- 適応障害で休職中でも転職活動をして良いの?
- 休職中の転職活動を効果的に進める方法はある?
- 適応障害で休職中に転職活動を行う際の注意点などが知りたい
適応障害により休職中で、転職活動をして他の会社に行きたいと思っている方に向けて、就労支援員であり心理士である筆者が記事を書きました。
休職中の転職活動は不安が隣り合わせかと思いますが、不安の理由は「先が見えない」からでしょう。
先が見通せるようになれば、安心してより自分らしいキャリアを築いていけるはずですよね。
本記事では、適応障害で休職中の方が安心して次のステップを踏めるよう、そもそも休職活動をしても良いのかということに加え、効果的な転職活動の進め方や注意点についても解説しています。
適応障害で休職中でも転職活動をして良いのか?
結論として、適応障害で休職中でも転職活動をして大丈夫です。
ただ、「なぜ良いのか?」という根拠があったほうが安心しますよね。以下には、適応障害で休職中でも転職活動をして大丈夫な理由を2つに絞って記載しました。
休職中だからといって転職活動してはいけない法律はない
会社に在籍中の社員が、今の会社に勤めながら転職活動をしているケースはよくありますよね。
「会社に雇用されている」という位置づけでは勤務している社員も休職中の社員も一緒であり、「休職中だから転職活動をしてはいけない」という縛りは存在しないのです。
今いる会社を辞めて他の会社に転職するのは誰もが持っている権利なので、安心して転職活動を始めましょう。
適応障害の特性上、環境を変えるのは有効
業務上でのストレスが原因で発症しやすい精神疾患に、うつ病や適応障害があります。
しかし、うつ病と適応障害では以下の点で異なっているので覚えておきましょう。
- うつ病:ストレスを感じる環境から離れても、気分の落ち込みやその他の症状が持続する
- 適応障害:ストレスを感じる環境から離れると、気分の落ち込みや症状が比較的改善しやすい
適応障害の場合は、「(環境への)適応障害」という意味合いが強く、環境が変われば症状が改善するケースも多いのです。
よって、適応障害の方にとって積極的に環境を変え、まずはストレスから距離を置くことが良い結果をもたらすことが多いと言えますね。
逆に、適応障害の状態で環境調整を行わずに我慢し続けると、より重症度の高い精神疾患であるうつ病へと進行してしまうこともあるので注意が必要です。
適応障害で休職中の方が選べる選択肢3つ
適応障害で休職中の方にとって転職活動が好機となることも多いですが、まずは今の会社に復職して様子を見たほうが良いケースも当然あります。
ただ、「どのような選択肢があるか」を知ったうえで行動を起こすのは重要ですよね。
以下には、適応障害で休職中の方が選べる選択肢を3つに絞って解説しました。
今の会社に復職する
休職期間はしっかり休養し、まずは今の会社に復職するのも安全な道と言えるでしょう。
ただし、職場が復職に関して協力的でない場合や、部署異動などの配慮をしてくれない場合は、ストレスを感じる環境自体は変わらないので、適応障害を再発させてしまう可能性が高くなります。
2回目の休職のほうが休職期間が長くなるというデータもあるので、「会社の対応」をしっかり見定めて判断しましょう。
今の会社を辞めて別の会社に転職する
今勤めている会社に戻っても強いストレスが続きそうな場合、退職して別の会社に転職するのがおすすめです。
退職をするのは勇気のいる手段ですが、少なくとも今の環境よりも合っている会社は必ずどこかにあるでしょう。
健康以上に大切なものはないので、一度ゆっくり自分と向き合う時間を取り、今後のキャリアを見直してみるのも大切です。
今の会社を辞めて回復に専念する
会社を辞めて転職活動を行う気になれば良いですが、そもそも働くことが嫌になってしまっているというケースもあるでしょう。
そのような場合は心身の疲労がしっかりと取れていないこともあるので、主治医による治療を継続しつつ、一度ゆっくりと休む時間を取りましょう。
症状が強く出ており、今後一般雇用として働く自信が持てない場合は、障害者雇用枠での就労を目指すという手もあります。
障害者雇用枠に特化した転職エージェントに関しては過去の記事でも紹介しているので、興味がある方は読んでみてください。
休職中に転職活動をする前にやること3つ
適応障害による休職中に転職活動を進める場合、体調とのバランスを取りながら、無理なく、焦らずに転職活動を進めていく視点が何より重要です。
しかし、経済的な不安等が押し寄せてくる状況下では「休んで」と言われても休まらないのが人の心というものですよね。
ゆっくり焦らずに転職活動を進めるためにも、まずは以下に示す「足場」を固めましょう。
まずはしっかり休養する
休職をして間もなくは、とにかく心身を休めることに集中しましょう。
一日中寝ていても良いですし、好きなことだけをしていても良いです。
徐々に活動する気力が回復してきたら、主治医に「転職活動をしたいと思っている」ことを相談しましょう。
薬の調整によって気分が改善しているケースもあるので、必ず主治医の意見を聞いてから転職活動を始めてください。
休職期間の確認
休職制度を設けている会社の場合、就業規則で休職期間が定められていることがほとんどです。
また、主治医や上司と相談したうえで休職期間を決定するというケースもありますね。
いずれにせよ、「いつまで休職できるのか」を明確に知っておくことは心の安定に直結しますし、転職活動の目処も立ちやすくなるでしょう。
上司や人事担当者に休職期間を必ず確認するようにしてください。
傷病手当金の申請
傷病手当金とは、病気や障害によって働くことが困難な状況にある方を対象に支給される、健康保険組合による制度です。
傷病手当金に申請した場合、最長1年6ヶ月に渡って現在の給料の2/3が支給されるので、最低限の生活費をまかなうことができるので安心です。
まずは上司や人事担当者に傷病手当金を受給したい旨を伝え、申請用紙をもらいましょう。
申請用紙には主治医による許可を記載する欄があるので、通院時に持っていき、記載してもらう必要があります。
適応障害で休職中の方が効果的に転職活動を進める方法3つ
ここまでは、適応障害で休職中でも転職活動をしても大丈夫な理由や、「休職中の足場固め」としてやっておくべきことを解説してきました。
次に、適応障害で休職中の方が効果的に転職活動を進める方法を3つに分けて解説していきます。
自分と向き合う時間を作る
適応障害により休職にいたる理由は人それぞれですが、休職の経験から、自分自身がストレスを感じる状況や作業内容などが分かるのではないでしょうか。
例えば、以下のようなストレスが考えられるでしょう。
- 営業職でノルマのある仕事をプレッシャーに感じていた
- マルチタスクな作業に苦手意識を感じていた
- 異動が多くて、環境の変化に順応できなかった
上記のように「ストレスを感じる状況」を言語化できれば、次回の転職ではそのような状況をなるべく避け、自分の強みを活かせるような環境を見つけやすくなります。
おすすめなのは、「転職活動用のノート」を一冊用意し、そこに自己分析した結果や気になった求人などの情報を集約させていくことです。情報がひとまとめになるので、思考を整理しやすくなるでしょう。
また、社会人が自己分析を行う方法については過去の記事でも解説しているので、興味がある方は参考にしてみてください。
転職先の希望条件を明確にする
多くの方が転職活動を行う際、とりあえずインターネットで求人検索を始めるでしょう。
しかし、これをやると頭が混乱し、目的地からかえって遠ざかってしまったり、安易に転職先を決定して後悔してしまうことにつながります。
まずは、自分が「これは譲れない」と思う希望条件を明確にしましょう。
- 通勤時間
- 在宅勤務可のほうが良さそうか
- 仕事内容
- 転勤の有無
- 給料
- 正社員かアルバイトか
上記のような条件を考えた後に、優先順位をつけましょう。
例えば、「通勤時間」は健康的に働くためにとても重要な要素です。満員電車に1時間以上も揺られて出社するのはそれだけでストレスですからね。
就労移行支援事業所を活用する
就労移行支援事業所とは、精神疾患や障害などによって就労が困難な状況にある方が、就職に向けて準備ができる機関のことを示します。
適応障害の方も就労移行支援事業所に通う対象となるので、積極的に活用するのがおすすめです。
就労移行支援事業所には、「復職をするか、転職をするか」ということも含めて就労支援員に相談しながら転職活動を行えることのほか、以下のようなメリットがあります。
- 通所を通して生活リズムが整う
- 転職に向けて必要なスキルを身につけられる
- 自分に合った働き方や会社を支援員に相談しながら見つけられる
- 転職活動のサポートが受けられる
近年では、IT系やWebデザイナーへの転職に特化した「スキル特化型就労移行支援」なども増えてきています。利用料は無料または安価であるため、興味がある方は一度無料見学をしてみると良いでしょう。
おすすめの就労移行支援事業所を厳選したまとめ記事を書いているので、興味がある方は読んでみてください。
転職先に適応障害による休職がバレないようにする方法
転職活動をして晴れて新しい会社に就職したとしても、前職で適応障害により休職していたことがバレてしまうのではないかと不安になることもあるのではないでしょうか。
以下には、転職時に適応障害による休職がバレてしまうケースや、バレないようにする方法について記載しました。
転職先に前社での休職がバレるケース
転職先に前職での休職がバレるケースとして、主に以下に示す2つがあります。
- 源泉徴収票に記載された収入が極端に少ない場合
- 住民税が極端に少ない場合
新しい会社に就職した際、年末調整を行うために前職での源泉徴収票の提出を求められることがあります。
その際、源泉徴収票に記載された給料が極端に少ないと「休職していたのでは?」と疑われてしまう可能性があるでしょう。
また、住民税も収入によって額が決まるので、課されている住民税が極端に少ない場合も、休職を疑われる可能性があるのです。
転職先に休職がバレないようにする方法
転職先に休職がバレないようにするには、「確定申告を自分で行う」という方法があります。
企業に勤めている場合は年に一度経理部が年末調整を行いますよね。その際に源泉徴収票が必要なので、新たな会社では前職の源泉徴収票の提出を求められるのです。
「副業を行っている」などの理由をつけて確定申告を自分で行えば、そもそも源泉徴収票の提出は不要になるので、前職での給料を見られることもないわけですね。
住民税に関しては一般企業の場合は天引きが原則になるので、雇用者側で経理部に見られないようにするのは難しいです。
しかし、住民税の額が少なかったとしても、わざわざ理由を聞かれ、上司などに話を回されてしまうリスクは決して高くはないでしょう。
バレないことよりも、大切なのは「説明」
適応障害による休職が転職先にバレないようにする方法について解説しましたが、個人的には、バレないように事実とは異なることを会社に説明し続けるのは、それ自体がストレスにもなるのでおすすめできません。
会社側から聞かれなければあえて自分から話す必要はありませんが、もし聞かれてしまった場合にはきちんと「説明」をすることが大切なのです。
例えば、「業務負荷によって体調を崩してしまったことはあるものの、その経験を通して自身のストレスマネジメントスキルを高めることに成功しました。困難な事態を経験したからこそ、周囲の職員のメンタルヘルスにも気を配れるのではないかと思います」などと説明してみましょう。
体調を崩すリスクがある人としてではなく、「困難を乗り越えた前向きな経験」として語るのがポイントです。
また、就労移行支援事業所等を利用していた場合、現職に就くまでの間にしっかりと準備をしていたことや、休まずに通所できていたことなどが大きなアピールポイントにもなります。
適応障害で休職中の方におすすめの転職活動の流れ
適応障害で休職中の方がスムーズに転職活動を行えるよう、具体的な転職活動の流れをステップに分けて解説しました。
以下に示したステップに沿って転職活動を開始すれば、余計な迷いは取り去ったうえで、自分にとって必要な「行動」にコミットできるでしょう。
ステップ①:休養する
適応障害はうつ病と比べて軽度であるとされていますが、メンタル疾患であることには変わりありません。
休職して間もなくは、「活動したいな」という気持ちが自然と出てくるまでは心身を休めることに集中しましょう。
回復してきたと思ったら、主治医の先生に転職活動を始めたいと思っていることについてきちんと相談するのが重要です。
ステップ②:就労移行支援事業所に通い転職の準備をする
転職活動は1人で行うこともできますが、適応障害の場合は就労移行支援事業所の利用対象になります。
就労移行支援事業所の他にも医療機関の「リワーク」などのサービスがありますが、医療リワークの場合は基本的に「復職」を前提としてプログラムが組まれているので、転職をしたい方に向いているのは就労移行支援事業所です。
就労移行支援事業所はほとんどの方が無料で利用しており、就労に向けて必要なスキルを身につけたり、支援員と相談したりしながら転職活動を行えるので、心の安定にも貢献してくれます。
会社を休職している最中でも就労移行支援事業所の利用は可能なので、まずは就労移行支援事業所を利用しながら活動を開始すると安心でしょう。
心理士であり就労支援員である筆者がおすすめの就労移行支援事業所を厳選しているので、以下の記事を参考に自分に合った就労移行支援事業所を見つけてみてください。
ステップ③:今の会社を退職する
就労移行支援事業所には在籍したまま、今勤めている会社を退職しましょう。
退職をする際のポイントなどについても支援員が相談に乗ってくれるので安心ですね。
退職をして完全に孤独になると不安が強くなりますが、就労移行支援事業所を利用していれば通所のリズムは維持されたままになるので、過度な不安を抱くリスクも軽減するのです。
ステップ④:本格的に企業への応募を開始する
現在勤めている会社を退職する前には自己分析や企業調べなどを行い、企業への本格的な応募は会社を退職してから行うのがおすすめです。
なぜなら、休職中に企業への応募を開始してしまうと、以下に示す2つのリスクが生じてしまうからですね。
- 休職中であることを素直に伝えると、採用の確率が下がる
- 休職中であることを隠すと、自分の中の罪悪感がストレスになる
つまり、休職中に応募を開始してしまうと、休職中であることを素直に伝えたとしても、隠したとしても、デメリットが大きいのです。
退職前からしかるべき準備はしておき、本格的な応募は退職後に行うようにすれば安心ですね。
適応障害で休職中に転職活動を行うことに関するQ&A
最後に、適応障害で休職中、かつ転職活動を行おうと思っている方が抱きがちな疑問点について、質問と回答をまとめてみたので参考にしていただけると幸いです。
休職中の転職活動は違法ですか?
休職中に転職活動をしたとしても、違法ではありません。
ですが、休職中に新たな企業への応募をした場合、面接で休職中であることを素直に伝えれば採用の確率が下がり、隠せば嘘をつかなければならなくなり罪悪感が強くなってしまうのも事実でしょう。
よって、休職中には転職活動を行ううえでの「下準備」を行い、退職してから本格的な応募を開始するのがおすすめです。
面接では適応障害や休職について伝えたほうが良いですか?
面接官から聞かれなければ、あえて自分から伝える必要はないでしょう。
しかし、聞かれてしまった際には、ストレスへの対処法を学んでおり、今後休職するリスクは非常に低いことを説明しましょう。再発防止のための準備をしてきたことを伝えられるとベストです。
就労移行支援のような機関に通って準備をしており、休まず通っていたとあれば、さらに信頼感は高まります。
「問題のある人」ではなく、「困難を乗り越えて成長した人」とアピールできると非常に良いですね。
復職か転職かで迷っていること自体を相談できる機関はありますか?
復職にするのか、転職にするのかは、適応障害で休職中の方にとって以上に重要な問題ですよね。
多くの就労移行支援事業所では職場復帰を目指すリワークにも、新たな就職を目指す就労移行支援にも対応しているので、就労移行支援事業所に通い、支援員と「復職にするか、転職にするか」も含めて相談できると良いですね。
就労移行支援事業所は料金がかかりますか?
就労移行支援事業所は料金のほとんどを国が負担してくれるシステムになっています。
ほとんどの方が無料で利用していますが、前年度の世帯年収により、1ヶ月あたりの「自己負担上限額(自分で負担しなければならない上限の額)」が異なります。
区分 | 世帯の収入状況 | 上限負担額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯 | 9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
自身の就労移行支援の月々の自己負担額がいくらになるのか詳しく知りたい方は、お住まいの地域の役所にある障害福祉課にお問い合わせしてみてください。
就労移行支援事業所以外に、休職中の転職相談ができるサービスはありますか?
就労移行支援事業所以外に、適応障害の方が休職中に利用できるサービスには以下のようなものがあります。
- 医療機関のリワークプログラム
- 地域障害者職業センターのリワークプログラム
ただし、上記いずれも「復職」を前提として実施されているプログラムなので、適応障害かつ転職を希望されている方には、「就職」を前提としている就労移行支援の利用がおすすめです。
リワークと就労移行支援の違いについて解説した記事を過去に書いているので、興味がある方は読んでみてください。
まとめ:適応障害による休職は、人生を好転させるチャンスです
今回の記事では、適応障害により休職中の方が転職活動をすることについて、幅広い視点から解説させていただきました。
適応障害によって休職した場合、休職期間中に自分自身のキャリアを見つめ直す視点がとても重要です。
自分一人で考えるのも良いですが、就労移行支援などのサポートをうまく活用しながら、「人生を好転させるチャンス」だと思って大切な時間を過ごしてみると良いでしょう。