に通る、というパターンもあることを念頭に入れておきましょう。

訪問看護を活用する

訪問看護サービスを利用している場合、看護師さんが自宅での様子を丁寧に観察し、その記録を主治医に提出してくれます。

看護師さんによる信頼性の高い情報をもとに診断書を医師が記載してくれるので、「より正確な判断をもとに診断書を書いてもらいたい」という方にもおすすめな方法です。

就労移行支援を活用する

就労移行支援とは、障害のある方が障害者雇用枠を含む一般就労を目指して訓練を行える、厚生労働省が管轄している障害福祉サービスです。

就労移行支援事業所に通えば、支援員が通院に同行してくれ、ご自身の困りごとを医師に説明してくれるので大変心強いです。

また、転院をする場合は精神障害者手帳の発行について理解の深い医療機関を紹介してくれることもあるので、メリットが大きいでしょう。

就労移行支援の概要や利用方法については過去の記事でも紹介しているので、参考にしてみてください。

精神障害者手帳3級に落ちた方が再申請する手順

本記事に書いてある内容を実践し、主治医にきちんと自身の症状や日常での困りごとを説明したうえで、精神障害者手帳3級の再申請を行いましょう。

再申請を行う際の手順は、最初に手帳の申請を行った時と同じです。

以下に示す手順で手続きを進めてください。

  1. お住まいの市区町村にある役所の障害福祉課にて、「精神障害者保健福祉手帳申請書」をもらう
  2. 主治医に精神障害者手帳3級の診断書を記入してもらう
  3. 申請書・診断書・証明写真(縦4cm×横3cm)を役所に提出

再申請を行う際に主治医にきちんと困りごとについての説明ができており、主治医が「援助が必要」という項目に○をつけていけば、申請に通るはずです。

必要書類を提出した後は各都道府県の精神保健福祉センターにて審査が行われます。

精神障害者手帳3級が発行されるまでは通常1〜2ヶ月程度かかりますので、覚えておきましょう。

精神障害者手帳3級を取得するメリット

精神障害者手帳3級を取得すると、とくに経済面・就労面において大きなメリットがあります。

以下に、精神障害者手帳3級を取得する代表的なメリットを記載しました。

各種割引・減免がある

精神障害者手帳3級を持っていると、以下のような場面で割引があります。

  • 交通機関(電車・バス・タクシー・船・飛行機など)
  • 携帯電話の月額料金
  • 映画や美術館・博物館・水族館・遊園地など
  • 公共施設

例えば、映画館の場合は全国一律1,000円でチケットを購入でき、タクシーの場合は一律10%割引となっています。

また、以下に示す税金の控除の対象となります。

  • 所得税
  • 相続税
  • 心身障害者扶養共済制度に基づく給付金の非課税
  • 特定障害者に対する贈与税の非課税

とくに、経済面において取得のメリットが大きいことが分かりますね。

精神障害者手帳3級を取得するメリットについて過去の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

障害者雇用枠への就労が可能

精神障害者手帳3級を取得していると、障害者雇用枠での就労を行うことができるようになります。

逆に、障害者手帳を持っていない方は、障害者雇用枠で働くことはできません。

障害者雇用枠とは、法定雇用率に基づいて障害のある方を雇用する場合の雇用枠のことを示しており、周囲からの理解や配慮を得ながら、安定して働くことができるメリットがあります。

また、障害者雇用枠での就労を目指している方には、転職エージェントの活用を強くおすすめします。

なぜなら、エージェントを通して応募することにより、より自分にマッチした企業を紹介してもらえるとともに、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策なども行ってくれるからですね。

過去の記事でおすすめの障害者雇用枠に特化した転職エージェントを紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。

就労移行支援は障害者手帳3級に落ちた方にもおすすめ!

精神疾患をお持ちで、働くことに不安を感じている方に自信を持っておすすめしたいのが、「就労移行支援」という障害福祉サービスです。

就労移行支援では、精神疾患をはじめ、障害をお持ちの方が障害者雇用枠を含めた一般企業への就労を目指して訓練を行えます。

国からの助成を受けて利用できるので、多くの方が無料で利用しており、費用がかかる場合も前年度の世帯収入に応じた自己負担額が設定されています。

就労移行支援の利用は精神障害者手帳3級を持っていなくても可能なので、落ちてしまい、再取得が困難な方も、利用を検討してみると良いでしょう。

おすすめの就労移行支援事業所を過去の記事で紹介しているので、ぜひ読んでみてください。

東京のおすすめ就労移行支援事業所はこちら。

横浜のおすすめ就労移行支援事業所はこちら。

名古屋のおすすめ就労移行支援事業所はこちら。

精神障害者手帳3級に落ちた方のよくある質問

最後に、精神障害者手帳3級の落ちてしまった方のよくある質問をまとめておくので、よろしければ参考にしてみてください。

適応障害でも精神障害者手帳3級を取得できますか?

適応障害は比較的短期で症状の改善が見られる精神疾患であると考えられています。

精神障害者手帳3級を取得するには「精神疾患により長期的に生活に制限が生じている」と判断される必要があるので、適応障害の場合は申請に落ちてしまう可能性もあるので注意が必要です。

ただ、初診から6ヶ月以上経っても症状が持続しており、生活に困難を抱えている場合には、申請が下りることもあるでしょう。

また、長期に渡って症状が持続しており、診断が適応障害から「うつ病」へと変更になった場合は、より手帳の取得が容易になると考えられます。

就労していても障害者手帳3級を取得できますか?

就労してしても、生活していくうえで援助が必要とみなされた場合には精神障害者手帳3級を取得できます。

例えば、勤務時にストレスが強くなることで勤怠が不安定になったり、家事に支障が出てしまう場合には援助が必要になりますよね。

やはり、主治医に現在の困りごとをきちんと伝えておくことが重要となるでしょう。

精神障害者手帳は更新の必要がありますか?

精神障害者手帳は、2年に1回更新する必要があります。

更新を行わなかった場合は失効してしまうことになるので、注意しましょう。

手帳を取得して丸2年になる日付より3ヶ月前から更新手続きが行えるので、期間に余裕を持って行うようにしましょう。

精神障害者手帳はずっと持ち続ける必要がありますか?

自分自身に障害者というレッテルを貼ってしまい、精神障害者手帳を持つことに心理的な負荷を感じてしまう方もいるのではないでしょうか。

ただ、精神疾患によっては、徐々に症状がよくなっていき、通常の生活が行えるレベルまで改善するケースも多くあります。

手帳が必要ないと感じた時にはいつでも返還手続きを行えますし、2年ごとの更新の際に更新手続きを行わなければ、そのまま失効させることもできます。

手帳を取得することをあまりネガティブに考えず、「上手に活用しよう」と考えられると良いですね。

まとめ

今回の記事では、精神障害者手帳3級に落ちてしまった方を対象に、以下の点について詳しく解説しました。

  • 精神障害者手帳3級の審査基準
  • 診断書の内容
  • 精神障害者手帳3級に落ちてしまったときの対処法

とくに、主治医とご自身との間で「生活での困りごと」に関する認識のギャップがあることで落ちてしまった方は、本記事の内容を実践して再申請を行えば次は通過する確率が非常に高いでしょう。

あまり深く落ち込まず、1つ1つできることを行っていけば、きっとご自身にとって満足のいく結果になると思います。