就労移行支援は50代からでも利用可能?利用するメリットも【就労支援員が解説】

転職・キャリア形成

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  • 50代でも就労移行支援を利用できるの?
  • 50代が就労移行支援を利用して就職を目指すメリットを知りたい

本記事では、上記のようなお悩みにお応えしていきます。

私は就労支援員として勤務する中で、40代・50代ほどの中年層の方からお問い合わせをいただいた際に「私くらいの年齢の方はいますか?」と質問を受けることが多くありました。

事実、就労移行支援には多くの40代・50代の方が通われていますので、安心してくださいね。

本記事では、就労支援員としての印象やデータをもとに、50代の方が就労移行支援を利用することはできるのか、また利用するメリットについても詳しく解説しているので、ぜひ読んでみてください。

目次

結論:就労移行支援は50代からでも利用可能!

就労移行支援は障害者総合支援法に基づき、厚生労働省が民間企業やNPO法人、社会福祉法人などに業務委託を行って成り立つ障害福祉サービスです。

そして、就労移行支援の利用対象は18歳から64歳までの障害や難病をお持ちの方であると決められています。

つまり、精神疾患や発達障害を含む何らかの障害をお持ちである場合、50代からでも利用が可能です。

就労移行支援そのものの概要や利用の流れについては、過去の記事も参考にしてみてください。

50代の方が就労移行支援を利用する前に知っておくと良い知識

就労移行支援の利用を検討する前に、「障害者雇用枠」「一般雇用枠」という2つの雇用形態について知っておくと後々便利なので、最初に解説いたします。

障害者雇用枠

障害者雇用促進法に基づき、日本国内では障害者雇用の「法定雇用率」が定められています。

令和5年現在の法定雇用率を以下に記載しました。

  • 一般企業:2.3%
  • 国及び地方公共団体等:2.6%(教育委員会は2.5%)

これは、全従業員のうち一般雇用の場合は2.3%、国及び地方公共団体等の場合は2.6%の障害者を雇用する義務が課せられていることを意味しているのです。

また、令和8年にかけて、障害者雇用率は更に段階的に引き上げられる予定となっています。

障害者雇用枠は、障害者雇用促進法に基づいて、「障害者枠」として採用される場合を示しているわけですね。

障害者雇用枠の場合、一般雇用と比較して給料が低く設定されていることが多いですが、周囲からの理解が得られやすく、安定就労につながりやすいというメリットがあります。

引用:令和5年度からの障害者雇用率の設定等について|厚生労働省

一般雇用枠

一般雇用枠は、一般社員として会社に雇用される雇用形態のことを示します。

給料は障害者雇用枠に比べて高く設定されていることが多いですが、周囲からの障害に対する理解は得られにくいというデメリットがあります。

就労移行支援を利用することで、自分が障害者雇用枠のほうが合っているのか、一般雇用枠のほうが合っているのかということも含めて、支援員が一緒に考えてくれます。

50代の方が就労移行支援を利用するメリット4つ

50代の方が就労移行支援を利用するメリットについて、4つに絞って以下に記載しました。

メリットを把握したうえで、就労移行支援事業所の利用を決定しましょう。

就労移行支援が「心の拠り所」となる

私がこれまで就労支援員を行ってきた中で、多くの卒業していく50代の方が「支援員が寄り添ってくれたので、安心して就職活動ができました!」と感想を伝えてくださるのをお聞きしてきました。

就労移行支援事業所には多くの方が週5日、1日6時間ほど通われているので、だんだん自分の「ホーム」のような存在になっていきます。

就職活動を行っても上手くいかなかったり、プライベートで落ち込むことがあったりしたときでも、就労移行支援に通っていれば「心の安定」を得ながら就職活動に臨めるわけですね。

また、共に通所している方々は自分と同じく現在働いていない方々なので、「1人ではない」という安心感のもとで就職活動を行えます。

プログラムを通して課題点を認識・改善できる

就労移行支援事業所では、以下のようなプログラムが用意されています。

  • PC訓練
  • コミュニケーション
  • 模擬就労
  • 心理系のプログラム
  • 生活改善のためのプログラム

上記は多くの就労移行支援事業所で取り入れられているオーソドックスなプログラムであり、プログラムを通して自分の課題点を認識し、課題点を改善したうえで再就職を目指せます。

就労の中で難しさを感じるポイントは人によって異なりますが、課題点を改善したうえで再就職することで、就職後に健康的に働き続けることにつながるわけですね。

事業所によってプログラム内容に特色があります。

過去の記事ではおすすめの就労移行支援事業所をまとめているので、自分が求めているプログラムを提供している事業所を探してみると良いでしょう。

自己分析を支援員が一緒に行ってくれる

50代からの転職は、自分の「キャリアの締め括り」を決める活動でもあるでしょう。

これまでの仕事や、幼少期から現在に至るまでの出来事や感情を支援員とともに振り返り、「どのようなキャリアを選択したいか」を決めるのは非常に重要なプロセスです。

就労移行支援事業所なら、支援員が長い時間をかけてじっくりと自己分析のお手伝いをしてくれます。

就労移行支援事業所によっては自己分析をとくに重要視しており、専門のプログラムを有している所もあります。

就労定着支援がある

就労定着支援とは、就職後も定期的に支援員と面談を行って業務上の悩みを相談したり、会社関係者の方との調整を行ってくれるサービスです。

就労移行支援を利用した場合、6ヶ月は無償で定着支援を受けることができ、6ヶ月後は申請を行うことで最長3年に渡って就労定着支援を受けることができます。

就職してからもサポートし続けてくれるのは、とても心強いですよね。

就職後、6ヶ月以上勤務を継続できている割合を示す指標に「就労定着率」があるのですが、就労定着率が高い事業所の多くは就労定着支援に力を入れています。

50代の方が就労移行支援で就職に成功した事例3つ

50代の方が実際に就労移行支援を利用し、就職に成功した事例があると、イメージがつきやすいのではないでしょうか。

以下には、大手就労移行支援事業所であるリタリコワークスと、ココルポートにおける事例を、公式Webサイトの情報をもとに紹介します。

就労移行支援事業所・リタリコワークスを利用して就職に成功した50代女性の例

  • 誠実性が高いがゆえに周囲の方の仕事が気になってしまい、人間関係がストレスになりうつ病を発症する。
  • リタリコワークスを利用し、実習を通して無理なく働ける就職先に見事就職。
  • 就職後も休日にリタリコワークスのプログラムにOBとして参加し、充実した毎日を送る。

引用:うつ病(精神障がい)の仕事・就職事例 – 小売り・バックヤード- |リタリコワークス

就労移行支援事業所・リタリコワークスを利用して就職に成功した50代男性の例

  • うつ病を発症し、療養期間の後、ハローワークの紹介によりリタリコワークスの利用に至る。
  • リタリコワークスにて「履歴書の書き方」「職務経歴書の書き方」「模擬面接」などを丁寧にサポートしてもらう。
  • 電話対応のプログラムや就職の意義を皆で考えるプログラムを通して自信が身につく
  • データ入力業務を行う仕事に見事就職

引用:うつ病(精神障がい)の仕事・就職事例 – データ入力-|リタリコワークス

就労移行支援事業所・ココルポートを利用して就職に成功した50代男性の例

  • 企業内のトラブルによってうつ病を発症。
  • 2年の療養の後ハローワーク職員の紹介によりココルポートの利用を開始。
  • ココルポートの豊富なプログラムによる1年6ヶ月のトレーニングの後、大手グループ企業の子会社に就職。
  • 就職後も定着面談を通して仕事の悩みを支援員に相談し、安定就労を実現。

引用:50代男性(精神障がい)の就職事例|ココルポート

就労移行支援を利用している50代の方はどれくらいいる?

就労移行支援を利用しているのは若い世代の方が多く、自分は浮いてしまうのではないかと心配に感じる方も多いのではないでしょうか。

以下には、就労移行支援を利用している50代の方はどれくらいいるのか、①データ②個人的印象の双方から記載しました。

データから分析

大手就労移行支援事業所の1つであるココルポートに通われている方の利用者年齢層を代表して調べてみたところ、以下のように記載されていました。

  • 10代:2%
  • 20代:33%
  • 30代:29%
  • 40代:25%
  • 50代:10%
  • 60代:1%

50代の方は全体の10%であり、20代・30代の方と比べると少ないものの、一定数いらっしゃることが分かりますね。

また、年齢層としては近い40代の方も合わせると、全体の35%を占めていることになります。

引用:ココルポート

個人的印象

これまで就労移行支援事業所で勤務してきた中で言えることは、どこの事業所であっても、だいたい50代の方はいらっしゃいます。

たしかに20代、30代の方と比べると少数派ではありますが、タイミングによってはむしろ40代〜50代の方が多くなることもありますね。

また、事業所内では20代・30代の方ともコミュニケーションを取れることが良い刺激になっているというお声も良く聞きます。

年齢はあまり関係なく、同じ目標を持つ仲間意識を持てるのは、就労移行支援の大きなメリットと言えるでしょう。

50代の方が就労移行支援で就職を目指す際のポイント

50代の方が就労移行支援を利用して就職を目指す際、どのようなポイントを意識して通所するのが望ましいのでしょうか。

以下には、50代の方が就労移行支援を利用して就職を成功させる秘訣を記載しました。

事業所選びをしっかり行う

就労移行支援事業所によってプログラムの内容や雰囲気、サービスの内容は様々です。

自分に合った就労移行支援事業所を選ぶには、見学・体験をしっかりと行い、事業所の雰囲気を肌で感じるのが一番ですね。

オープンマインドで取り組む

50代の方は人生経験も豊富なので、自然と「こうあるべき」という固定観念が強くなってしまうケースも多いのではないでしょうか。

しかし、時代は刻々と変化しており、時代の変化に順応する視点も重要となります。

あえて自分自身を一度「白紙」に戻すことで、就労移行支援事業所での学びを効率的に活かすことができるようになります。

経験が豊富な50代であるからこそ、オープンなマインドを大切にして訓練に臨むと良いでしょう。

就労移行支援事業所を利用しなければ得られないような、他職種・他世代との交流を通して深い気付きを得られる利用者の方も多くいらっしゃいます。

これまでの経験をもとに不調のパターンを分析する

これまでの勤務経験を振り返る中で、不調につながりやすい「パターン」を見つけ、対策を考えることは安定就労へと直結します。

とくに、転職を繰り返してしまうケースで多いのが、不調のパターンがそのままの状態で次の職場に転職し、似た状況で再度体調を崩してしまうことです。

就労移行支援なら、支援員とともに不調のパターンを見つけ、対策を立てることができます。

50代の方が就労移行支援を利用する3ステップ

この記事を読んで「就労移行支援事業所を利用してみたいな」と思ってくださった方は、利用までのステップを踏みましょう。

以下に、就労移行支援事業所を利用する3ステップを記載しました。

ステップ①:事業所選び

まずは、インターネットなどで自分に合った就労移行支援事業所を見つけましょう。

過去の記事でおすすめの就労移行支援事業所を解説しているので、まずはご自身に合った就労移行支援事業所の「あたり」をつけ、そのうえで見学・体験に申し込んみてください。

全国のおすすめ就労移行支援事業所はこちら。

東京のおすすめ就労移行支援事業所はこちら。

横浜のおすすめ就労移行支援事業所はこちら。

名古屋のおすすめ就労移行支援事業所はこちら。

ステップ②:見学・体験

気になる就労移行支援事業所をいくつかピックアップしたら、公式Webサイトより見学・体験の申し込みを行いましょう。

複数の就労移行支援事業所の見学・体験を行い、比較検討したうえで通う事業所を決めることで、ミスマッチのリスクを減らすことができます。

ステップ③:利用申請

通いたい就労移行支援事業所を1つに絞ったら、お住まいの地域の役所に利用申請を行いましょう。

申請の際に現在通われている医療機関の主治医による診断書の提出等が必要となりますが、申請の際に就労移行支援事業所の職員が案内してくれるので安心してください。

就労移行支援事業所の利用方法については過去の記事でも紹介しているので、読んで理解を深めてみるのもおすすめです。

50代の方が就労移行支援以外に利用できるサービス

就労移行支援事業所の利用期間は「原則一生に2年」と定められており、多くの方が最低でも半年から1年ほどは利用した後、就労に至っています。

もう少し短期間で就職を目指したいと思う方は、以下に示すサービスも検討してみると良いでしょう。

転職エージェント

転職エージェントを利用することで、無料で以下に示すサービスを受けることができます。

  • キャリアアドバイザーへの相談
  • 就職先の紹介
  • 履歴書・職務経歴書の添削
  • 模擬面接

一般雇用向けの転職エージェントは利用したことがある方も多いと思いますが、実は障害者雇用枠に特化した転職エージェントもたくさんあります。

過去の記事では障害者雇用に特化したおすすめの転職エージェントを紹介しているので、こちらも参考にしてみてください。

ハローワーク

ハローワークの正式名称は「公共職業安定所」であり、運営母体は厚生労働省です。

全国に500箇所以上設置されており、以下に示すサービスを受けることができます。

  • 一般雇用の求人紹介
  • 障害者雇用の求人紹介
  • キャリアアドバイザーへの相談

また、職業訓練なども行っているので、活用してみると良いでしょう。

就労移行支援を利用しながら、転職エージェントやハローワークを併用することは可能です。

なるべく多くのサービスを活用し、相談先を増やしておくと良いでしょう。

まとめ:50代の方にとって就労移行支援事業所が「心の拠り所」になることも多い

今回の記事では、50代の方が就労移行支援事業所を利用することは可能なのか、また利用するメリットや、成功事例などについても解説してきました。

50代での就職はキャリアの締め括りになることも多いと思います。

就労移行支援を利用することで、就労後も支援員のサポートを受けることができ、何より「心の拠り所」となってくれるでしょう。

これからの人生をどのように生きていくかを再考する機会にもなるかと思いますので、ぜひ利用を検討してみてください。